Circumstance

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採用事情
「他社もやっているから、うちもX(旧Twitter)やInstagramを始めたほうがいいのかな?」
採用難易度が上がる昨今、そんなプレッシャーを感じている人事・採用担当者様は少なくありません。しかし、目的があやふやなまま「とりあえずアカウントを開設」するのは、貴重なリソースの浪費になるだけでなく、採用ブランドを損なう恐れすらあります。
誤解されがちですが、SNS採用は「バズらせて応募を爆増させる魔法の杖」ではありません。特に知名度の高くない企業にとって、SNSは集客装置というよりも「求職者に安心感を与えるための受け皿(=信頼の担保)」としての役割が非常に重要です。
本記事では、従来の求人媒体との決定的な役割の違いから、中小企業が狙うべき「安心材料」や「ミスマッチ防止」といった具体的な導入目的、そして運用を始める前に決めておくべきポイントまでを体系的に解説します。まずは全体像を正しく理解し、自社に合った運用を考えるための基礎知識としてお役立てください。

SNS採用、本当にやるべきですか?
仕組みは分かったけれど、「本当にうちの会社で成果が出るの?」と迷っていませんか?
続く記事では、採用頻度やリソース状況から「SNS採用をやるべき会社・やらなくていい会社」を人事目線で診断します。「流行りだから」と無駄な投資をして失敗する前に、自社に合った正しい判断基準をご確認ください。
目次
「SNS採用」という言葉を聞くと、どのような取り組みをイメージされるでしょうか。
「X(旧Twitter)やInstagramで求人票のURLを拡散すること」「バズらせて一気に知名度を上げること」……もしそのように捉えているとしたら、少し認識をアップデートする必要があります。
結論から申し上げますと、現代の採用活動におけるSNSの役割は、「応募を集める装置」ではなく、「求職者の不安を解消する『安心材料』としての棚」に近いものです。
例えば、あなたが初めて行く飲食店を探している場面を想像してみてください。
グルメサイトでお店を見つけた後、InstagramやGoogleマップで検索し、料理の写真やお店の雰囲気をチェックしませんか? もしそこで何も情報が出てこなかったり、数年前の投稿で止まっていたりしたら、「このお店、本当に営業しているのかな?」「雰囲気が悪かったらどうしよう」と不安になり、予約を躊躇してしまうはずです。
求職者の心理もこれと同じです。
多くの求職者は、求人サイトやスカウトメールで貴社の名前を知った後、「本当にこの会社に応募していいのか」を確認(裏取り)するためにSNSを検索します。
ここで、「どんな人が働いているか」「オフィスの日常はどんな雰囲気か」が見えることで、求職者の不安は「安心」や「興味」に変わります。つまり、SNS採用とは、求人情報を拡散する拡声器ではなく、興味を持ってくれた人が離脱しないようにするための「受け皿(=安心材料)」なのです。

「うちは求人媒体を使っているからSNSは不要では?」「コーポレートサイトがあれば十分では?」という疑問もよく挙がります。しかし、それぞれのチャネルには明確な得意・不得意があり、SNSはそれらを補完する立ち位置にあります。
以下の表に、主要な採用チャネルとSNSの違いを整理しました。
| チャネル | 主な役割 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 求人媒体 | 集客(出会い) | 今すぐ転職・就活したい人 | 即効性があるがコストがかかる |
| 人材紹介 | クロージング(決定) | 条件に合う候補者 | 一人あたりのコストが高い |
| 自社採用サイト | 会社情報の提供 | 会社名を検索した人 | 受け身になりがち |
| SNS(採用) | 認知・関係づくり | 予備軍、調べに来た人 | 中長期的に効いてくる |
このように比較すると、SNSは「公式情報(自社採用サイト)では伝わりきらない、空気感や温度感を伝えること」に特化していることが分かります。
求人媒体で「風通しの良い職場です」と文字で書くだけよりも、SNSで社員同士が談笑している様子を見せるほうが、求職者にとってよりリアルな安心感につながることも多いのです。
そもそも、なぜこれほどまでに「採用にはSNS」と言われるようになったのでしょうか。
単にスマートフォンの普及率が上がったから、というだけではありません。最も大きな要因は、求職者、特にこれから採用市場の主役となる若手層の「情報の探し方」と「信じる情報」が根本的に変化したことにあります。
かつて、仕事探しといえば「求人サイトで検索」や「Googleで企業名を検索(ググる)」が当たり前でした。しかし今の若手世代(Z世代やミレニアル世代)を中心に、「まずSNSでハッシュタグ検索(タグる)をする」という行動が一般化しつつあります。
彼らが求めているのは、きれいに整えられた「企業公式のメッセージ」よりも、嘘偽りのない「第三者の口コミ」や「加工されていない現場の様子」です。
「良いことばかり書いてある求人票」よりも、「社員が楽しそうにランチをしているインスタのストーリー」の方が、彼らにとって信頼度の高い情報源となるケースが増えているのです。

