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採用事情
ビルメンテナンス業は、建物や設備を維持・管理し、快適な環境づくりを支える社会に欠かせない業種でありながら、同業界は慢性的な人材不足と給与水準の低さが長年の課題となっています。
「社員の給与を上げたいけれど、予算が…」
「優秀な人材を惹きつけたいが、給与で競合他社に勝てない…」
こうした悩みを抱える人事・採用担当者も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、ビルメン業界の給与事情を徹底分析し、採用競争力を高めるための報酬戦略を解説します。記事を通して、自社の給与設定の妥当性や人材の定着を促進するための給与・手当の見直し方など、具体的な解決策が見つかるはずです。
ビルメンテナンス業界の給与・報酬戦略にお悩みなら
自社の給与水準は適正?このようにお悩みなら、市場動向を踏まえた報酬設計や効果的な採用戦略まで、ビルメン採用に強みを持つ内藤一水社が親身に対応いたします。
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まずは、ビルメンテナンス業界の平均年収や給与体系について確認し、他業界の年収と比較しながら給与事情を把握していきたいと思います。
まずは以下の4項目について、詳しく見ていきましょう。
(※)この記事では、清掃員を除いた設備管理員および施設管理員の給与について述べています。
ビルメンテナンス業界の平均年収は約440万円であり、日本全体の平均年収約460万円と比較するとやや低い傾向にあります。平均年収が低くなる背景としては、国内の新規需要低下や、資源コスト高騰の影響を受けるなど、賃上げをしたくてもできない状況が影響しています。
特に注目すべきは、勤務地域や経験、保有資格によって年収に大きな幅が見られる点です。採用戦略を検討する上で、これらの要素を考慮に入れることが重要になります。
(参考:ビル施設管理 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)、国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)
以下に、マイナビ転職の求人情報から独自に集計したビル施設管理(正社員)の基本給データと給与分布を示します。これらの情報を、貴社の給与体系と比較検討する際の参考にしてください。
基本給の統計データ(職種:「ビル施設管理」 雇用形態:「正社員」)
平均月給 | 285,000円 |
中央値 | 270,000円 |
最高額 | 450,000円 |
最低額 | 200,000円 |
給与分布
月給レンジ(円) | 求人数 |
---|---|
200,000 ~ 249,999 | 15 |
250,000 ~ 299,999 | 55 |
300,000 ~ 349,999 | 20 |
350,000 ~ 399,999 | 5 |
400,000 ~ 450,000 | 5 |
※データ収集方法
上記のデータは、2025年4月現在、マイナビ転職に掲載されている「ビル施設管理」の正社員求人情報100件を抽出し、基本給(固定月給)を集計・分析したものです。
(参考:マイナビ転職「ビル施設管理/正社員の求人・転職・中途採用情報」)
前項で見たように、ビルメン業界の給与には大きな幅がありますが、採用活動においては、どのような要因が給与額を左右するのかを理解することが重要です。
それぞれの要因ごとに解説していきます。
経験年数は、給与を決定する上で最も重要な要素の一つです。経験年数が長いほど、業務の熟練度やスキルが向上するため、給与も高くなります。
ビルメン業界における経験年数別の給与額は以下の通りです。
<経験年数別の所定内給与額>
経験年数 | 所定内給与額(万円) |
---|---|
0年 | 23.34 |
1~4年 | 24.44 |
5~9年 | 26.21 |
10~14年 | 28.85 |
15年以上 | 31.02 |
※参考:ビル施設管理 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)
このデータから、経験年数に応じて着実に給与が上がっていくことが分かります。中途採用においては、経験者の給与水準を適切に把握し、競争力のあるオファーを提示することが重要です。一方で、未経験者採用においては、経験に応じた昇給制度を明確に示すことで、長期的なキャリアパスを描かせることが可能になります。
