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公開日2026.03.12更新日2026.03.12

【2026年7月法改正】障がい者雇用の義務はどう変わる?人事担当者が知るべき対策と助成金

【2026年7月法改正】障がい者雇用の義務はどう変わる?人事担当者が知るべき対策と助成金

2026年7月1日、民間企業の法定雇用率が2.7%へ引き上げられ、障がい者雇用の義務対象となる企業が大きく拡大されます。これまで義務対象外だった「常用雇用労働者37.5人以上40人未満」の企業も、新たに障がい者を1名以上雇用する義務を負うことになります。

施行まで残り数ヶ月となる中、「自社は対象になるのか?」「採用や環境整備のコストが不安」と焦りを感じている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。障がい者雇用は、採用から定着までに時間がかかるため、今すぐの動き出しが不可欠です。

この記事では、2026年7月法改正の具体的な内容や未達成時のリスク、人事担当者が取るべき4つの対策ステップを網羅的に解説します。さらに、企業負担を大幅に軽減する「障がい者雇用で活用できる助成金」もご紹介。法改正への不安を解消し、計画的な準備を進めるためのガイドとしてお役立てください。

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目次

2026年7月施行!障害者雇用促進法の3つの改正ポイント

いよいよ2026年7月1日より、障害者雇用促進法の新たな基準が適用されます。今回の法改正は、企業の採用戦略や職場環境づくりに直結するため、人事担当者は主要な変更点を正確に押さえておく必要があります。

押さえておくべきポイントは、2026年7月に変わる「法定雇用率の引き上げ」「義務対象事業主の拡大」の2点と、義務達成のためにぜひ活用したい「短時間労働者の算定特例(2024年施行済)」の計3つです。

まずは、スケジュールと変更点の全体像を表で確認しましょう。

適用時期 法定雇用率
(民間企業)
義務対象となる事業主の範囲
(常用雇用労働者数)
2021年3月~ 2.3% 43.5人以上
2024年4月〜
(現在)
2.5% 40.0人以上
2026年7月〜 2.7% 37.5人以上

ポイント1:法定雇用率が「2.5%」から「2.7%」へ引き上げ

今回の法改正における最大の注目点は、民間企業の法定雇用率の引き上げです。現在(2024年4月以降)2.5%である法定雇用率が、2026年7月1日には「2.7%」へと引き上げられます。

これにより、多くの企業で「雇用すべき障がい者の人数」が増加し、採用目標人数の見直しを迫られることになります。

【雇用人数の増加シミュレーション(従業員150人の企業の場合)】

  • 現在(2.5%): 150人 × 2.5% = 3.75人 ➔ 「3人」の雇用義務
  • 2026年7月以降(2.7%): 150人 × 2.7% = 4.05人 ➔「4人」の雇用義務

このように、これまで基準をクリアしていた企業でも、7月以降は新たに1名以上の採用が必要になるケースが多発します。未達成の場合は行政指導等の対象となるため、施行に間に合うよう、今すぐ計画的な採用活動をスタートさせることが不可欠です。

ポイント2:義務対象の事業主が「従業員37.5人以上」に拡大

特に中小企業にとって大きなインパクトとなるのが、障がい者雇用の義務対象となる事業主の範囲拡大です。これまで常用雇用労働者数が「40人以上」の企業が対象でしたが、2026年7月1日からは「37.5人以上」に引き下げられます。

【新たに義務対象となる企業の例】

  • 従業員数「38人」の企業:これまでは義務なし ➔ 2026年7月からは「1名以上」の雇用が義務化

※常用雇用労働者のカウントにおいて、週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者は「0.5人」として計算します。(例:フルタイム30人+短時間労働者16人=38人)

これまで義務の対象外だった「従業員37.5人以上〜40人未満」の企業は、今回初めて障がい者を雇用することになります。社内の業務の切り出しや受け入れ体制の構築には時間がかかるため、準備期間が数ヶ月しか残されていない現状を重く受け止め、早急に対応を進めましょう。

ポイント3:【おさらい】2024年施行「短時間労働者の算定特例」の活用

2026年7月の義務化・目標引き上げに対応するため、人事担当者が絶対に知っておくべきなのが、2024年4月から既に導入されている「短時間労働者の算定特例」です。

これまで、週の所定労働時間が20時間未満の障がい者は、原則として実雇用率の算定対象外でした。しかし現在のルールでは、特定の条件を満たす方に限り、週10時間以上20時間未満であっても、1人を「0.5人」として実雇用率にカウントできるようになっています。

