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採用事情
「早期離職を防ぎ、定着率を上げたい」
「RJP理論について聞いたことはあるけれど、詳しくは分からない」
採用ミスマッチを防ぎ、優秀な人材を長く定着させることは、多くの企業にとって重要な課題です。実際、高い離職率に悩み、改善策を模索している採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
採用に関するメソッドは数多く存在しますが、採用ミスマッチによる離職を防ぎたい場合、「RJP理論」を取り入れた採用活動が効果的です。
本記事では、RJP理論の概要や効果、従来の採用方法との違いを分かりやすく解説します。さらに実践に役立つ具体的な方法も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
RJPは「Realistic Job Preview」の略称であり、日本語では「現実的な仕事情報の事前開示」と訳されます。
つまり、採用活動において企業の良い面だけでなく、課題やネガティブな面も含めてリアルな情報を求職者に開示することを意味しています。
RJP理論を導入する最大のメリットは、入社後のミスマッチを防ぎ、長期的な人材確保を実現できる点です。
ポジティブな面だけをアピールし、とにかく応募者を集めることに注力する従来の採用活動では、入社後に現実を受け入れられなくなった社員が離職してしまうリスクがあります。
一方、RJP理論に基づく採用活動では、リアルな勤務環境に納得した人材だけが応募してくるようになるので、入社前後のギャップによる離職を回避することができるのです。
RJP理論には採用ミスマッチを防ぎ、人材の定着率向上につながる4つの効果があります。
例えば、求職者に対して残業が多いことを正直に伝えた場合、ハードな業務を受け入れられる人材が集まるため、残業を理由とした離職が大幅に減少します。
また、会社が抱える課題を開示すれば、チャレンジ精神のある意欲的な人材を獲得することも可能です。
採用段階から、企業と従業員の相互理解に基づく強固な組織づくりを見据えるのであれば、RJP理論の導入をおすすめします。
RJP理論が現在注目されている主な理由は、深刻化する早期離職問題の打開策となり得るためです。
厚生労働省の調査結果によると、令和3年3月卒業者の3年以内離職率は以下のようになっています。
事業所の規模 | 高卒 | 大卒 |
---|---|---|
5人未満 | 62.5% | 59.1% |
5~29人 | 54.4% | 52.7% |
30~99人 | 45.3% | 42.4% |
100~499人 | 37.1% | 35.2% |
500~999人 | 31.5% | 32.9% |
1,000人以上 | 27.3% | 28.2% |
そして、若年層の離職理由として大きな割合を占めているのは「仕事が合わない」という理由です。
東京労働局の調査によると、令和4年3月新規中学・高校卒業就職者のうち、3割以上が “仕事が合わないこと” を理由に離職しています。
このように若年層の早期離職が常態化している状況において、採用ミスマッチを防止し、人材定着を図ることは企業の重要課題と言えるでしょう。
そこで、持続可能な雇用関係の構築を重視するRJP理論が、現代のトレンドを的確に反映した手法として注目を集めているのです。
RJP理論を用いた採用と従来の採用方法では、企業と求職者が持続的な関係を築けるかどうかが大きな違いとなります。
具体的には、以下のような点が異なります。
従来の採用方法 | RJP理論を用いた採用方法 | |
---|---|---|
開示する情報 | 求職者にとってのポジティブな情報が中心 | ネガティブ要素も含めたリアルな情報を開示 |
選考で重視すること | 応募者の数を増やすことが優先 | 自社との適合性を重視 |
入社後のミスマッチ | 入社後にギャップを感じ、 早期離職につながりやすい |
事前に実態を理解しているため、 定着しやすい |
まず、従来の採用方法では「給料の高さ」や「充実した福利厚生」など、求職者にとって魅力的な情報を前面に出すことが一般的でした。
一方、RJP理論では、残業時間や業務の厳しさ、求められる成果など、ネガティブに捉えられがちな要素も積極的に開示します。
また、選考においても、従来は応募者の数を増やすことに重点が置かれがちでしたが、RJP理論では「自社の環境で活躍できるか」「求職者の価値観とマッチしているか」といった適性を重視します。
RJP理論を取り入れた採用方法を取り入れることで、採用の質が向上し、結果としてミスマッチによる離職を防ぐだけでなく、採用コストの削減や社員のエンゲージメント向上といったメリットも期待できます。
