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8月4日に中央最低賃金審議会から目安が示された後、各都道府県での審議が進み、全国の改定額が出揃いつつあります。人事・採用担当者の皆様にとって毎年重要なこの話題ですが、今年の改定は、例年以上に企業経営や採用戦略に大きな影響を与える可能性を秘めています。
今回の改定では、全都道府県で時給1,000円を突破し、目安を上回る大幅な引き上げを決めた県も相次ぐなど、企業の人事・採用戦略に大きな影響を与える結果となっています。
株式会社リクルートの調査によれば、現在のバイト求人の募集時平均時給の約4割が今回の改定で最低賃金を下回るとされており、多くの企業にとって他人事ではありません。さらに、時給アップに伴い扶養内で働くパート・アルバイトの労働時間が減少し、かえって人手不足が深刻化する「新たな年収の壁」問題への対策も急務となっています。
本記事では、確定した全国の最低賃金の重要ポイントを解説するとともに、目前に迫った10月の発効に向けて、人事担当者が具体的に何をすべきかを改めて整理します。

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中央最低賃金審議会が8月4日に目安を答申した後、各都道府県の地方審議会で審議が進められ、2025年度の全国の改定額が出揃いました。
今回の改定がいかに大きなインパクトを持つか、株式会社リクルートの調査結果が物語っています。調査によると三大都市圏のアルバイト・パート募集時平均時給のうち、実に約4割が新しい最低賃金を下回る「最低賃金割れ」の状態になると試算されています。これは、多くの企業で既存の求人情報の見直しや、採用戦略の再構築が不可避となることを意味します。
この大きな変化を踏まえ、今回の改定における3つの重要ポイントを見ていきましょう。
今回の改定で最も象徴的なのは、史上初めて全国47都道府県の最低賃金が時給1,000円を超えたことです。これまで1,000円未満だった青森県や秋田県など15県がすべて大台を突破しました。
これにより、地方の採用市場においても「時給4桁」がスタンダードとなり、求職者の意識も大きく変わることが予想されます。これまでの感覚で時給を設定していると応募が集まらないという事態に直結しかねません。
中央審議会が示した目安額は、あくまで参考です。今回の改定では、その目安をさらに上回る「独自の上乗せ」を決めた県が相次ぎました。
特に引き上げが目立ったのは以下の県です。
これらの動きの背景には、近隣県との人材獲得競争の激化や物価高騰に対する強い危機感がうかがえます。自社の地域の改定額だけでなく、近隣の競合エリアの動向も注視する必要があるでしょう。
全国で最低賃金が最も高いのは東京都の1,226円、次いで神奈川県の1,225円でした。一方、最も低い水準は高知、宮崎、沖縄県の1,023円です。
全都道府県が1,000円を超えた一方で、最高額と最低額の差は203円と、依然として大きな開きがあります。この価格差により全国展開する企業にとっては地域ごとに異なる人件費の管理がより複雑になり、地方企業にとっては都市部への人材流出というリスクに直面し続けることになります。
貴社の事業所が所在する都道府県の金額をご確認ください。また、採用活動で競合となる近隣の都道府県や支社の所在地の金額もあわせて把握しておくことが、今後の人事戦略を立てる上で重要になります。
| 都道府県 | 改定予定額 | 引上げ額 | 発効予定年月日 |
| 北海道 | 改定予定額1,075円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年10月4日 |
| 青森県 | 改定予定額1,029円 | 引上げ額76円 | 発効予定年月日2025年11月21日 |
| 岩手県 | 改定予定額1,031円 | 引上げ額79円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 宮城県 | 改定予定額1,038円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年10月4日 |
| 秋田県 | 改定予定額1,031円 | 引上げ額80円 | 発効予定年月日2026年3月31日 |
| 山形県 | 改定予定額1,032円 | 引上げ額77円 | 発効予定年月日2025年12月23日 |
| 福島県 | 改定予定額1,033円 | 引上げ額78円 | 発効予定年月日2026年1月1日 |
| 茨城県 | 改定予定額1,074円 | 引上げ額69円 | 発効予定年月日2025年10月12日 |
| 栃木県 | 改定予定額1,068円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月1日 |
| 群馬県 | 改定予定額1,063円 | 引上げ額78円 | 発効予定年月日2026年3月1日 |