【算定特例の対象となる方】

  • 重度身体障がい者
  • 重度知的障がい者
  • 精神障がい者

「フルタイムでの勤務は難しいが、短時間なら働ける」という障がいのある方は多くいらっしゃいます。この特例を活用して、週10時間からの業務(例:データ入力、清掃、書類整理などの切り出し業務)を任せることで、雇用率の達成がしやすくなります。障がい特性に応じた柔軟な働き方を提供することは、多様な人材が活躍できる企業としての競争力向上にも繋がります。

【人事担当者向け】自社は対象?まず確認すべき2つのこと

2026年7月の法改正まで残りわずかとなりました。
「自社は新たに義務の対象になるのか?」「具体的に何人雇用しなければならないのか?」と不安に感じている人事担当者の方も多いでしょう。
自社が障がい者雇用の義務対象となるかを判断し、今後の目標人数を定めるためには、以下の2つのステップで確認を行います。

まずは自社の「常用雇用労働者数」を正確に算出し、その数値をもとに「雇用すべき障がい者数」をシミュレーションしていきましょう。

「常用雇用労働者数」の正しい計算方法

障がい者雇用の基準となる「常用雇用労働者数」は、単純な従業員の「実人数(頭数)」ではありません。 週の所定労働時間によって、1人を「1人」として数えるか、「0.5人」として数えるかが決まっています。
まずは、1年を超えて継続雇用される見込みのある従業員(正社員、契約社員、パートタイマーなど雇用形態は問いません)について、以下の表に当てはめて自社の常用雇用労働者数を算出してください。

【常用雇用労働者のカウント方法(労働時間別)】

週の所定労働時間 カウント方法 該当する従業員の例
30時間以上 1人 正社員、フルタイムの契約社員など
20時間以上 30時間未満 0.5人 時短勤務の社員、週3日・1日7時間勤務のパートなど
20時間未満 原則 対象外 週2日勤務のアルバイトなど

■ 計算時の注意点

「従業員の実人数は40人いるが、そのうち10人は週25時間のパートタイマーである」という場合、常用雇用労働者数は以下のように計算します。

  • 週30時間以上:30人 × 1 = 30人
  • 週20時間〜30時間未満:10人 × 0.5 = 5人
  • 合計:35人(常用雇用労働者数)

この場合、実人数は40人でも、常用雇用労働者数は「35人」となるため、2026年7月以降(37.5人以上が対象)も義務対象外となります。雇用契約書や就業規則を確認し、正確な数値を算出しましょう。

雇用すべき障がい者数の算出シミュレーション

自社の正確な「常用雇用労働者数」が算出できたら、次に2026年7月以降に雇用すべき障がい者の人数(法定雇用障害者数)を計算します。

計算式は非常にシンプルで、以下の通りです。

【計算式】
自社の常用雇用労働者数 × 法定雇用率(2.7%) = 雇用義務人数

※算出された人数の小数点以下は、必ず「切り捨て」とします。

■ 企業規模別の算出シミュレーション例

  • 【例1】常用雇用労働者数が「37.5人」の場合
    37.5人 × 2.7% = 1.0125人
    ➔ 小数点以下切り捨てで「1人」
    ※これが、2026年7月から「37.5人以上の企業」に義務が発生する理由(1人以上となる境界線)です。
  • 【例2】常用雇用労働者数が「40人」の場合
    40人 × 2.7% = 1.08人
    ➔ 小数点以下切り捨てで「1人」
  • 【例3】常用雇用労働者数が「80人」の場合
    80人 × 2.7% = 2.16人
    ➔ 小数点以下切り捨てで「2人」
  • 【例4】常用雇用労働者数が「120人」の場合
    120人 × 2.7% = 3.24人
    ➔ 小数点以下切り捨てで「3人」

このように、自社の常用雇用労働者数に「2.7%」を掛けるだけで、2026年7月以降に何人の障がい者を雇用しなければならないかが明確になります。

このシミュレーションで出た「目標人数」と「現在の障がい者雇用数」を比較し、不足している人数を把握することが、法改正に向けた採用計画の第一歩となります。

法定雇用率が未達成の場合のリスクとは?