この行動変化に伴い、応募に至るまでの検討プロセスも変化しています。
以前であれば、「求人媒体を見る → 企業のWEBサイトを確認して応募」という、いわば「公式情報」のみを確認する流れが一般的でした。
しかし現在は、そこに「SNSでリアルな様子を確認する」という第3のプロセスが加わっています。
つまり、どれだけホームページが立派でも、この「3」の段階でSNS上に情報が何もなかったり、ネガティブな情報しかなかったりすると、せっかく興味を持ってくれた候補者が「よく分からないからやめておこう」と離脱してしまう可能性があるのです。

特に知名度が高くない中小企業にとって、この変化はチャンスでもありピンチでもあります。
大手企業であれば、SNSを見なくてもある程度のイメージが湧きますが、名前の知られていない企業は、情報が少ないと「実態の分からない不気味な会社」として警戒されがちだからです。
逆に言えば、SNSで「顔の見える発信」を積み重ねていれば、会社の規模に関わらず「ちゃんと実在していて、普通の人が働いているまともな会社だ」という「存在証明」を提示できます。
「誰もが知っている会社」ではないからこそ、SNSを通じて「透明性」を見せることが、求職者の安心感、ひいては応募への最後の一押しにつながりやすくなるのです。
「SNS採用のメリット」を教科書的に並べると、認知拡大、ブランディング、母集団形成など多岐にわたります。しかし、これから始める企業がいきなり全てを追うのは現実的ではありませんし、その必要もありません。
結論から申し上げますと、SNS採用の目的は以下の「必修(守り)」と「応用(攻め)」の2段階に分けて捉えてください。特に中小企業の場合、まずは「必修」の2つを満たすだけでも、採用活動には十分なプラス効果が生まれます。
【必修】最初に目指すべき目的(守り)
【応用】慣れてきたら狙う目的(攻め)

フォロワーが少なくても、投稿がバズらなくても、以下の2つさえ達成できていれば、SNS運用の初期目的はクリアと言えます。
①「安心材料」を作る(最重要)
これが中小企業にとって最大のメリットです。
前述の通り、今の求職者は応募前に必ずと言っていいほど「裏取り(検索)」をします。この時、最新の投稿があり、社員の顔やオフィスの様子が見えるだけで、「怪しい会社ではない」「ちゃんと人が働いている」という “存在証明”になります。
「投稿内容が面白いか」よりも、「会社の扉が開かれているか(透明性)」が、応募への躊躇をなくす鍵となります。
②「検索される前提」を整える(受け皿の強化)
求人媒体やエージェント経由で興味を持った人が、社名を検索した際にたどり着く場所を用意しておく目的です。
公式サイトは情報が硬くなりがちですが、SNSなら「今日のランチ」「社内イベント」といった柔らかい情報を置けます。この「検索の受け皿」があることで、「媒体で知る → SNSで安心する → 応募する」という導線が途切れずにつながります。
運用が軌道に乗り、投稿数が増えてきたら、以下のようなプラスアルファの効果も期待できるようになります。
③ ミスマッチ防止(辞退・早期離職を減らす)
求人票の「アットホームな職場です」という文字よりも、実際の動画や写真で現場の空気感を伝える方が、誤解がありません。
リアルな働き方を発信することで、「自分に合いそうだ」と思う人を惹きつけ、「自分には合わないかも」と思う人を自然に遠ざけるフィルター機能が働きます。結果として、入社後のギャップが減り、定着率向上につながります。
④ 採用広報の「資産化」と「関係維持」
SNSの投稿は、一度発信すればネット上に残り続けます。過去の投稿がそのまま「会社紹介資料」の代わりになり、会社説明会や面接での話題として再利用(資産化)できます。
また、すぐに転職を考えていない「潜在層」とも、フォロー・フォロワーの関係を通じて「ゆるいつながり」を持ち続けることができます。これは求人媒体(掲載が終われば接点が切れる)にはない、SNSならではの長期的なメリットです。
結論:まずは「安心感」だけで十分
多くの企業が「ブランディングしなきゃ」「バズらせなきゃ」と意気込んで挫折してしまいます。しかし、最初は「検索しに来てくれた人への、安心材料置き場」と割り切ってしまって構いません。それだけでも、応募の歩留まり(離脱率)を改善する効果は十分に期待できるのです。
ここまでSNS採用のメリットをお伝えしてきましたが、始める前に必ず押さえておくべき「現実(シビアな側面)」もあります。
多くの企業がSNS採用で挫折する原因は、運用スキル不足ではなく、「期待する成果と現実のギャップ」にあります。以下の3点をあらかじめ理解しておけば、無用な焦りや失望を防ぐことができます。
最も多い誤解がこれです。お金を払えばすぐに掲載され、応募が発生する「求人広告」と同じ感覚で始めると、痛い目を見ます。
SNSはあくまで「認知と信頼を積み上げる場(農耕型)」であり、「今すぐ人を狩る場(狩猟型)」ではありません。アカウント開設から最初の成果(応募や信頼醸成の実感)が出るまでには、早くても数ヶ月、通常は半年〜1年単位の時間がかかります。
「即戦力を来月までに採用したい」という短期決戦の課題解決には、SNSは不向きであることを理解しておきましょう。
「フォロワーが100人しかいないから、ウチのアカウントは失敗だ……」
そう嘆く人事担当者は多いですが、採用目的のSNSにおいて、フォロワー数はそれほど重要ではありません。何万人ものフォロワーがいても、その中に「自社に興味がある求職者」がいなければ採用には繋がらないからです。
重要なのは、フォロワーの「数」ではなく、検索してたどり着いた人への「質(安心感)」です。
たとえフォロワーが少なくても、「名前を検索して見に来てくれた、たった一人の有力候補者」の背中を押すことができれば、そのSNS運用は大成功なのです。
「SNSさえやれば、求人媒体費をゼロにできる」というのも、極端な期待です。
特に知名度のない中小企業の場合、待っているだけでSNSのアカウントを見つけてもらうことは至難の業です。
このように、既存の採用チャネルとセットで運用して初めて相乗効果を発揮します。「SNS単独ですべての工程を完結させる」のではなく、「既存の採用活動を底上げするための補強ツール」として位置付けるのが、最も確実な成功ルートです。
「よし、とりあえずやってみよう」と見切り発車でスタートすると、数ヶ月後に「何を投稿すればいいか分からない」「誰も見ていない」という事態に陥りがちです。
詳細な運用マニュアルを作る必要はありませんが、アカウントを開設する前に、以下の3つのポイントだけは「チーム内の共通認識」として言語化しておきましょう。

