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公開日2025.11.17更新日2025.11.27

【2025年9月度】採用市場動向レポート:有効求人倍率1.20倍、正社員求人広告17.0%減の危機感

【2025年9月度】採用市場動向レポート:有効求人倍率1.20倍、正社員求人広告17.0%減の危機感

2025年9月度の採用市場動向を、厚生労働省・総務省の公的統計(マクロデータ)と、求人広告媒体の動向(ミクロデータ)の両面から統合的に分析し、今後の戦略立案に役立つ情報をお届けいたします。

9月の採用市場は、表層的には安定を保っているように見えながらも、その内側では急速な変化が進行しています。有効求人倍率が1.20倍と前月と同水準を維持する一方で、企業の採用活動の実態を示す求人広告掲載件数は前年同月比で10.0%減少。特に正社員の求人広告が17.0%減と大幅に落ち込んでおり、企業側の採用意欲に明確な急ブレーキがかかっていることが浮き彫りになりました。

2025年9月 採用市場の3つのキーポイント

まずは、今回の分析から見えてきた採用市場の重要なポイントを3つに要約してお伝えします。

  1. マクロの安定とミクロの急減速の乖離
    有効求人倍率は1.20倍で前月と同水準を維持する一方、求人広告掲載件数は前年同月比10.0%減、特に正社員求人は17.0%減と大幅に落ち込んでいます。マクロ統計が示す「安定」と、企業の実際の採用行動が示す「急減速」の間に大きなギャップが生じています。
  2. 「非正規から正規へ」のシフトと失業者数の増加
    正規雇用は68万人増加(23か月連続)、非正規は16万人減少(2か月連続)する一方、完全失業者数は11万人増加し、企業都合による離職も2万人増加しています。雇用の正規化が進む一方で、企業による雇用調整も強まっているという複雑な構図が見て取れます。
  3. 賃金は上昇基調を維持しつつ、採用は外部リソースへシフト
    求人広告の平均賃金は正社員+4.1%、アルバイト・パート+4.0%と高水準で上昇が続く一方、正社員とアルバイト・パートの求人意欲は下降傾向、派遣・業務請負の求人意欲は上昇傾向にあります。企業が直接雇用を抑制し、労働力確保を外部契約に依存し始めている可能性が示唆されます。

【マクロ分析】公的統計データから見る労働市場の全体像

この章では、厚生労働省と総務省が発表した公的統計から、日本全体の労働市場が今どのような状況にあるのか、その大きな潮流を掴んでいきましょう。

有効求人倍率は1.20倍で横ばい、新規求人倍率は微減

厚生労働省によると、2025年9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍となり、前月(8月)と同水準で推移しました。また、正社員の有効求人倍率(季節調整値)も1.00倍で、前月と同水準です。

指標 2025年9月(季節調整値) 前月差
有効求人倍率 1.20倍 0.00pt (同水準)
新規求人倍率 2.14倍 ▲0.01pt 低下
正社員有効求人倍率 1.00倍 0.00pt (同水準)

有効求人倍率は横ばいを維持していますが、新規求人倍率は2.14倍とわずかに低下しました。求人数と求職者数の季節調整値を見ると、9月の有効求人数は前月比0.7%減、有効求職者も0.8%減となっており、求人・求職活動がともにやや減速している状況がうかがえます。

これは、求職者100人に対して120件の求人がある状態を示しており、依然として求人数が求職者数を上回る「売り手市場」の圏内ではあります。しかし、後述するミクロデータとの乖離を考えると、この数値だけで市場全体を判断することには慎重であるべきでしょう。

完全失業者数の増加と求職理由の変化

総務省統計局が発表した労働力調査によると、9月の完全失業率(季節調整値)は2.6%
完全失業者数は184万人と、前年同月と比べて11万人の増加となり、2か月連続で増加しています。

この増加の背景として、求職理由別の内訳を見ると、以下の点が注目されます。

  • 勤め先や事業の都合による離職:23万人(前年同月比+2万人増加)
  • 自発的な離職(自己都合):81万人(前年同月比+3万人増加)

興味深いのは、企業側の都合による離職が増加傾向にあること、また、自発的な離職が増えていることです。これは、労働市場の流動性が高まっている一方で、企業が経済環境の変化に応じて雇用調整を進めている実態を反映している可能性が考えられます。いずれにせよ、失業者数の増加は労働市場における潮目の変化を示す重要なシグナルと言えるでしょう。

雇用形態の動向:正規雇用の継続的な増加と非正規雇用の減少

雇用者数全体(6201万人)は前年同月比で52万人の増加(43か月連続増加)となりました。
特に注目すべきは、雇用形態別の内訳です。

  • 正規の職員・従業員:3760万人(前年同月比+68万人増加)。23か月連続の増加です。
  • 非正規の職員・従業員:2091万人(前年同月比▲16万人減少)。2か月連続の減少となりました。