障がい者雇用の法定雇用率達成は企業の法的な義務です。未達成のまま放置した場合、金銭的な負担が発生するだけでなく、最終的には企業の社会的信用を失墜させる重大なリスクが潜んでいます。

具体的なリスクは、企業の「常用雇用労働者数」によって異なります。まずは以下の表で、自社にどのようなペナルティがあるのかを確認してください。

■ 企業規模別の未達成リスク早見表

企業規模
(常用雇用労働者数)
リスク①
障害者雇用納付金
リスク②
行政指導・企業名公表
達成時のインセンティブ
(支援金)
100人超 あり
(不足1人につき月額5万円)
あり 障害者雇用調整金
37.5人〜100人以下 なし
(※納付金は免除)
あり 報奨金

リスク1:障害者雇用納付金の支払い義務(100人超の企業対象)

常用雇用労働者数が「100人を超える企業」が法定雇用率を達成できなかった場合、最も直接的な金銭的ペナルティとなるのが「障害者雇用納付金」の徴収です。

  • 徴収額:不足している障がい者1人につき【月額 50,000円】

これは罰金ではなく、「障がい者を雇用するための設備投資や環境整備を行っている企業」と「行っていない企業」の間の経済的負担を調整するための制度です。徴収された納付金は、雇用義務を達成している企業への調整金や助成金として再配分されます。

障がい者を1人雇用できなかった場合、年間で60万円もの納付金が発生します。採用計画が遅れ、複数人の不足が長期間続けば、企業にとって見過ごせない純粋なコスト負担となります。

リスク2:行政指導から「企業名公表」までの流れ(全対象企業)

「自社は100人以下だから納付金はかからない。急がなくても大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。常用雇用労働者数37.5人以上となるすべての義務対象企業には、ハローワーク等の行政機関による厳格な指導と、最終的な「企業名公表」のリスクが等しく存在します。

未達成が著しい企業に対しては、以下のようなステップで行政指導が行われます。

■ 企業名公表がもたらす致命的なダメージ

ひとたび「障がい者雇用義務に違反し、指導を無視した企業」として社名が公表されれば、企業のコンプライアンス姿勢が問われます。取引先や顧客からの信用失墜、ESG投資の対象外への転落はもちろんのこと、何より一般的な新卒・中途の採用活動においても「ブラック企業」というネガティブなイメージを持たれ、致命的な悪影響を及ぼします。

【補足】義務を達成した企業にはインセンティブ(調整金・報奨金)も

リスクばかりに目が行きがちですが、国は法定雇用率を達成し、障がい者雇用に積極的な企業に対して金銭的なインセンティブも用意しています。

  • 障害者雇用調整金(100人超の企業向け): 法定雇用率を超えて障がい者を雇用している場合、超過1人につき月額2万9,000円(※一定数超過分は2万3,000円)が支給されます。
  • 報奨金(100人以下の企業向け): 納付金が免除されている100人以下の企業であっても、一定数を超えて障がい者を雇用している場合は、超過1人につき月額2万1,000円が支給されます。

行政指導という最悪の事態を避けるためだけでなく、このような前向きな支援制度も活用しながら、早期に受け入れ準備を進めることが持続可能な企業経営の鍵となります。

法改正に向けて人事担当者がやるべき4つの対策ステップ

2026年7月の法改正まで、残り約4ヶ月。採用活動から職場定着までには通常半年〜1年程度の期間を要するため、今すぐ計画的かつ体系的な準備を始めることが不可欠です。

場当たり的な対応を避け、義務達成と障がい者の長期定着を両立させるために、人事担当者が順を追って取り組むべき「4つのステップ」を解説します。

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ステップ1:現状把握と雇用計画の策定

まずは自社の現状を正確に把握し、「いつまでに・誰を・どうやって」採用するのか、具体的なロードマップを描きます。

  1. 不足人数の洗い出し: 前述の計算で出した「7月以降の目標人数」と「現在の雇用人数」を比較し、新たに何人の採用が必要かを明確にします。
  2. 雇入れ計画の策定: 不足人数を解消するために、ターゲットとなる障がい特性や、配属先、雇用形態、採用目標時期を定めたスケジュールを作成します。
  3. 「障害者雇用推進者」の選任: 障がい者雇用の計画立案や現場のサポートを牽引する責任者を選任します。(※法改正に伴い、7月以降は従業員37.5人以上の企業で選任が「努力義務」となります)