先ほどのセクションで紹介した「必修(安心材料)」と「応用(ミスマッチ防止)」のうち、自社はまずどこを目指すのかを決めます。
ここがブレていると、投稿内容が「真面目な仕事紹介」なのか「楽しいランチ風景」なのか定まらなくなります。まずは「求職者に安心してもらうこと(マイナスをゼロにする)」をゴールにするのが、最もハードルが低くおすすめです。
「求職者全員」というターゲット設定は、誰にも刺さらない原因になります。少なくとも「新卒(学生)」か「中途(社会人)」か、あるいは「エンジニア職」か「営業職」か、メインのターゲットを絞りましょう。
ターゲットによって「知りたい情報(=安心材料)」は異なります。「誰に見てほしいか」を一人思い浮かべるだけで、投稿のトーン&マナーが自然と決まってきます。
中小企業にとって、ここが最も現実的かつ切実な問題です。「毎日投稿する」といった高い目標を立てるのではなく、「業務の合間に無理なく続けられるライン」を見極めましょう。
「週1回、金曜日に1時間だけ使う」といったスモールスタートで構いません。重要なのは、「途中で更新が止まり、廃墟アカウント化すること(=逆ブランディング)」を避けることです。
これら3つをざっくりと決めるだけでも、「なんとなく」の運用からは脱却できます。「自社ならどうするか?」を具体的に判断するための基準については、次回の記事(判断編)で詳しく解説します。
本記事では、SNS採用の基礎知識や目的について解説してきました。
繰り返しになりますが、SNS採用は「流行りだからやるもの」でも「魔法のように応募が増える杖」でもありません。現代の求職者が当たり前に行うようになった「事前の裏取り(検索)」に応え、不安を取り除くための「採用活動のインフラ(補強手段)」です。
仕組みを理解した上で、次に考えるべきは「で、自社の今の状況で、それをやるべきなのか?」という判断です。
どれだけ有効な施策でも、リソースや課題感がマッチしていなければ、徒労に終わってしまいます。
といった、より実践的な「やる/やらないの判断基準」については、以下の記事で詳しく診断・解説しています。
本記事で全体像を掴んだ次は、ぜひ「自社の勝ち筋」を見極めるための判断材料としてご覧ください。

SNS採用、本当にやるべきですか?
仕組みは分かったけれど、「本当にうちの会社で成果が出るの?」と迷っていませんか?
続く記事では、採用頻度やリソース状況から「SNS採用をやるべき会社・やらなくていい会社」を人事目線で診断します。「流行りだから」と無駄な投資をして失敗する前に、自社に合った正しい判断基準をご確認ください。
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