ここでは、採用にRJP理論を用いる4つのメリットを解説します。
RJP理論を採用に用いるメリットのひとつは、採用ミスマッチを減らし、離職率の低下が期待できる点です。
企業が職場環境や業務内容を包み隠さず開示することで、求職者は入社前に実際の働き方を具体的にイメージできるようになります。
その結果、企業のありのままの姿を理解・受け入れられる人材が集まり、「思っていた仕事と違った」といった理由での早期離職を防ぐことが可能になります。
求職者からの信頼を得られる点も、採用にRJP理論を用いるメリットのひとつです。
ポジティブな面だけでなく、ネガティブな面も正直に伝えることで、企業の誠実さや透明性が際立ちます。
その結果、求職者に「正面から自分と向き合ってくれる会社」という印象を与え、信頼関係を築くことができます。企業と従業員の信頼関係は離職率にも大きく影響する要素なので、採用活動にRJP理論を導入する価値は非常に高いといえます。
RJP理論を採用活動に活用すれば、応募者の質を向上させることが可能です。
企業がリアルな情報を開示することで、求職者自身が適性を見極めやすくなり、企業と価値観の合う人材が集まりやすくなります。
例えば、繁忙期には休日出勤がともなうことを説明しておけば、プライベートを重視する人は応募を控え、業務の特性を理解したうえで働く意欲のある人が集まりやすくなります。
質を重視することで応募者数が減少する可能性はありますが、選考や入社後の育成プロセスなどに要する労力を考えると、結果的に採用活動の効率が向上するといえるでしょう。
長期的な採用コストを削減できる点も、RJP理論に基づく採用活動のメリットです。
従来の手法では、企業のポジティブな面だけに惹かれた適性の低い人材も多く集まってしまうため、選考や教育に多くの時間やコストがかかる傾向にありました。
一方で、RJP理論を導入すれば、自社にマッチする人材が応募するため、選考プロセスがスムーズになり、入社後の定着率も向上。結果として、再採用や新人教育にかかるコストを抑えられます。
採用コストは企業にとって無視できない要素です。RJP理論を活用することで、「量より質」を重視した採用へシフトし、長期的なコスト削減を目指していきましょう。
次に採用にRJP理論を用いるデメリット及び注意点について解説します。
RJP理論を採用に用いると、企業イメージが低下する可能性があります。
求職者にとって都合の良い情報だけでなく、ネガティブな情報もあわせて開示するのがRJP理論の特徴です。
そのため、一部の求職者が企業に魅力を感じなくなったり、「この会社と自分は合わない」と判断したりするケースも少なくありません。
しかし、企業イメージの低下が危惧される一方で、RJP理論に基づく誠実な情報開示が信頼の獲得につながることもあります。また、ネガティブな情報とポジティブな情報のバランスを適切に調整すれば、イメージ低下のリスクを軽減することも可能です。
RJP理論を用いることで、求人への応募者数が減少する可能性があります。
従来の採用活動では企業の良い面を中心に情報開示するため、表面的な魅力に惹かれて多くの応募者が集まります。
一方で、RJP理論を用いた採用活動では、残業やノルマなどのネガティブな情報も正直に伝えるため、「この会社で働くのは難しそう」「もっと条件の良い企業を探したい」と考える求職者が増え、応募を控えるケースが増える可能性があります。
ただし、応募者の数は減っても、自社の実態を理解したうえで応募してきた人材の質は向上するため、採用ミスマッチが減少し、早期離職の防止につながります。結果的に採用コストの削減や組織力の向上といったメリットも期待できるでしょう。
RJP理論の効果を最大限に高めるには、提唱者のジョン・ワナウス氏が示す5つのガイドラインに沿って実践することが重要です。
以下の各ポイントを参考に、採用活動の質を向上させましょう。
まず、求職者に対してRJP理論の趣旨を明確に説明することが大切です。企業と求職者が「ミスマッチを防ぐ」という共通の目標を共有できるようにするため、最初に理論の意図をしっかり伝えましょう。
また、情報開示の際は、嘘や隠し事をせず、ありのままの実情を誠実に伝えることが信頼構築の鍵となります。
どのメディアを用いて情報を伝えるかを慎重に選ぶことが重要です。
例えば、多忙な業務環境について伝えるのであれば、実際の日常を動画で伝えるなど、情報の性質に合った伝え方を検討してください。
また、信頼性の低い情報は求職者の不信感を招くので、情報の選定には十分な注意が必要です。
企業のリアリティを伝えるには、現役社員の声が効果的です。実際に業務に従事している社員が、自らの体験や感じた現実を語ることで説得力が格段にアップします。
例えば、営業職の採用であれば、実体験をもとにした「契約獲得時の喜び」や「断られた際の苦労」など、現場ならではのリアルな声を発信するとよいでしょう。