ステップ2:社内の受け入れ体制の構築

採用活動と並行して、障がいのある方が能力を発揮し、長期的に安心して働ける環境を整えます。主に以下の3つの観点から準備を進めましょう。

① 業務の切り出し(業務創出)
既存の業務プロセスを見直し、障がい特性に合わせて任せられるタスクを抽出・マニュアル化する。(例:データ入力、書類の電子化、郵便物の仕分け、社内清掃など)
② 現場の理解促進(マインドセット)
配属先の管理職や同僚に対し、社内研修や説明会を実施。障がい特性への正しい理解を深め、コミュニケーションのポイントを共有することで、現場の不安や偏見を払拭する。
③ 環境・制度の整備(合理的配慮)
【物理面】段差の解消、手すりの設置、休憩室の確保など。
【制度面】通院のための休暇制度、短時間勤務の導入、体調不良時の柔軟な対応など。

①の「業務の切り出し」は、既存社員のコア業務への集中を促し、組織全体の生産性向上にも繋がる重要なプロセスです。

ステップ3:採用チャネルの検討と確保

自社のニーズや受け入れ体制に合った人材を効率的に採用するため、複数の採用チャネル(募集経路)を確保します。障がい者雇用においては、以下の4つが主な窓口となります。

ハローワーク(公共職業安定所)
最も一般的な窓口。障がい者専門の相談員がおり、求人票の作成からマッチング、助成金の案内まで無料で手厚いサポートを受けられる。
民間人材紹介サービス
障がい者雇用に特化したエージェント。自社の要望に合った人材のスクリーニングや、面接設定などを代行してくれるため、採用担当者の工数を大幅に削減できる。
就労支援機関(就労移行支援事業所など)
障がいのある方の就労訓練を行う福祉機関。数ヶ月〜数年間の訓練を経て働く準備が整った人材を紹介してもらえる。定着支援(ジョブコーチ等)に強いのが特徴。
特別支援学校
若年層(新卒)の採用に有効。学校側と連携し、実習を通じて生徒の適性を見極めてから採用できるため、ミスマッチが起こりにくい。

採用活動は長期戦になることも多いため、早めに各機関の担当者とコンタクトを取り、自社の状況を相談しておくことをおすすめします。

ステップ4:活用できる助成金・支援制度の調査と申請準備

障がい者雇用を進める上で、企業のコスト負担(採用費、設備改修費、教育費など)を大幅に軽減してくれるのが、国が提供する「助成金制度」です。予算が限られる中小企業こそ、積極的に活用すべきです。

ただし、助成金の活用には「絶対に守るべき2つの鉄則」があります。

  • 鉄則1:必ず「事前」に申請・相談すること
    多くの助成金は、「求人票を出す前」「対象者を雇い入れる前」「設備を導入する前」に計画書の提出や管轄機関(労働局やハローワーク)への相談が必要です。「採用した後に事後申請しようとしたら対象外だった」という失敗が非常に多いため、必ず動き出す前に調査してください。
  • 鉄則2:「後払い」であることを考慮した資金計画を
    助成金は原則として、要件を満たして一定期間雇用した後や、設備の支払いが完了した後に支給されます。一旦は企業側で費用を立て替える必要があるため、事前の資金繰り計画に含めておきましょう。

助成金の種類や受給要件は複雑で、法改正によって要件が変わることもあります。まずは、ハローワークなどの専門窓口に「自社が使える助成金はないか」と相談に行くのが最も確実なルートです。

【コスト削減の鍵】障がい者雇用で活用できる助成金制度

障がい者雇用は、多様な人材の活躍を促す重要な取り組みである一方、採用活動や職場環境の整備、定着支援には一定の費用がかかります。特に予算が限られる中小企業の人事担当者にとって、コスト負担は大きな懸念材料でしょう。

しかしご安心ください。国や独立行政法人では、障がい者雇用を推進する企業を支援するため、非常に手厚い「助成金制度」を設けています。これらを上手に活用することで、企業の持ち出し費用を大幅に削減することが可能です。

ここでは、代表的な助成金を「採用時(人件費の補助)」と「定着支援・環境整備(設備・教育費の補助)」の2つのフェーズに分けてご紹介します。

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採用時に活用できる助成金(人件費の負担軽減)

新たに障がいのある方を雇用する際、採用後の人件費や初期教育コストを軽減するための助成金です。初めて障がい者雇用に取り組む企業にとって、採用のハードルを下げる強力な後押しとなります。

