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お役立ち情報
梅雨の走りでスッキリしない天候が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
人事・採用担当者の皆様におかれましては、めまぐるしく変化する採用市場や人材戦略のトレンドに、日々頭を悩ませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
採用ナレッジでは、そんな皆さまに役立つ情報をピックアップし、深掘りする「HR & 採用業界ニュース解説」を定期的にお届けしております。
今回は第7回目、前回に引き続き採用支援のベテラン内藤さんと、新人の田中さん、そして進行の小林の3人で、しっかり解説していきたいと思いますので、最後までお付き合いください。
採用に関するお悩み、ご相談ください!
採用におけるミスマッチ、採用費の高騰、採用した従業員の早期離職など、人材採用に関するお悩み・ご相談のある方はお気軽に内藤一水社までご連絡ください。採用業界のプロである私たちが丁寧にサポートします。
まずはこちらから無料相談さて、最初のニュースはこちら。
今春卒業した大学生の就職率が98.0%と、引き続き高い水準を維持しているというニュースです。内藤さん、この数字、どうご覧になりますか?
いやあ、98.0%ですか!すごい数字ですよね。前年が過去最高で、それより0.1ポイント下がったとはいえ、ほぼ全員が就職できている状況です。うちのクライアント企業様も新卒採用には毎年苦労されていますが、この数字を見ると少しホッとするような、いや、逆にプレッシャーを感じるような…(苦笑)。
本当に高い数字ですよね。厚生労働省と文部科学省の発表によると、就職率が2年連続で98%以上となるのは、現在の調査方法になった1997年卒以降で初めてだそうですね。学生さんにとっては有利な「売り手市場」が続いているということでしょうか。
そうですね、企業の採用意欲は依然として高いとされています。ただ、このニュース、見出しにもある通り『ただし大企業は「狭き門」』という部分がポイントになってきます。内藤さん、この点はどう思われますか?
おっしゃる通り、そこがミソですよね。結局のところ、学生さんの人気が大企業に集中する構図は変わっていない。だから、全体としては就職しやすい状況でも、誰もが知っているような有名企業に入るのは依然として難しい、と。そういうことなのでしょうね。
なるほど…。数字だけ見ると楽観視してしまいそうですが、実態はそう単純ではないのですね。学生さんにとっては選択肢が多いように見えても、結局は一部の企業に人気が集中してしまう、と。
ええ。専門家の見解でも、学生は知名度や待遇の良い企業を志望する傾向が強いため、大企業への競争は変わらず激しいとされています。これは、多くの学生さんが第一志望ではない企業への就職を選択せざるを得ない可能性も示唆していますね。
そうすると、企業側、特に中小企業にとっては採用のチャンスが広がるとも言えますが、注意も必要ですね。学生さんがもし「妥協して」入社した場合、入社後のモチベーション維持が難しくなったり、早期離職につながったりするリスクも考えられます。
まさしくその通りです。採用の「量」だけでなく「質」がますます問われる時代になってきています。企業としては、内定を出して終わりではなく、入社後のオンボーディングを手厚くしたり、明確なキャリアパスを示したり、エンゲージメントを高める施策に、これまで以上に力を入れる必要がありそうです。
採用後の定着まで見据えた戦略が重要ということですね。私もお客様に提案する際に、その視点をしっかり伝えていかないと!
ええ。そして、学生さんが依然として『知名度や待遇の良い企業を志望する傾向がある』という事実は、私たちのような中小企業やベンチャー企業にとっては、大企業と真っ向から『知名度』や『初任給』で勝負するのは難しいという現実を突きつけます。
そこで重要になるのが、いかに自社の「独自の魅力」を打ち出せるか、ですよね。人事担当者の皆さんには、単に求人票の条件を提示するだけでなく、自社の魅力を明確に言語化し、積極的に発信する「採用ブランディング」に注力していただきたいですね。
採用ブランディングですか。具体的にはどのようなことでしょうか?