非正規雇用者の中では、「パート」(1023万人、▲2万人減)、「アルバイト」(477万人、▲3万人減)、「契約社員」(264万人、▲10万人減)などが減少に転じています。
企業は、長期的な人材確保のため正規雇用への転換や採用を継続していると見られますが、経済の不透明感から、契約社員やパート/アルバイトといった非正規の採用・維持を抑制し始めた可能性が読み取れます。

【ミクロ分析】求人広告掲載件数から見る企業の採用活動の実態

マクロな視点で市場の全体像を掴んだところで、次により解像度の高いミクロな視点、つまり企業が実際に出稿している「求人広告」のデータから、採用活動のリアルな実態を探っていきましょう。

全体の求人広告件数は大幅減、特に「正社員」の減少が深刻

2025年9月の求人広告掲載件数(全体)は2,155,885件となり、前年同月比で10.0%の大幅減となりました。この変化を雇用形態別に見ると、より深刻な傾向が浮かび上がります。

202509

出典:公益社団法人全国求人情報協会「求人広告掲載件数等集計結果(2025年9月分)」

雇用形態 2025年9月件数 前月比 前年同月比
正社員 1,204,830件 ▲7.3%減 ▲17.0%減
アルバイト・パート 809,154件 ▲1.4%減 ▲2.2%減
契約社員他 144,524件 ▲1.2%減 +20.3%増

正社員の求人広告が前年比17.0%減という大幅な減少となったことは、企業の将来的な投資や固定費増加に対する警戒感が非常に強まっていることを示していると推察されます。マクロ分析で見た「正社員有効求人倍率1.00倍」という需給の拮抗状態を、ミクロな企業の動きが裏付けている格好です。
また、アルバイト・パートの求人広告も前年同月比2.2%減となり、2024年4月以降初めてのマイナスとなりました。これは、生活必需サービスや飲食業などでの需要回復が一段落し、採用抑制の動きが非正規層にも広がり始めた可能性を示唆しています。

職種別で見る採用ニーズの「二極化」

次に、職種別の動向を見てみましょう。求人広告件数を職種別に見ると、企業が採用活動を絞り込んでいる分野と、依然として積極的な採用を継続している分野が明確に二極化しています。

前年同月比で件数が大幅に「増加」した職種 TOP3

職種 前年同月比 分析・考察
専門(保育士・教員・講師等) +56.1%増 少子化の中でも待機児童問題や教育への投資は継続。構造的な人手不足が極めて深刻な領域。
建設・採掘 +29.9%増 インフラ維持や災害復旧など、社会に不可欠な需要が継続。担い手不足が深刻化。
運搬・清掃・包装等 +1.7%増 物流・サービス分野での継続的な需要。代替の効かないエッセンシャルワーカーへのニーズ。

【増加要因の考察】

専門(保育士・教員・講師・インストラクター)が56.1%増、建設・採掘が29.9%増と、社会的に供給が追いつかない深刻な人手不足領域や、公共的な需要が高い分野では、採用活動が活発に続いています。このデータから分かるのは、社会インフラを支えるエッセンシャルワーカーや高度な専門職の採用ニーズは引き続き非常に高い一方で、効率化の影響を受けやすい職種の採用が大きく抑制されているという実態です。


前年同月比で件数が大幅に「減少」した職種 TOP3

職種 前年同月比 分析・考察
事務 ▲40.4%減 DXや内製化、コスト削減による抑制が著しい。正社員事務職は46.2%減と特に深刻。
専門(IT技術者) ▲34.4%減 これまでの過熱気味だった採用バブルが落ち着き、企業がIT投資をより厳選し始めた可能性。
生産工程 ▲21.0%減 一部の製造業における生産調整や、海外への生産移管などの影響が考えられる。

【減少要因の考察】

事務職やIT技術者といった職種の大幅な減少は、企業が景気後退に備え、まず固定費となりやすい管理部門や、一時的に抑制可能なIT投資関連の人材採用を見送っている状況が反映されていると推察されます。特に事務職(正社員:46.2%減)の落ち込みは著しく、デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務効率化の影響も複雑に作用している可能性が考えられます。

地域別では全国的に減少、地方圏で減少幅が拡大

地域別に見ると、求人広告掲載件数の減少は全国的ですが、特に中四国(-22.2%)、北海道・東北(-20.0%)、九州・沖縄(-16.6%)、近畿(-12.6%)で減少幅が大きく、地方圏での景況感の悪化や採用抑制の動きが都市圏よりも早く現れている可能性が考えられます。

一方、中部・北陸は-1.7%減と減少幅が比較的小さく、製造業が集積する地域で底堅さが残っていると見られます。これは、地域ごとの経済回復のペースの違いが、企業の採用投資意欲に直結していることを物語っています。


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