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2025.06.11最終更新日2025.06.11

HR & 採用業界ニュース解説|AI時代における「働きがい」と期待値のズレ、「ゆるゆる転職」の台頭

HR & 採用業界ニュース解説|AI時代における「働きがい」と期待値のズレ、「ゆるゆる転職」の台頭

梅雨入り間近、じめじめとした季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
6月は新入社員が会社に慣れてくる頃合いですが、同時に様々な課題が見えてくる時期でもあります。この時期だからこそ知っておきたい人事・採用業界の最新ニュースを、いつものメンバーで深掘りしていきます。

内藤さん
田中さん
小林さん

今回は第8回目、前回に引き続き採用支援のベテラン内藤さんと、新人の田中さん、そして進行の小林の3人で、しっかり解説していきたいと思いますので、最後までお付き合いください。

採用に関するお悩み、ご相談ください!

採用におけるミスマッチ、採用費の高騰、採用した従業員の早期離職など、人材採用に関するお悩み・ご相談のある方はお気軽に内藤一水社までご連絡ください。採用業界のプロである私たちが丁寧にサポートします。

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新入社員の早期離職問題:AI時代における「働きがい」と期待値のズレ

最初のニュースは、以前も取り上げたことがありますが「新入社員の早期離職」についてです。実はこの問題、意外なことに「AIの進化」が背景にあるという指摘がありますが、内藤さん、このあたり詳しく教えていただけますか?

新入社員の早期離職には、企業側と若手側で「働きがい」と「やりがい」を混同していることが大きく影響しています。たとえば、採用時に「働きがいのある企業です」とだけ伝えても、入社直後にはそれを実感しにくい。これが入社前後の期待ギャップを生み、離職につながるのです。

そもそも「働きがい」と「やりがい」はどう違うのでしょうか?

簡単に言うと、「やりがい」は目の前の業務を通じて得られる達成感です。たとえばイベントを成功させ、顧客や社内から感謝されるようなケースですね。一方で「働きがい」はもっと長期的な視点で、自社でスキルやポジションを成長させた結果として数年後に実感できるものです。入社した直後に「働きがい」を求めると、実態と期待のずれが起こります。

なるほど。企業が「働きがい」をアピールするからこそ、新入社員はすぐ何かを得られると思ってしまうのですね。

その通りです。だから採用段階で「数年かけて育むものだ」という前提を伝えないと、入社後のミスマッチが生じます。企業は採用だけでなく、入社後の定着や育成を含めた従業員体験(EX)設計を考える必要があります。

では、AIの進化はどのように影響を与えているのでしょうか?

AIやRPAによって、かつて新入社員が担当していた単純作業の多くが自動化されています。たとえば、イベント後のアンケート集計やフォローメールの作成はシステムに任せられる時代です。さらに、AIは顧客データの分析や売上予測など、以前は難易度の高い業務まで担当するようになりました。その結果、上司から「分析しておいて」といった依頼が減り、新入社員には「電話でリサーチする」「来場者にアポイントを取る」といった、お客様対応に近い仕事だけが残っているケースが増えています。

電話対応ばかりだと、業務を通じた成長実感が得にくいですね…。

まさにその通りです。従来のOJTでは、最初に簡単な事務作業を覚え、その後ステップを踏んで複雑な業務に移ることで、ビジネス全体の流れや思考プロセスを学んできました。しかしAIが「基礎練習」の役割を担うと、新入社員は「何をすれば成長できるのか」が見えにくくなってしまう。企業はAIでは代替できない「人間ならではの価値」を学ばせるために、より緻密なOJT設計が求められています。

経営層や現場の先輩とも認識にずれがあるのでしょうか?

ええ。経営層や採用責任者は「働きがい」という言葉をポジティブに使いがちですが、現場では日々の目の前の業務を優先し、部下育成まで手が回らないという現実があります。つまり、経営層の理想・現場の実態・新入社員の期待がバラバラで、このギャップが早期離職の構造的要因になっているのです。

メディアで「働きがい」「心理的安全性」といった言葉を聞くと、逆にギャップを生むわけですね。

そうです。たとえば新入社員が「働きがいを実感できない」と訴えても、現場はどう対応すればいいか分からない。本来は人事部門が経営層と現場、新入社員の間をつなぐハブ役を担い、「経営のビジョンを現場に落とし込む」「現場の声を経営にフィードバックする」「新入社員の期待値を管理する」といった統合的な取り組みが必要です。

それでは、具体的に企業は何をするべきでしょうか?