例えば、成長機会の豊富さ、若手にも与えられる裁量権の大きさ、ユニークな企業文化、社会貢献性の高さ、ワークライフバランスの充実度などですね。ブランド力に頼らずとも、自社の価値観に共感してくれる学生さんを惹きつけることができれば、ミスマッチも減り、結果的に定着率の高い採用が実現できる可能性が高まります。
なるほど。「売り手市場」だからこそ、企業側も「選ばれるための努力」を怠ってはいけない、ということですね。当社も新卒採用を行っていますので、もっと魅力を発信する方法を考えていかないといけませんね。
続いてのニュースはこちらです。少しセンセーショナルな見出しですね。
このニュース、私の周りでもかなり話題になっていました!ソニーグループが冬のボーナスを廃止して、その分を月給に組み込むという話ですよね。「うちの会社もそうなるのかな?」なんて声も聞こえてきました。月給に振り分けられるなら手取り総額はあまり変わらないという話ですが、実際はどうなのでしょうか?
そうですね、表面的には月給が増えて、従業員の手取り総額は大きく変わらないとされています。企業側の狙いとしては、月給を増やすことで採用競争力を高めること、そして年俸制の導入・定着を推進し、収入を安定させることで物価上昇などにも対応しやすくし、人材獲得を有利に進めたい、という戦略的な意図があるようです。
なるほど。採用競争力の強化と、社員の生活安定というのは、表向きの理由としては理解できます。でも、それだけではない何か、裏の狙いもあるような気がするのですが…内藤さん、そのあたりはどうでしょう?
鋭いですね。記事中で弁護士の向井蘭先生も推察されていますが、ソニーは年次に関わらず役割に応じて報酬が決まる「ジョブグレード制」を採用していると言われています。今回の変更は、このジョブグレード制をさらに推し進める狙いがあると考えられます。
ジョブグレード制を推し進める、ですか?
ええ。日本の従来の賞与制度は、どうしても年功序列的な運用になったり、評価に差がつきにくかったりする側面がありました。賞与を月給に組み込むことで、個人の年ごとの評価によって賃金がよりダイナミックに変動する、成果主義の色合いを強めた制度を目指しているのではないか、と。つまり、大幅な昇給もあれば、逆に大幅な減給もあり得る、よりメリハリの利いた賃金体系になる可能性が指摘されています。
月給を上げて採用競争力を高める裏には「個人の成果で差をつける」というシビアなメッセージが込められていますね。
でも、それって社員のモチベーションにはどう影響するのでしょうか?ボーナスって、やっぱり「頑張ったご褒美」みたいな感覚がありますよね。それがなくなって、毎月の給与が評価で大きく変わるとなると…ワクワクする人もいれば、ちょっと不安になる人もいそうです。
まさに、そこが「二極化の懸念」として記事でも触れられていますね。もともと賞与は、利益が出た際に従業員をねぎらうための臨時的で特別な金銭支給という位置づけだったんです。それが時代を経て制度化され、夏と冬に定期的に支給されるようになりました。
ソニーの今回の動きは、単に業績に連動させるだけでなく、個人の評価もより密接にリンクさせて、支給額に大きな差をつけようという意図が強いのでしょう。これは、1年間の活躍度で報酬を決める年俸制と、従来の企業業績に連動した一律支給型の賞与の中間のようなスタイルと言えるかもしれませんね。
そうですね。ソニーの報酬改革は、単なる給与形態の変更というよりは、企業がどのような人材を求め、育て、最終的にどんな組織文化を築きたいのかという、より広範な人材戦略や企業文化の変革を伴う、先進的な試みと言えるでしょう。
優秀な人材には魅力的でも、安定志向の方には不安材料かもしれませんね…。
そうなると、人事の役割もますます重要になりますね。報酬体系の変更は、社員のエンゲージメントや心理状態にダイレクトに影響しますから。
おっしゃる通りです。人事部門は、単に給与計算をするだけでなく、透明性の高い評価制度の運用、公正なフィードバック、キャリア開発支援、そして従業員の心理的安全性の確保といった、より高度なエンゲージメント施策が求められるようになります。これは、人事の役割が、従来の管理業務から「従業員体験(Employee Experience)の設計者」へと進化していく兆候とも言えるかもしれません。