■ 採用時に使える主な助成金一覧

助成金名 概要・目的 最大支給額(中小企業の場合)
特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)
ハローワーク等の紹介で、
障がい者を継続して雇用した場合に
支給される。
最大 240万円 / 人
(※重度障がい者・精神障がい者の場合)
トライアル雇用助成金
(障害者トライアルコース)
原則3ヶ月間の「お試し雇用」を行い、
適性を見極めてから常用雇用へ移行できる制度。
最大 4万円 / 月
(※精神障がい者は最大8万円/月)

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

ハローワークや指定の民間職業紹介事業者からの紹介を受けて、障がい者を継続雇用する事業主に対して支給される、最もポピュラーな助成金です。
支給額は、障がいの程度や労働時間によって異なります。例えば、中小企業が「重度身体・重度知的障がい者」や「精神障がい者」を週30時間以上雇用した場合、最長3年間で最大240万円が分割して支給されます。(短時間労働の場合は最大80万円)。長期的な視点で雇用を継続する企業にとって、非常に魅力的な支援策です。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

「本当に自社で活躍してもらえるか」「どんな業務が適しているか」という不安を解消するための制度です。原則3ヶ月間の有期雇用(トライアル雇用)として雇い入れ、企業と求職者双方が適性を確認してから常用雇用へ移行できます。
対象者1人につき月額最大4万円(最長3ヶ月)が支給され、精神障がい者の場合はさらに手厚く、月額最大8万円(一定期間)が支給される特例もあります。ミスマッチを防ぎ、低リスクで雇用を始められる有効な選択肢です。

定着支援・環境整備で活用できる助成金

障がいのある方が長く安心して働き続けられるよう、社内設備のバリアフリー化や、専門的なサポート体制を構築するための助成金です。

■ 定着・環境整備に使える主な助成金一覧

助成金名 概要・目的 支給額の目安
障害者介助等助成金・
作業施設設置等助成金
スロープや手すりの設置
手話通訳者の委嘱
通勤用バスの購入など、
物理的な環境整備や配慮にかかる費用を助成。
かかった費用の 2/3 〜 3/4 など
(※上限額はメニューにより異なる)
障害者雇用安定助成金
(障害者職場適応援助コース)
障がい者の職場定着をサポートする
専門家「ジョブコーチ」を
事業所に配置・活用する費用を助成。
支援計画に基づき算定
キャリアアップ助成金
(障害者正社員化コース)
有期雇用(契約社員など)の障がい者を、
正規雇用(正社員)に転換した場合に支給される。
最大 120万円 / 人
(※重度・精神障がい者の場合)

障害者介助等助成金・作業施設設置等助成金(JEED管轄)

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が支給する助成金です。「車椅子用のスロープやトイレを設置したい」「聴覚障がい者のための手話通訳者を配置したい」「通勤が困難な方の住宅賃借をサポートしたい」といった、具体的な環境整備にかかる費用の一部が助成されます。

障害者雇用安定助成金

ハローワークが窓口となる助成金で、代表的なものに「障害者職場適応援助コース」があります。これは、障がいのある方の職場適応を専門的にサポートする「ジョブコーチ(職場適応援助者)」を配置・活用した際に支給されます。現場の受け入れ体制に不安がある企業にとって、プロの介入を低コストで受けられるメリットがあります。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

有期雇用で雇い入れた障がいのある方を、正社員へ転換(ステップアップ)させた企業に支給されます。中小企業が精神障がい者などを正社員化した場合、1人あたり最大120万円が支給されます。「トライアル雇用 → 有期雇用 → 正社員」と段階を踏んで育成・定着を目指す企業に最適な制度です。

義務達成だけじゃない!障がい者雇用が企業にもたらす3つのメリット

障がい者雇用と聞くと、どうしても「法的な義務だから」「設備投資や指導にコストがかかるから」と消極的に捉えてしまう方も少なくありません。

しかし、法定雇用率の達成に向けた取り組みは、決して単なるコンプライアンス対応ではありません。障がい者雇用をきっかけとして、組織の活性化や生産性向上など、企業経営に多大なポジティブな影響をもたらします。

ここでは、障がい者雇用が企業にもたらす「3つの本質的なメリット」をご紹介します。

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メリット1:組織の多様性(D&I)推進とマネジメント力の向上

