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2024.09.17最終更新日2024.09.17

話題の短時間正社員とは?導入手順やメリット・デメリットも交えて解説

話題の短時間正社員とは?導入手順やメリット・デメリットも交えて解説

少子高齢化の進行により、日本の労働市場の平均年齢は上がりつつあります。「令和5年版厚生労働白書」によると、2020年には労働力人口に占める60歳以上の割合が21.2%に達しました。少子高齢化に伴い介護人口が増加し、身内の介護に追われてフルタイムでの就労が難しい人材も増えてきており、柔軟な働き方が求められるようになってきました。

そこで今後重要になる雇用制度が「短時間正社員制度」です。
短時間正社員制度は、現代の労働環境と家庭生活のバランスを取りたいと考える多くの働き手にとって魅力的な選択肢となっています。

しかし、2024年現在、短時間正社員制度の普及率は低水準です。厚生労働省「雇用均等基本調査」によると、令和5年度における短時間正社員制度の普及率は、わずか17%という調査結果が出ています。

厚生労働省「雇用均等基本調査」より引用

今後さらに労働人口が減ると予想されるなかで、豊富な労働力を確保するためには、短時間正社員制度への理解・導入が欠かせません。

そこでこの記事では短時間正社員制度について、以下の内容を踏まえて解説します。

  • 短時間正社員制度とは?
  • 短時間正社員制度の導入手順
  • 導入するメリット・デメリット
  • 導入時の注意点

企業も新しい働き方の導入を検討する時期にきています。短時間正社員制度を取り入れたいと感じている人事担当者の方は、ぜひ最後まで読み、参考にしてください。

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短時間正社員制度とは?パートやフルタイム正社員との違いは?

こちらでは短時間正社員制度について、以下の内容を解説します。

  1. 短時間正社員の概要
  2. パート・アルバイトとの違い
  3. フルタイム正社員との違い
  4. 時短勤務との違い

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

短時間正社員の概要

短時間正社員とはフルタイム勤務が難しい従業員向けの雇用制度で、以下の1~5を満たす労働者を指します。

  1. 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結する者であること
  2. 当該事業所において正規の従業員(正規雇用)であること
  3. 所定労働時間がフルタイム勤務の正社員と比較して、次のa~cのいずれかに該当する者であること
    a. 1日の所定労働時間(7時間以上)を1時間以上短縮
    b. 1週間あたりの所定労働時間(35時間以上)を1割以上短縮
    c. 週あたりの所定労働日数(5日以上)を1日以上短縮
  4. 雇用形態・賃金形態が正社員として妥当な者であること
  5. 基本給・賞与・退職金等の算定方法がフルタイム勤務の正社員と同等な者であること

出典:社労士オフィスエルワン

短時間正社員は、以下のような長時間労働が難しい雇用者に対し、安定した雇用を供給することが目的です。

  • 育児のためフルタイム勤務が難しい人
  • 介護のためフルタイム勤務が難しい人
  • メンタルヘルスの不調でフルタイム勤務が難しい人
  • 仕事以外の活動に時間をかけたい人
  • ワークライフバランス実現のためにフルタイム勤務を避けたい人
  • 短時間勤務を希望する高齢者

短時間正社員制度は、多様な人材が働きやすい環境を提供するため、企業と従業員の双方にとって多くのメリットがあります。短時間勤務でも正社員としての権利と待遇が保証されるため、ワークライフバランスの向上や従業員の長期的な雇用を安定させる効果があります。

また企業側にとっても、優秀な人材を確保しやすくなるため、生産性の向上や労務管理の効率化など多くの利点があります。
更に短時間正社員の人数に応じて「キャリアアップ助成金」が受給可能です。キャリアアップ助成金を受給するには、以下2つのいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 雇用する労働者を短時間正社員に転換する
  2. 短時間正社員を新規で雇い入れする

以上の条件を満たし、正社員と同様の雇用形態・賃金形態を6ヵ月以上維持すると、企業は1人あたり20万円(大企業の場合は15万円)が受給可能です。当該従業員が母子家庭あるいは父子家庭の親であった場合、さらに10万円が加算されます。

短時間正社員はフルタイム正社員と比較して、労働時間は少ないですが、正規雇用に違いありません。そのため従業員は安定した雇用を享受でき、企業側にも柔軟な労働力の確保助成金の受給など、数々のメリットがあります。

パート・アルバイトとの違い

短時間正社員の契約形態は「無期労働契約」であるのに対し、パート・アルバイトの形態は「有期労働契約」です。契約期間の定めの有無は、労働形態の大きな違いを生みます。

短時間正社員の扱いはフルタイム正社員と同等なので、従業員に安定した雇用を提供します。
企業側としても正社員と同等の扱いをすることで人材流出が防げ、企業内で不足している労働力を充填可能です。