| 埼玉県 | 改定予定額1,141円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年11月1日 |
| 千葉県 | 改定予定額1,140円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月3日 |
| 東京都 | 改定予定額1,226円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月3日 |
| 神奈川県 | 改定予定額1,225円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月4日 |
| 新潟県 | 改定予定額1,050円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年10月2日 |
| 富山県 | 改定予定額1,062円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月12日 |
| 石川県 | 改定予定額1,054円 | 引上げ額70円 | 発効予定年月日2025年10月8日 |
| 福井県 | 改定予定額1,053円 | 引上げ額69円 | 発効予定年月日2025年10月8日 |
| 山梨県 | 改定予定額1,052円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 長野県 | 改定予定額1,061円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月3日 |
| 岐阜県 | 改定予定額1,065円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月18日 |
| 静岡県 | 改定予定額1,097円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年11月1日 |
| 愛知県 | 改定予定額1,140円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月18日 |
| 三重県 | 改定予定額1,087円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年11月21日 |
| 滋賀県 | 改定予定額1,080円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月5日 |
| 京都府 | 改定予定額1,122円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年11月21日 |
| 大阪府 | 改定予定額1,177円 | 引上げ額63円 | 発効予定年月日2025年10月16日 |
| 兵庫県 | 改定予定額1,116円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月4日 |
| 奈良県 | 改定予定額1,051円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年11月16日 |
| 和歌山県 | 改定予定額1,045円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年11月1日 |
| 鳥取県 | 改定予定額1,030円 | 引上げ額73円 | 発効予定年月日2025年10月4日 |
| 島根県 | 改定予定額1,033円 | 引上げ額71円 | 発効予定年月日2025年11月17日 |
| 岡山県 | 改定予定額1,047円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 広島県 | 改定予定額1,085円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年11月1日 |
| 山口県 | 改定予定額1,043円 | 引上げ額64円 | 発効予定年月日2025年10月16日 |
| 徳島県 | 改定予定額1,046円 | 引上げ額66円 | 発効予定年月日2026年1月1日 |
| 香川県 | 改定予定額1,036円 | 引上げ額66円 | 発効予定年月日2025年10月18日 |
| 愛媛県 | 改定予定額1,033円 | 引上げ額77円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 高知県 | 改定予定額1,023円 | 引上げ額71円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 福岡県 | 改定予定額1,057円 | 引上げ額65円 | 発効予定年月日2025年11月16日 |
| 佐賀県 | 改定予定額1,030円 | 引上げ額74円 | 発効予定年月日2025年11月21日 |
| 長崎県 | 改定予定額1,031円 | 引上げ額78円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