ビルメン業界では、資格の有無で給与・収入が大きく変わる傾向にあり、以下の資格を持っていることで、収入が大きく上がると言われています。
ビルメン4点セット:ビルメンテナンス業務に必要な基本的な資格
ビルメン三種の神器:より高度な知識・スキルを証明する資格
これらの資格保有者には、資格手当を支給することが一般的です。具体的な手当額の目安については後述しますが、採用活動においては、これらの資格について取得支援制度を設けていることも有効な戦略となります。
ビルメン業界の企業は、大きく「系列系企業」と「独立系企業」の2つのタイプに分けられ、それぞれ給与水準に特徴があります。
ビルメン業界では業務内容によって夜間作業が発生することがあるため、夜間勤務や宿直勤務に就くことで「残業手当」「夜勤手当」「宿直手当」などの各種手当が支給され、給与の総支給額が増えることになります。
残業や夜間・宿直勤務は、体力面で負担がかかりますが、収入を増やしたい求職者からはニーズがあります。
他業界の技術職と年収を比較した結果は以下の一覧の通りです。
<他業界の技術職との年収比較>
職種 | 平均年収 | 備考 |
---|---|---|
ビルメン(設備管理) | 約440万円 | 資格取得で昇給可 |
設備保全(工場) | 約500万円 | 夜勤・特殊技能で高収入 |
電気技術者 | 約680万円 | 電気主任技術者の有資格者の場合 |
ITエンジニア | 約680万円 | 年齢が上がるにつれて平均年収も上がる |
この比較から明らかなように、ビルメン業界の平均年収は、他の技術職と比較して60~240万円ほど低い水準にあります。この事実は、優秀な人材の獲得において、ビルメン業界が厳しい競争に置かれている現状を示唆しています。
ビルメンが他の技術職よりも給与が低くなってしまう理由は、次の項で詳述します。
ビルメン業界の平均年収が他の技術職と比較して低いことを確認しましたが、この背景には、業界特有の構造的な要因が存在します。
ビルメン業界は労働力に対する依存度が高い「労働集約型産業」です。多くの業務が自動化しづらく、人の手によって行われるため、一人あたりの生産性が低くなりやすいと言えます。
加えて、ビルメン業界は多重下請け構造が一般的であることも、給与水準を抑制する要因となっています。元請企業から下請け、孫請けへと業務が委託される過程で、各層が利益を確保するため、末端の企業が受け取れる利益は限られてしまいます。結果として、そこで働く従業員の給与も抑えられがちになるのです。
ビルメン業界は、オフィスビルや商業施設の新規建設が大幅に増加しているわけではないため、既存物件のメンテナンス契約を巡る競争が非常に激しい状況です。顧客であるオーナーや管理会社は、コスト削減を強く求める傾向があり、ビルメン企業は案件を獲得するために契約金額を低く設定せざるを得ない場合があります。
その結果、ビルメン企業は利益を確保するために、人件費をはじめとするコスト削減に取り組む必要に迫られます。これが、業界全体の給与水準が上がりにくい大きな理由の一つです。
深刻な人手不足に直面しているビルメン業界では、給与面での悩みを抱える採用担当者も少なくないでしょう。人材獲得競争が激化する今、競合他社に打ち勝つためには、従来の給与体系を見直し、魅力的な報酬戦略を構築することが不可欠です。
ここでは、厳しい採用環境を勝ち抜き、優秀な人材を惹きつけ、定着させるための競争力のある報酬戦略について、以下の項目をもとに具体的に解説します。
これらの戦略を理解し、自社に合った報酬制度を設計することで、人材獲得競争において優位に立ち、事業の成長を加速させることが可能になります。
競争力のある報酬体系を構築し、優秀な人材を獲得・維持するためには、客観的なデータを活用することが不可欠です。競合企業の給与水準を調査し、自社の報酬が市場と比べて適正なものなのか確認を行いましょう。
以下に、データに基づいた報酬戦略を実行するための具体的なステップをまとめました。
まず最初に行うことは、自社の現在の給与規定を詳細に把握することです。基本給だけでなく、各種手当(資格手当、役職手当、住宅手当など)、昇給・賞与制度の有無、評価制度などを一覧にまとめます。これにより、自社の報酬体系の全体像を把握し、改善点や見直すべき点がないか洗い出すことができます。
次に、収集するデータを自社の状況に合わせて絞り込むことが重要です。全国平均のような大まかなデータだけでなく、自社の事業所がある地域や、募集している職種に特化したデータを集めることで、より実態に近い市場相場を把握できます。
主なデータソースとしては、以下のようなものが挙げられます。