「労働力の補充なら、パートやアルバイトで十分ではないか」という疑問も湧いてくるかもしれません。ですがパート・アルバイトは有期労働契約であり、従業員の責任感という面で正社員に劣ります。

正社員としての帰属意識を従業員が持つことで、責任感やエンゲージメント(愛着心)が高まり、パート・アルバイトには任せられない仕事を任せられるのが短時間正社員の大きなメリットです。

フルタイム正社員との違い

短時間正社員とフルタイム勤務の正社員の違いは、やはり労働時間の差です。

フルタイム正社員は一般的には「週5日・1日8時間」の勤務形態を取ります。一方短時間正社員の勤務時間は、以下のように定められています。

  • 労働時間は1日7時間以下・1週間35時間以下
  • 労働日数は週4日以下

上記の規定により従業員に柔軟な労働を提供し、企業側はフルタイム正社員と同様、責任ある労働力を確保可能です。

一方、待遇に関しては、短時間正社員とフルタイム正社員はまったく同様です。ただし勤務日数や時間が異なるため、給与や賞与は必然的にフルタイム正社員より低い額面となります。

時短勤務との違い

「時短勤務」と「短時間正社員」は言葉が違えど、内容にほぼ差はありません。ただし適用条件に関しては、以下のような差があります。

時短勤務
3歳未満の子どもの育児や両親の介護が必要となった場合の制度
短時間正社員
理由にかかわらず、フルタイム勤務が厳しい人向けの制度

時短勤務は、フルタイム正社員が私生活とのバランスを取るために一時的に勤務時間を短縮する措置で事由が終わった際は元のフルタイム勤務に戻ることを前提としています。一方、短時間正社員は長期的にその労働形態で働くことが前提です。

短時間正社員制度を取り入れる5つのメリット

短時間正社員制度を取り入れるメリットは、次の5つです。

  1. 労働力の確保
  2. 従業員の生産性向上
  3. 離職率の低下
  4. 各種コストの削減
  5. 企業のイメージ向上

労働力の確保

短時間正社員制度を取り入れることで、フルタイム勤務が難しい人材を正社員として採用でき、労働力不足を補えます。

特に、豊富な知識・スキルを持つ高齢者は、老後の資金確保のために労働に意欲的な人材が多くいます。ですが高齢ゆえの体力的な問題からフルタイム勤務が難しく、結果として労働力を持て余しているのが現状です。

短時間正社員制度を導入することで、そのような優秀な人材を逃さず確保できます。企業の人材基盤の強化を図ることで、労働力不足の問題に柔軟に対応可能です。

従業員の生産性向上

短時間正社員制度を導入すれば、専門性・生産性が高くとも、長時間働けない人材をフル活用できるメリットがあります。

たとえば高齢の従業員をそのまま引退させるのではなく、短時間正社員に転換することで定年後でも労働力として確保可能です。嘱託社員という選択肢もありますが、こちらは非正規雇用のため、責任のかかる仕事を依頼し辛いのが現実。
そのため短時間正社員制度も取り入れて、人材に合わせた適切なマネジメントを行えれば、業務改善化が進みます。

また労働意欲や能力が高いパートタイム労働者を、短時間正社員として採用する選択肢も取れます。正規の従業員として雇用することでモチベーションを向上させ、生産性の向上が可能です。

離職率の低下

短時間正社員制度により、時短勤務を望む従業員に働きやすい職場を提供できます。これにより従業員の定着率が向上し、離職率低下が期待できます。

また、1度フルタイム正社員として雇用したものの、後に個々の事情によりフルタイムで働けなくなった人材への対応も可能です。このような人材に短時間正社員への転換の選択肢を与えることで、離職の防止を狙えます。

柔軟かつ安定した雇用形態を提供することは、企業にとっても多くのメリットがあります。

各種コストの削減

企業にとって、新規人材を募集・採用したり、教育訓練を施したりするコストは無視できません。せっかく採用した社員も定着せずに辞めてしまえば、どんどんコストがかさみます。
またコストには、採用や教育に関わった既存社員の時間という人的コストも当てはまります。