採用においては、ポジティブな面だけでなく、ネガティブな要素も適切に伝えることが重要ですが、その際のバランス調整が求められます。組織ごとに最適な情報バランスは異なるため、どの程度のネガティブ情報を開示するかを検討し、求職者にとって分かりやすい形で情報提供を行うよう心がけましょう。
RJP理論に基づく情報開示は、選考プロセスの初期段階で行うことが効果的です。
会社説明会や求人広告の段階でリアルな情報を提供することで、求職者は自分の適性や働くイメージを早期に判断することができ、結果としてミスマッチを防ぐことが期待できます。
次に、RJPの具体的な実践方法を解説します。
RJP理論に基づく採用活動を進めるためには、まず採用ページで自社の課題や現状を率直に伝えることが重要です。
採用ページは、求職者が早い段階で目にするコンテンツとなるため、そこで企業が抱える課題を明示しておくと、求職者は自分自身の適性や志向をじっくりと検討することができます。
ただし、課題だけを伝えるのではなく、それに対する取り組みや改善策も同時に発信するなど、情報のバランスを調整することも大切です。
現場の実情を伝えるために、社員インタビュー記事の作成は非常に有効です。
実際に働いている社員の声を通じて、業務内容や一週間のスケジュール、さらにはやりがいや苦労した経験など、企業のリアルな姿を求職者に伝えることができます。
企業公式の情報だけでは得られない生の声は、求職者に対して説得力を持って響くため、RJP理論の趣旨に合致した実践方法と言えるでしょう。
RJP理論に基づく採用活動を展開する場合は、インターンシップや体験入社を積極的に受け入れるようにしましょう。
実際に業務を体験できるプログラムを設けることで、求職者は仕事の良い面だけでなく、課題や難しさも身をもって体感できます。
こうした実体験により、理想と現実のギャップが埋められ、入社後のミスマッチや早期離職のリスクを低減することが期待できます。
また、難しい業務へのチャレンジを通じて、求職者は入社後の業務に対する心構えを持つことができるようになります。
面接で仕事における大変なことや辛いことを正直に伝えるのも、RJPを実践する際のポイントです。
求職者自身が仕事の現実を理解し、覚悟したうえで業務に取りかかれるようになるので、ミスマッチによる早期離職を防止できます。
また、ネガティブな部分も含めて誠実に情報開示すれば、求職者との信頼関係が構築され、結果として採用活動全体の質が向上するメリットもあります。
RJP理論の具体的な実践方法に続き、採用にRJP理論を用いる際の注意点について解説します。
RJP理論を採用に用いる際は、ネガティブな情報の伝え方やその量に気を配る必要があります。過剰な情報開示は、企業イメージの低下や応募者数の減少につながるリスクがあるため、ポジティブな面とネガティブな面のバランスは「7:3」程度を目安に保つとよいでしょう。
例えば、「残業が多い」というネガティブ情報を伝える際は「その分、成長機会も多い」といったポジティブな側面も併せて説明することで、働くことの魅力が正しく伝わるはずです。
RJP理論を採用に取り入れる際は、人事部門だけでなく実際に業務を行っている現場社員との連携が不可欠です。採用業務自体は人事部門が担いますが、日々の業務実態や職場の雰囲気は現場で働く社員でなければ正確に伝えられません。採用担当者の認識だけを頼りにしていると、求職者に誤った情報を伝えてしまうおそれがあります。
採用担当者は定期的に現場社員とのミーティングを実施し、業務の魅力や課題を共有することで、求職者に対して一貫性のある情報提供ができるよう努めましょう。また、現場社員と求職者が直接対話する機会を設けることも、具体的な情報発信に繋がります。
応募者はそれぞれ異なる価値観や職業観を持っているため、一律の情報提供では求職者が自分に合った適性を判断しにくくなります。
特に面接の場は、応募者の考えや背景を把握しながら、必要な情報を適切に伝える絶好の機会です。面接官は、応募者ごとにどの情報が必要かを見極め、対話の中で柔軟に情報提供できるよう、事前にトレーニングを行っておくことが大切です。
RJP理論に基づく採用活動を実践すれば、早期離職を防ぎ、定着率を向上させることが期待できます。もし、採用や人材育成がうまくいかずに悩んでいる人事・採用担当者の方がいれば、RJPを積極的に取り入れてみることをおすすめします。
ただし、RJP理論自体はシンプルに感じられるものの、実際に運用してみるとさまざまな課題に直面することもあります。そのため、少しでもRJP理論の効果を高めたいのであれば、内藤一水社のような採用のプロに相談し、具体的な導入ステップや課題への対応策についてアドバイスを受けることが重要です。
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