収集したデータは、そのままでは比較しづらいため、Excelなどのツールを活用して表やグラフにまとめ、視覚的に分かりやすくすることが重要です。市場相場の推移(過去数年間の変化など)や、自社の給与水準との比較などをグラフで示すことで、関係者間で情報を共有しやすくなり、客観的な議論や意思決定を促すことができます。
最後に、収集した業界相場データと自社の給与データを比較します。差異がある項目(基本給、手当、賞与など)を色分けするなどして可視化することで、どの程度の差があるのかが一目で分かります。
例えば、基本給が市場相場よりも1万円低い場合、その差が採用活動にどのような影響を与えているのか、改善するためにはどの程度のコストがかかるのかなどを具体的に検討することができます。
前項で自社の課題と市場の相場を洗い出したら、具体的な改善案の検討に入ります。
求職者が企業を選ぶ際には、基本給だけでなく、賞与・退職金の有無や各種手当など、総合的な報酬を重視することが分かっています。
給与体系は単に「基本給+ボーナス」だけで考えるのではなく、下部の一覧のように様々な項目を組み合わせ、立体的に設計すると魅力的になるでしょう。
併せて、福利厚生を充実させることで求職者の満足度を高め、長期的な定着を促します。
<報酬項目の一覧>
項目 | 競争力を持たせるポイント |
---|---|
基本給 | 業界平均以上を設定 |
資格手当 | 電験三種、ビル管などで高額手当を支給し差別化 |
夜勤・シフト手当 | 深夜勤務や休日出勤の補填として、競合より高い手当を設定 |
賞与 | 個人評価+会社業績でメリハリ |
福利厚生 | ・住宅手当・通勤手当などで生活コストをサポート ・資格取得支援制度で受験費用・研修費を補助 |
退職金 | 企業型DC(確定拠出年金)など導入 |
資格手当の金額例については、下表にまとめたので、ご参照ください。
<資格手当の一例>
資格 | 手当(月額) |
---|---|
第二種電気工事士 | 1,000 - 5,000円 |
二級ボイラー技士 | 500 - 3,000円 |
第三種冷凍機械責任者 | 500 - 3,000円 |
危険物取扱者乙種4類 | 500 - 3,000円 |
第三種電気主任技術者(電験三種) | 10,000 - 20,000円 |
建築物環境衛生管理技術者(ビル管) | 3,000 - 15,000円 |
エネルギー管理士 | 5,000 - 10,000円 |
勤務地によって平均年収は大きく異なります。そのため、地域ごとの給与相場も考慮し、競争力のある金額を設定する必要があります。
地域別の平均年収の目安と、その背景にあると考えられる要因をまとめました。
地域 | 平均年収 | 備考 |
---|---|---|
東京・大阪 | 400~500万円 | 生活コストが高いため給与水準が高い |
地方都市(名古屋・福岡など) | 350~450万円 | ビルメンの需要はあるが都市圏よりやや低め |
地方(人口10万人以下) | 300~400万円 | 生活コストが低いため給与水準も低め |
これらの地域差を踏まえ、より魅力的な報酬体系を構築するための具体的なアプローチを以下に提案します。
<地域差を考慮した報酬設計の一例>
このように、地域ごとの特性に合わせた柔軟な報酬戦略を展開することで、求職者にとって魅力的な給与体系を構築し、採用競争力の強化に繋げることが可能です。
給与の固定部分に加え、従業員のパフォーマンスに応じたインセンティブを設計することは、従業員のモチベーション向上と定着に不可欠です。目標達成への意欲を高め、企業へのエンゲージメントを深めることで、優秀な人材の確保に繋がります。
以下に、ビルメン業界における効果的なインセンティブプログラムの具体例を、目的別に分類してご紹介します。
これらのインセンティブプログラムを組み合わせることで、従業員の多様な貢献を適切に評価し、モチベーション高く業務に取り組める環境を整備することができます。自社の課題や目標に合わせて、最適なインセンティブ制度を設計しましょう。
本記事では、ビルメン業界の給与事情を分析し、競争力のある報酬戦略について解説しました。
既存社員や求職者にとって魅力的な給与体系をつくるには、基本給だけでなく、各種手当や賞与などを含めたトータルの報酬を見直すことが大切です。市場動向を把握し、競合他社の給与水準を参考にしながら、自社にとって最適な報酬体系を構築することが成功への鍵となります。本記事の情報を参考に、ぜひ貴社の報酬戦略を見直し、より魅力的な雇用環境づくりにお役立てください。
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