ここに短時間正社員制度を導入することで、転職市場での競争力が高まり、採用活動がスムーズになる可能性があります。

高いスキルを持つ、フルタイム勤務が難しいミドル・シニア層や主婦層をターゲットにすることで、競争の激しいフルタイム求人市場よりも効率的に人材を確保可能です。

これにより、上記のような採用コストを抑えられます。短時間正社員制度により、企業は総合的なコスト管理の強化が可能です。

企業のイメージ向上

短時間正社員制度を導入することで、企業は柔軟な働き方を提供する姿勢を示すことができ、これが労働者に優しい企業という印象を与えます。このような取り組みは、特にワークライフバランスを重視する若年層や子育て世代の求職者にとって非常に魅力的に映るでしょう。
企業は多様な働き方(ダイバーシティ&インクルージョン)を支援することで、多様性を尊重する、社会的責任を果たす企業としてアピール可能です。

こうした取り組みが評価されればブランドイメージが向上し、今後優秀な人材を採用しやすくなります。企業の競争力の強化を図るうえでも、短時間正社員制度の導入は有効な一手です。

短時間正社員制度を取り入れる3つのデメリット

こちらでは、短時間正社員制度を取り入れるデメリットを紹介します。

  1. 不公平感のまん延リスク
  2. 法規制や契約が複雑
  3. 残業を課すことが困難

メリットだけでなく、デメリットも確認しておきましょう。

不公平感のまん延リスク

短時間正社員とフルタイム正社員の、労働法上の扱いは同等です。ただし実際のところ、報酬や昇給・昇進に関しては明確な区別を行っている企業がほとんどです。

理由としては、やはり報酬や評価制度を区別しないと、フルタイム正社員と短時間正社員の間で軋轢を生む可能性が高いためです。企業としては、長時間にわたり働いてくれるフルタイム社員を優遇するのは致し方ないと言わざるを得ません。

短時間正社員と他の従業員間での不公平感を防ぐためには、十分な説明と適正な評価制度の導入が重要です。制度を導入する前に、全従業員に対して制度の趣旨やメリットを明確に説明し、共通の理解を得ることが基本です。また、報酬や評価制度も明確に設定し、全従業員が公平に評価される仕組みを作ることで不公平感を最小限に抑えられます。

法規制や契約が複雑

短時間正社員とフルタイム正社員は労働条件が異なるため、契約内容が複雑化する可能性があります。
たとえば、短時間正社員を導入すると、以下のような追加の負担が企業に生じます。

  • 労働時間に応じた給与や賞与の調整
  • 福利厚生や社会保険の適用
  • 雇用契約の内容調整

加えて、短時間正社員はまだ普及が進んでいない制度なので、関連する法令や規制の整備が十分ではありません。そのため今後の時勢に応じて、法改正や解釈の変更が生じる可能性があります。

企業の法令遵守のリスクが高まる可能性を、しっかり意識しておきましょう。

残業を課すことが困難

法令上はまだ「短時間正社員に残業を課してはいけない」という取り決めはありません。
ですが短時間正社員に残業をさせてしまうと「短い所定労働時間で働く」という本来の目的に反するため、トラブルの原因になります。

緊急の業務や繁忙期においても労働時間の制約があるため、対応できる範囲は限られてくるでしょう。
これによりチーム全体の業務負担が偏る恐れがあり、全体の不公平感につながる可能性も否めません。

短時間正社員制度を導入するにあたり、企業は労働力の適切な配置に気を配る必要があります。

短時間正社員の導入手順を4ステップで解説

短時間正社員制度の導入手順は、大きく4つのステップで進めることができます。

  1. 社会保険と雇用保険の適用条件を確認
  2. 導入目的とニーズを明確化
  3. 短時間正社員の労働条件・待遇と就業規則を設定
  4. 既存従業員への説明と制度運用の開始

効率的な導入プロセスを理解することで、企業は短時間正社員制度をスムーズに導入し、運用の成功を図ることができます。

社会保険と雇用保険の適用条件を確認

短時間正社員を導入する際、まずは社会保険と雇用保険の適用条件を再確認しましょう。
社会保険の適用には、以下5つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 会社の従業員数が101人以上
  • 所定労働時間が週20時間以上
  • 賃金が月給88,000円以上
  • 雇用期間が2ヵ月超の見込み
  • 学生でない

 なお上記の適用条件は2024年9月までの規定であり、2024年10月からは、以下の改正が行われます。

  • 会社の従業員数が101人以上
    会社の従業員数が51人以上

一方、雇用保険の適用条件は以下3つです。

  • 所定労働時間が週20時間以上
  • 雇用期間が31日超の見込み
  • 学生でない

上記の条件を満たしているか確認し、短時間正社員に適切に保険が適用できるように準備を整えましょう。

導入目的とニーズを明確化

次に、短時間正社員制度の導入の目的と、それに伴うニーズを明確化しましょう。目的やニーズが不明確なままでの導入は、期待された効果が得られず、従業員や経営に混乱をもたらす可能性があります。