障がいのある社員が組織に加わることは、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)を推進する強力な第一歩となります。

異なる背景や特性を持つ人材が共に働く環境は、これまでの固定観念にとらわれない柔軟な発想を生み出し、組織に新たな視点をもたらします。

また、人事的な観点で見逃せないのが「現場のマネジメントスキルの向上」です。
障がいのある社員をマネジメントする過程では、「曖昧な指示を避け、具体的に伝える」「一人ひとりの特性や得意・不得意を理解して適材適所で配置する」といったコミュニケーションが求められます。この経験を通じて培われたマネジメント力は、結果として健常者の部下を育成する際にも活かされ、組織全体の心理的安全性と従業員エンゲージメントの向上に繋がります。

メリット2:業務プロセスの見直しによる「組織全体の生産性向上」

障がい者雇用において最も直接的なメリットを実感しやすいのが、業務効率の改善です。
障がいのある方に業務を任せる際、企業は必ず「業務の切り出し(既存業務の細分化と再構築)」を行います。このプロセスを経ることで、組織内に潜んでいた非効率が解消され、結果的に社員全員の生産性が向上します。

■ 業務の切り出しによる「Before/After」の効果

改善のポイント 【Before】これまでの課題 【After】切り出し後の効果
属人化の解消 特定の社員しかやり方が分からず、
休むと業務が滞っていた。
業務手順が可視化・マニュアル化され、
誰でも同じ品質で作業できるようになった。
コア業務への集中 営業や企画担当が、
データ入力や書類整理などの
事務作業に追われていた。
事務作業を障がいのある社員に任せることで、
既存社員が本来の利益を生むコア業務に
集中できるようになった。
無駄の削減 慣習で続けていたが、
実は不要な確認作業や重複プロセスが
存在していた。
業務を棚卸しする過程で無駄が発見され、
全体の作業工数(残業時間)が削減された。

障がい者雇用は、社内の「当たり前」を見直し、より付加価値の高い業務体制を構築するための強力なカンフル剤となります。

メリット3:SDGsへの貢献・ESG評価の向上と採用ブランディング

障がい者雇用への積極的な取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、社外からの評価を飛躍的に高めるブランディング戦略としても有効です。

特に以下の3つのステークホルダーに対して、強力なアピールポイントとなります。

  • 投資家・取引先からの評価向上(ESG・SDGs):
    近年重視される「ESG投資」や「SDGs(持続可能な開発目標)」において、障がい者雇用は「目標8:働きがいも経済成長も」「目標10:人や国の不平等をなくそう」に直結します。サプライチェーン全体で人権や多様性を重視する動きが強まる中、取引条件として有利に働くケースも増えています。
  • 消費者・顧客からのイメージアップ:
    「多様な人材が活躍できる企業」というポジティブな企業姿勢は、消費者からの共感と信頼を生み、中長期的なブランド価値の向上(売上貢献)に繋がります。
  • 求職者に対する採用競争力の強化:
    新卒・中途を問わず、現代の求職者は「働きやすさ」や「企業の社会貢献度」を企業選びの重要な基準としています。障がい者雇用に積極的であることは、「社員を大切にするホワイト企業」というメッセージとなり、優秀な人材を獲得する上での強力な武器となります。

障がい者雇用で困ったときの相談窓口

障がい者雇用に初めて取り組む企業や、採用後の定着に課題を感じている企業にとって、「どこに相談すれば良いのか」「どんなサポートが受けられるのか」は大きな不安要素です。

しかし、ご安心ください。国や自治体では、障がい者雇用を推進する企業を無料で支援する「公的な専門窓口」を複数用意しています。自社の状況に合わせてこれらを上手に活用し、二人三脚で雇用を成功に導きましょう。

まずは、代表的な3つの相談窓口の役割分担を確認してください。

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相談窓口 主な管轄 人事担当者が相談すべきタイミング・目的
ハローワーク
(公共職業安定所)
厚生労働省 【採用前〜採用時】
・求人票の出し方がわからない
・自社に合う人材を紹介してほしい
・使える助成金を知りたい
地域障害者職業センター JEED
(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
【採用後・定着時
・どのような業務を任せられるか専門的な評価がほしい
・現場での教え方についてプロ(ジョブコーチ)の支援を受けたい
障害者就業・生活支援センター
(通称:なかぽつ)
都道府県 / 指定法人 【採用前〜定着時(生活面含む)】
・採用前に職場実習を受け入れたい
・本人の体調不良や金銭面など、仕事以外の生活課題について相談したい