ただ、記事にもありましたが、ソニーのようにロジカルに進められる企業はごく一部で、この動きが日本の企業社会全体にすぐに広まるとは考えにくい、とも指摘していますね。
ええ。その理由として、企業側にとって賞与は、いざという時に削減が可能で、経営の調整弁としての役割を果たしてきた側面があるからです。また、日本型雇用の中で、ある種の「曖昧さ」を吸収する機能も持っていました。この「曖昧さ」は、一見非効率に見えるかもしれませんが、日本の労使関係や景気変動への柔軟な対応、従業員の帰属意識の維持などに寄与してきたとも言えます。
なるほど。ソニーの動きは先進的だけど、多くの日本企業にとっては、賞与が持つ「バッファー」としての機能や、日本型雇用に根差した安定性・柔軟性も依然として重要だということですね。
とはいえ、他の大企業でも報酬体系を見直す動きは出てきていますよね。
はい、例えば大和ハウス工業さんは2025年度に月例給与水準を大幅に改定し、月給と賞与の比率を見直すと発表しています。特に若手・中堅層に賞与比率の減少分を振り分けることで、同層の年収を約10%増加させる計画だそうです。
バンダイさんもそうですね。2022年度から賞与の一部を給与に振り分け、初任給を大幅に引き上げました。さらに2025年度には新卒社員の初任給を29万円から30万5000円に引き上げ、各役職の給与下限額も1万5000円増額するとのことです。これらは「売り手市場」で優秀な人材を確保するための、企業側の切実な努力の表れと言えるでしょうね。
では、最後のニュースです。こちらは人事担当者の皆さんにとっては、少し耳の痛い話かもしれません。
ハローワークに求人を出しても、9割が採用に至らない「空振り」だというニュースです。この数字、内藤さんはどう感じますか?
いやはや「9割空振り」ですか…。衝撃的な数字ですが、正直なところ、肌感覚としては理解できる部分もありますね。うちのクライアント企業様でもハローワークを利用しているところはありますが、なかなか期待通りの採用にはつながりにくい、という声はよく聞きます。応募があっても、求める人物像とかなり違っていたり、ひどい時には面接に来なかったり…。
何が原因なのでしょうか…。やっぱり、求人票の書き方や、会社の魅力の伝え方が今の求職者の方に響いていない、ということがあるのでしょうか。今の学生さんや求職者の方は、給与や福利厚生といった条件面だけでなく、どんな働き方ができるのか、どんな人たちと働くのか、会社のビジョンは何か、といったところまでしっかり見ていますからね。
そうですね。それに加えて、企業側が求めるスキルと、求職者の方が持っているスキルのミスマッチも大きな要因でしょう。「DX人材が欲しいのに、応募してくるのは事務経験者ばかり…」といったケースは、本当によく耳にします。企業側も、求める人材を獲得するためには、リスキリングの機会を提供するなど、育成の視点も必要になってくるかもしれませんね。
この「9割空振り」という数字は、ハローワークという採用チャネル自体の有効性について考えさせられますが、本質的な問題はそこだけではないように思います。結局は、企業が求人情報をどう作成し、どう発信しているか、そして求職者の方々のニーズをどれだけ深く理解できているかという、企業自身の「採用力」が問われているのではないでしょうか。
確かにそうですね。どんなに優れた採用チャネルを使ったとしても、求人情報そのものに魅力がなければ、応募は集まりにくいですよね。
ええ。それに、応募があった後の連絡のスピードや、面接での対応といった「候補者体験(Candidate Experience)」の質も、ミスマッチや選考途中の離脱に大きく影響している可能性があります。
お二人のご意見、非常に的を射ていますね。ハローワークの「9割空振り」という現象は、企業が採用活動において、単に求人媒体に依存するのではなく、自社の魅力を高め、求職者とのコミュニケーションを最適化する「採用力」そのものを根本から見直す必要がある、という警鐘と捉えるべきでしょう。
採用力、ですか…。具体的にどんなことを見直していく必要があるのでしょうか?