まず「働きがい」の定義を組織全体で共有し、「入社直後に手に入るものではなく、継続的に育むものだ」と丁寧に説明することが大前提です。採用段階で「サポートするので、まずはやるべきことをしっかりやろう」と伝え、現実的な期待値を設定してもらうことが重要です。
次に、新入社員自身に「Must(やるべきこと)」「Can(やれること)」「Will(やりたいこと)」の順序を理解させることです。まずはルーチン業務や基礎的なタスクをこなし、その実績を積むことでスキルが広がり、最終的に「やりたいこと」が見えてくる、という流れを示す必要があります。

AIによって「やるべきこと」が奪われると、その先に進みにくいということですね。

そうです。入社後数年は苦労が伴うことを前提に、先輩や上司が密にサポートする体制を整えるべきです。さらに新入社員が日々の業務で「やりがい」を感じられるよう、短期的な目標設定や達成感を得る機会を意図的に設けることも効果的です。
結論として、早期離職対策は単なる採用・育成の問題にとどまりません。組織文化の変革やマネジメント層の意識改革、そしてAI時代に適応した人材戦略の再構築を促す絶好のチャンスです。人事は戦略的役割を拡大し、組織全体を巻き込んだ取り組みを推進していく必要があります。

「ゆるゆる転職」の台頭:若手人材の新たなキャリア観と企業への示唆

次は、若手のあいだで広がっている「ゆるゆる転職」についてお話しします。新卒入社直後から転職サイトに登録し、すぐには動かずに情報収集や人脈づくりを長期的に続ける動きです。内藤さん、そもそも「ゆるゆる転職」とは何でしょうか?

「ゆるゆる転職」は、新卒で入社したばかりのタイミングで転職サイトに登録しつつ、すぐに転職を決めるわけではなく、ゆるやかに転職市場をウォッチし続けるスタイルです。たとえるなら「池に釣り糸を垂らしておく」状態で、良いスカウトがあれば応募する、といったイメージですね。選考に落ちても精神的ダメージが小さく、ゆとりを持って判断できるのがメリットです。内定をもらっても、すぐに現職を辞めるとは限らず、待遇や環境をじっくり比較検討する人が多いのも特徴です。

現職を続けながら転職市場を見ていくということですね。転職への「心の逃げ道」的な面もあるのでしょうか?

まさにそうです。仕事へのストレスや将来への漠然とした不安をやわらげる「心の逃げ道」として機能しつつ、自分の市場価値を客観的に把握する機会にもなっています。従来の転職は「不満や切迫感からすぐ辞める」ことを前提に動いていたのに対し、「ゆるゆる転職」は現状にそれほど不満がなくても、常によりよい選択肢を探り続ける合理的なアプローチです。

このトレンドが広がる背景には、どんな事情があるのでしょうか?

まず、若手は「終身雇用」への信頼が薄れ、「キャリアは自分で守る」という意識が強まっています。そのうえで、将来の給与水準に対する漠然とした不安がありながらも、今の給料より必ず高い条件が得られる保証はないため、すぐに動けないという現実もあります。さらに、現職の業務が多忙で、じっくり転職活動に時間を割けないケースが増えています。

転職サイトに登録するだけで、市場価値を測ることができるのですね。

そうです。転職サイトに登録すると、自分を求める企業からスカウトが来ますし、求人票を通して世の中のニーズや給与相場を知ることができます。たとえばdodaのデータでは、新卒入社直後(4月)の登録者数が2011年比で30倍以上に増え、過去最高を記録しています。これが一時的なブームではなく、構造的な変化であることを示しています。

企業としては、この「ゆるゆる転職」にどう対応すべきでしょうか?

いくつかのポイントがあります。まずは「労働条件と環境の改善」です。長時間労働や高ストレスの業務が「逃げ道」を生むので、働きやすい環境づくりが必要です。次に、「競争力のある報酬と福利厚生」の見直しです。給与に不安を抱く若手が多いため、市場水準に合わせた報酬制度にすることが重要です。
さらに、「キャリア開発と社内流動性の促進」も欠かせません。社内での明確なキャリアパスやジョブローテーションを用意し、外部を意識させない仕組みを作ることで、人材の定着を図ります。

確かに、働きやすい環境や自社内でしっかりキャリアを積めることを明確にすることは大切ですね。

そうですね。そして「従業員エンゲージメントとフィードバックの強化」です。定期的に社員満足度を調査し、不満を早期に察知して対処することで、離職リスクを下げられます。

従業員サーベイや1on1ミーティングの活用というところでしょうか。

最後に「従業員の市場価値理解と育成」を支援することです。若手が自分の価値を理解し、それを高められる教育機会や経験を提供することで、「ここにいたい」と思ってもらえる環境を育てられます。これらは単なるリテンション対策ではなく、企業のブランド力や従業員体験(EX)の再構築に直結します。
「ゆるゆる転職」という選択肢を持ちながらも最終的に自社に残ってもらうには、給与や労働時間だけでなく、キャリア成長への「安心感」と「期待感」を常に提供し続けることが鍵です。

激変する採用市場と人事の役割:AIとリスキリングがもたらす未来

新入社員の早期離職や「ゆるゆる転職」の話に続き、最後に「AI とリスキリング」が採用市場にもたらす変化と人事の役割がどう変わるのかを伺いたいです。内藤さん、お願いします。