ハローワーク:採用活動と助成金申請の「総合窓口」

障がい者雇用を始めるにあたり、最も身近で最初の接点となるのが地域のハローワークです。各ハローワークには障がい者専門の窓口(専門援助部門など)が設置されており、企業の疑問に対してきめ細やかなサポートを提供しています。

企業が受けられる主なサポート

  • 障がい者求人の申し込み方法、魅力的な求人票の作成アドバイス
  • 自社のニーズに合った求職者の紹介と、採用面接への立ち会い・同席
  • 各種助成金(特定求職者雇用開発助成金など)の案内および申請手続き
  • 雇用率達成に向けた雇入れ計画の相談

「何から手をつければいいかわからない」という段階でも、まずは管轄のハローワークに足を運び、企業の状況を相談してみるのが確実な第一歩となります。

地域障害者職業センター:専門的なアセスメントと「ジョブコーチ支援」

ハローワークが主に「マッチングと助成金」を担うのに対し、より高度で専門的な視点から障がい者雇用を支援してくれるのが、各都道府県に最低1カ所設置されている「地域障害者職業センター」です。

企業が受けられる主なサポート

  • 障がいのある方の能力や適性に関する専門的な評価(アセスメント)
  • 雇用管理に関する事業主向けのアドバイス
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)の派遣

特に強力な支援が「ジョブコーチ支援」です。これは、専門のジョブコーチが直接企業に訪問し、障がいのある従業員には「仕事の覚え方」を、受け入れる現場の社員には「特性に合わせた教え方や配慮」を具体的にアドバイスしてくれる制度です。「採用したものの、どう指導していいか分からず定着しない」という課題解決に非常に有効です。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ):仕事と生活の「トータルサポート」

障がいのある方が長く働き続けるためには、職場環境だけでなく「日常生活の安定」も不可欠です。そこで、仕事と生活の両面から一体的な支援を行うのが「障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)」です。全国の障害保健福祉圏域ごとに設置されています。

企業が受けられる主なサポート

  • 採用前の「職場実習」の受け入れ斡旋とサポート
  • 採用後の定期的な職場訪問による定着支援
  • 従業員の健康管理、金銭管理、住居などの「生活面」に関する相談対応

「最近、本人の遅刻や欠勤が増えたが、家庭環境に問題があるのかもしれない」といった、企業だけでは踏み込みにくい生活面での課題に対して、なかぽつの支援員が本人と面談し、サポートに入ってくれます。長期的な安定就労を実現する上で、企業にとって最も心強いパートナーとなります。

まとめ:2026年7月の法改正は計画的な準備が成功の鍵

2026年7月1日に施行される障害者雇用促進法の改正(法定雇用率2.7%への引き上げ)は、多くの企業、特に今回新たに義務対象となる「従業員37.5人以上」の中小企業にとって大きな転換点となります。

施行まで残り約4ヶ月という限られた時間の中で、行政指導や企業名公表といった未達成リスクを回避し、雇用を成功させるためには「今日からの計画的な準備」が不可欠です。

最後にもう一度、人事担当者の皆様が「いますぐ取り組むべき4つのアクション」をおさらいしましょう。

  1. 自社の状況確認: 常用雇用労働者数を正確に計算し、7月以降の不足人数を把握する。
  2. スケジュールの策定: 「いつまでに・どんな業務を切り出して採用するか」雇入れ計画を立てる。
  3. 助成金の「事前」相談: 採用・環境整備のコスト負担を減らすため、必ず動き出す前にハローワークへ相談する。
  4. 専門機関との連携: 自社だけで抱え込まず、地域障害者職業センターや「なかぽつ」のサポートをフル活用する。

障がい者雇用は、決して単なる「法的な義務」や「コスト」ではありません。社内の属人的な業務プロセスを見直し、多様な人材が活躍できる強い組織(ダイバーシティ&インクルージョン)を創り上げる絶好のチャンスです。

「何から始めればいいかわからない」という場合は、まずは第一歩として管轄のハローワークへ足を運び、自社に合った採用計画と助成金の活用方法について相談することから始めてみてください。本記事が、貴社のスムーズな法改正対応と、組織のさらなる成長の一助となれば幸いです。

障がい者採用のプロがサポート

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