まず、求職者と企業のミスマッチが拡大している背景には、より大きな労働市場の構造的な変化があります。産業構造の変化やDXのような技術革新によって、企業が求めるスキルセットが急速に変化している一方で、求職者の方が持つスキルや、従来の教育システムで得られるスキルが、この変化に追いついていない「スキルギャップ」が生じていまです。
なるほど。企業が求める人物像と、市場にいる人材との間にズレが生じているわけですね。
加えて、特に若年層を中心に、仕事に求める価値観が多様化・高度化しています。給与だけでなく、ワークライフバランス、キャリアパスの明確さ、企業文化への共感、社会貢献性など、様々な要素を重視するようになっています。企業側がこれらの変化を的確に捉えられず、旧態依然とした条件提示や魅力訴求に終始している場合、求職者の期待とのミスマッチ、いわゆる「期待値ギャップ」が生じてしまいます。
最近はSNSや口コミサイトで、企業のリアルな情報を簡単に入手できるようになりましたから、求職者の方も目が肥えていますよね。企業側がそういった情報発信をうまくコントロールできていないと、誤解やネガティブなイメージが先行してしまって、ミスマッチをさらに助長してしまう可能性もありそうです。
その通りです。ハローワークの「空振り」問題は、単なる採用効率の問題として片付けるのではなく、急速に変化する労働市場における「スキルギャップ」と「期待値ギャップ」の深刻化、そして企業と求職者間の「情報非対称性」が拡大していることの表れだと理解すべきです。企業は、採用戦略の見直しだけでなく、人材育成(リスキリングやアップスキリングの機会提供)や、魅力的な組織文化の醸成まで含めた、より包括的な人材戦略を構築していく必要があるでしょうね。
さて、ここまで3つのニュースを見てきましたが、それぞれ現代の人事・採用における重要な課題を浮き彫りにしているように思います。内藤さん、今日のお話全体を振り返っていかがでしたか?
改めて人事・採用の仕事というのは奥が深いですし、変化のスピードが本当に速いなと感じましたね。就職率98%という華々しい数字の裏に潜む「質」の問題、ソニーさんのボーナス廃止に見る報酬体系の大きな変革、そしてハローワークのミスマッチ問題…。どれも他人事ではなく、私たち採用支援に携わる者としても、常にアンテナを高く張っていなければならないと痛感しました。
どのニュースにも共通して「企業は選ばれる側」という現実を感じました。給与や安定性だけでは魅力的な人材を惹きつけるのは難しいですよね。
お二人の感想、的確ですね。まさに、現代の採用市場は「企業が選ばれる時代」です。求職者や従業員が企業を選ぶ基準は多岐にわたりますので、魅力的な「従業員体験(Employee Experience)」の創出が鍵となりそうですね。
特にソニーさんの事例は、報酬制度の変更が単なるお金の話ではなく、企業文化や社員のパフォーマンスに対する意識変革と密接に結びついている点が印象的でした。人事・採用担当者は、単に「人を採る」「給与を払う」という役割に留まらず、自社の「企業文化」そのものを磨き上げ、従業員が「この会社で働きたい」「この会社で成長したい」と心から思えるような環境を、戦略的に設計・提供していくことが求められています。
その通りですね。そのためには人事担当者も進化し、従来の「管理」業務から経営戦略と連動した「戦略的パートナー」へと変わる必要がありそうです。
「戦略的パートナー」ですか…。そのためには、経験や勘だけに頼るのではなく、データに基づいた分析や、経営戦略としっかり連携した人材戦略の立案が不可欠になってくるということですね。
ええ。そして同時に、ソニーの事例で示唆された「二極化の懸念」にもあったように、従業員の心理や感情への細やかな配慮、透明性の高いコミュニケーション、そして求職者の心に響くメッセージの発信といった、ソフトな側面も極めて重要です。つまり、現代の人事には、データに基づいた論理的な戦略立案能力と、従業員や求職者の感情に寄り添い、共感を呼ぶコミュニケーション能力、その両方を高いレベルで兼ね備えた「戦略的パートナー」としての役割が強く求められていると言えるでしょう。これは、人事部門が企業の成長を力強く牽引する、まさに中核的な機能へと進化していることを意味しています。
論理的な戦略と、感情に寄り添うコミュニケーション…。どちらも本当に大切ですね。私ももっと勉強して、お客様に貢献できるようになりたいです!
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