| 熊本県 | 改定予定額1,034円 | 引上げ額82円 | 発効予定年月日2026年1月1日 |
| 大分県 | 改定予定額1,035円 | 引上げ額81円 | 発効予定年月日2026年1月1日 |
| 宮崎県 | 改定予定額1,023円 | 引上げ額71円 | 発効予定年月日2025年11月16日 |
| 鹿児島県 | 改定予定額1,026円 | 引上げ額73円 | 発効予定年月日2025年11月1日 |
| 沖縄県 | 改定予定額1,023円 | 引上げ額71円 | 発効予定年月日2025年12月1日 |
※2025年9月5日現在(一部見込額)

今回の最低賃金改定は、最低賃金に近い水準で働く約700万人の労働者に影響を与えると試算されています。特に中小・零細企業では、従業員の5人に1人以上が影響を受けるとのデータもあり、人事・採用担当者としては早期の対策が不可欠です。
ここでは、企業が「今から取り組むべきこと」を、具体的な3つのステップに分けて解説します。
まずは、今回の改定が自社の誰に、どの程度影響するのかを正確に把握することから始めましょう。
最低賃金が引き上げられた結果、勤続年数の長いパート・アルバアルバイトと、新人スタッフの時給が同じになってしまう、あるいは逆転してしまうといった事態は、既存従業員のモチベーション低下に直結します。こうした不公平感が生じないか、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
最低賃金の改定による人件費の増加は避けられません。それを吸収し、持続的な経営を可能にするための対策を全社的に検討する必要があります。
最低賃金の改定は、守りの「人材定着」と、攻めの「採用強化」の両面から戦略を見直す絶好の機会です。
STEP1で確認した給与の逆転現象などを解消し、既存従業員の公平性を保つための賃金テーブルの見直しが不可欠です。
また、賃金だけでなく、働きがいのある職場環境やキャリアパスの提示、福利厚生の充実など、従業員が「この会社で働き続けたい」と思える魅力づくりを一層強化しましょう。
アクション案:最低賃金改定の「前倒し実施」を検討する
10月の改定適用を待たずに、例えば8月や9月から先行して新しい賃金体系を適用するという一歩先を行く戦略です。
「前倒し実施」のメリット
求人情報の魅力を最大化する
前倒し改定を実施した際は、「【先行実施】10月を待たずに新時給〇〇円でスタート!」のように、その先進性を求人情報で強力にアピールしましょう。
時給が上がることで、扶養内(年収103万円や130万円など)での勤務を希望するパートタイマーが、上限年収を超えないように労働時間を減らす(シフトを調整する)動きが加速する可能性があります。
これは、企業にとっては現場の労働力が想定外に減少し、事業運営に支障をきたす深刻なリスクです。この「新たな人手不足」に備えるため、以下の対策を検討しましょう。
正式な発効日が決まり次第、速やかに対応できるよう、給与計算システムの更新、就業規則や雇用契約書の変更手続き、従業員への正式な告知など、具体的な準備スケジュールを今のうちから立てておきましょう。
2025年度の最低賃金改定は、物価高に苦しむ労働者の生活支援と、厳しい経営環境にある中小企業の存続という、二つの重要な要請の間で難しい舵取りが求められています。全国平均1,121円という大幅なアップが決まったいま、今回の改定が単なる「時給の更新」ではないことは明らかです。
人事・採用担当者の皆様にとって、この変化は経営と人材戦略を見直す絶好の機会と捉えることができます。
記事でご紹介した3つのステップを、改めてご確認ください。
特に、最低賃金改定の「前倒し実施」といった攻めの戦略は、これからの人材獲得競争において大きな武器となり得ます。「法律で決まったから」ではなく、「企業の意志として」賃金を引き上げる姿勢は、求職者にも、そして既存の従業員にもポジティブなメッセージとして強く響くでしょう。
ただし、企業が利益を出せない状況で強引に引き上げれば、事業の継続が困難になる可能性もあります。だからこそ、経営陣や関連部署と連携し、自社にとって持続可能で、かつ従業員が納得できる形での実現を目指すことが、人事担当者に求められる重要な役割です。
今後の審議会の結論を注視しつつも、それを待つだけでは後手に回ってしまいます。自社の未来を見据えた戦略的な準備を、「今すぐ」始めることが、この変化の時代を乗り越え、企業を成長させるための鍵となるはずです。

採用戦略、専門家と見直しませんか?
最低賃金改定により、採用市場の競争はさらに激化します。給与設定や求人票の書き方、競合との差別化など、貴社の採用課題を私たち内藤一水社と一緒に解決しませんか?最新の市場動向を踏まえ、貴社に最適な採用戦略をご提案します。
まずはこちらから無料相談人材採用に関しての疑問・どこに相談すればいいか分からない方、
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