例えば、育児支援や介護支援が目的で短時間正社員を導入する場合、実現すべき具体的な目標は働く親や介護者に対する福利厚生の向上です。これにより、優秀な人材の離職を防ぎ、企業としての魅力を高めることができます。

導入目的には、他にも以下のような事項が挙げられます。

  • 労働力不足の解消
  • 企業イメージの向上
  • 法令遵守と労働条件の整備

 上記の目的に伴うニーズは、以下のような事項になります。

  • 多様な働き方の促進
  • 優秀な人材の定着率向上
  • 企業の競争力強化

 目的とニーズを明確化し、制度導入の方向性をこのステップで定めることが重要です。

短時間正社員の労働条件・待遇と就業規則を設定

制度導入の目的とニーズを整理できたら、今度は企業の現状や目標に合わせ、具体的な設計を行います。

具体的には以下のような内容について設定し、就業規則を整備してください。

労働時間
1日あたりの労働時間や週の勤務日数の設定
給与・昇給
労働時間に応じた給与算出や、昇給・賞与の基準の明確化
評価基準
短時間正社員の労働時間・労働内容に合わせた評価基準の設定
福利厚生
短時間正社員への社会保険や雇用保険の設定
労務管理の方法
法令遵守や労働環境に合わせた労務管理方法の設定

給与や待遇に関しては特にセンシティブな内容なので、なるべく多くの従業員やステークホルダーの意見を取り入れる事が重要です。

フルタイム正社員との公平性を保ちつつ、企業の目的やニーズに合わせて調整を行いましょう。

既存従業員への説明と制度運用の開始

最後に社内広報で、既存従業員に短時間正社員制度の導入について周知します。制度導入に対する不安や疑問を払拭するために、状況に応じて社内説明会や個別面談を実施しましょう。

社内の理解がある程度進んだ後に、短時間正社員の募集や選定を行い、制度運用を開始します。

ここで重要なのは、運用開始したら終わりではなく、不満や疑問が出たら適宜調整・改善することです。運用後も定期的な制度の見直しを行い、必要に応じて改善していくことで社内への定着がスムーズに進みます。

短時間正社員を導入する際に注意すべき3つのポイント

短時間正社員制度を導入するためには、以下のような点に配慮する必要があります。

  1. 公平な評価制度の確立
  2. 労務管理の見直し
  3. 法規則と契約内容の確認

短時間正社員制度を成功させるために、具体的にどのようなポイントに注意すべきかを理解しておくことが重要です。

公平な評価制度の確立

短時間正社員制度のスムーズな導入には、公平な評価制度の確立が最も重要となります。特に既存のフルタイム正社員との軋轢を生まぬよう、注意が必要です。

短時間正社員はフルタイム正社員と同様、労働時間に応じた給与設定や福利厚生を適用しなくてはいけません。ですがただ適用するだけでは不公平感を招きます。

そこで、労働時間に応じた昇給や昇進、キャリアパスなどで区別することは重要です。適切な評価システムを導入することで、多くの従業員が納得する形を目指しましょう。

労務管理の見直し

短時間正社員制度の導入には、従来の労務管理方法の見直しが必須です。短時間正社員が増えると勤務時間や労働内容の管理が複雑化するため、対応したシステムや手続きの調整を行いましょう。

特に人材が大企業と比較して少ない中小企業は、新たな労務管理ツールの導入や、労務担当者のスキルアップが必要となる可能性が高くなります。
企業全体の労務管理を見直すことで、法令遵守と従業員の働きやすさを両立可能です。

法規則と契約内容の確認

短時間正社員はまだまだ法整備が進んでいない制度なので、常に最新の法令や規制をチェックする必要があります。

特に社会保険の適用条件については、数年単位で見直しが行われています。知らず知らずのうちに法令に違反することのないよう、注意が必要です。

契約内容をしっかりと確認し法改正などに速やかに対応することは、法令遵守だけでなく、従業員の信頼を得ることにもつながります。

【まとめ】短時間正社員の導入は企業のさらなる成長につながる

短時間正社員制度は、現代における働き方の多様化や少子高齢化に対応するための、足がかりとなる制度の1つです。
うまく活用することで労働力不足を解消するだけでなく、企業のブランドイメージの向上が期待できます。企業イメージの向上は、さらなる優秀な人材の確保につながります。

一方で、中小企業による短時間正社員制度の導入は、人材や予算の面で難しく、導入したくてもできない面があることは事実です。
そのようにお悩みの人事担当者の方は、ぜひ当社までご相談ください。90年にわたって企業の採用活動をサポートしてきた当社が、これまで培ってきた専門知識とノウハウで全力でサポートさせていただきます。

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