はい。まさに今、人事・採用担当者は大きな転換期を迎えています。まず強調したいのは、AIの進化によって「任せられる仕事」が大きく変わってきている点です。例えば、かつて新入社員が学びながら取り組んでいた単純作業は、すでにAIやRPAが代替しつつあります。その結果、新入社員は「働きがい」を感じにくくなり、OJT自体の構造も変わっています。

ベテランの先輩たちも、自分の業務をこなしつつAI対応やスキル習得に追われているので、新人を手厚く指導する余裕がない現状がありますね…。

まさにその通りです。現場リーダーは、業務のデジタル化やリスキリングに忙殺されてしまい、新人育成の時間を確保できません。これまでの採用では「最低限の知識やスキルさえあれば育てられる」と考えられてきましたが、AI時代には「AIが苦手とする領域」や「新しい知識を素早く習得する学習力」が求められます。この点を踏まえると、従来の採用基準や選考プロセスは見直しが必要です。

具体的には、人事担当者にどんなスキルや視点が求められるのでしょうか?

まず、人事は単なる“管理部門”ではなく、「従業員体験(EX)の設計者」としての役割が求められます。ソニーがボーナス制度を見直した例にもあるように、報酬や制度を含めた“働くすべての体験”を戦略的に設計する視点が不可欠です。

働く体験全体をデザインする…従来の給与・評価制度だけでは足りないということですね。

その通りです。次に重要なのは「期待値マネジメントの徹底」です。採用段階で理想論ばかりを語るのではなく、入社後のリアルな仕事内容や成長プロセスを丁寧に伝える。これが入社後のミスマッチを防ぐポイントになります。

早期離職を防ぐには、やはり事前のコミュニケーションが鍵になるわけですね。

はい。そして「採用力」の強化も欠かせません。単に求人広告を出すというレベルではなく、労働市場の構造変化やスキルギャップを踏まえた戦略的な採用活動が必要です。情報非対称を減らし、企業が求める人材像と求職者の期待をすり合わせることが、企業全体の採用力向上につながります。

AI時代に合わせた人材要件を定義し直す必要があるわけですね。

まさにそうです。ここからは「リスキリングと人材育成の推進」の話です。人事部門は従業員に継続的な学習機会を提供し、特にベテラン社員が負担にならないよう配慮した育成体制を整える必要があります。採用と育成を分けて考えるのではなく、一体化して未来の組織に必要な人材を戦略的にデザインする「タレントマネジメント」の視点が欠かせません。

具体的には、どんな学習機会を用意すればいいのでしょうか?

例えば、社内勉強会やオンライン学習プラットフォームの活用、実務を兼ねたプロジェクト参加などです。AIを活用しながらも「人間にしかできない創造的な仕事」や「複雑な課題解決力」を磨く機会を増やすことがポイントです。

最後に、人事としての大きなミッションを教えてください。

人事・採用担当者はこれから「組織文化の変革推進者」としての役割を担うべきです。経営層・現場・従業員それぞれの認識ギャップを埋め、組織全体で働きがいを醸成する文化をつくる。これが人事の最も重要なミッションです。もはや人事はコストセンターではなく、企業の競争戦略の中核を担う「ビジネスパートナー」へと進化しています。

なるほど。人事自身が変革のリーダーになり、企業の未来をデザインするということですね。

ええ。人事は、市場やテクノロジーの変化をいち早くキャッチし、それが自社組織や人材にどう影響するかを予測しなければなりません。そして、「プロフェッショナルになること」というマインドを社員一人ひとりに浸透させ、自律的にキャリアを築ける支援を行う「コーチング」の役割も担います。最終的には、人事部門がコストセンターではなく、企業を成長に導くプロフィットセンターとして認識されることが、役割拡大の鍵なのです。

最後に

今回は、新入社員の早期離職から「ゆるゆる転職」、そしてAI時代における人事の役割の変化まで、多角的にお話しいただきました。

はい!「働きがい」と「やりがい」の本質の違いや、AIが私たちの仕事に及ぼす影響の大きさに改めて驚きました。人事の業務は本当に奥が深いと感じます。

その通りです。今日の議論を通して見えてきたのは、現代の採用市場が抱える課題は単なる「人手不足」ではなく、テクノロジーの進化や若手の価値観の変化、社内での認識ギャップなど、構造的に複合しているという点です。人事・採用担当者の皆様には、これらを「脅威」として捉えるのではなく、自社をより強く魅力的に変革する「好機」として捉えていただきたいと思います。

まさに、人事は「変革のリーダー」として、経営層と現場、そして社員一人ひとりの橋渡し役を担い、未来の組織をデザインしていく必要があるということですね。

おっしゃるとおりです。採用から育成、定着、従業員体験(EX)を含めた全体を戦略的に設計し、組織文化を変革していくことで、企業は持続的な成長を実現できます。

私も、今日の学びを活かして、さらに人事の仕事について深く考えていきたいと思います。

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