お役立ち情報

Information

お役立ち情報

お役立ち情報

公開日2025.05.26更新日2025.05.26

採用費を大幅削減!人事担当者が知っておくべき従業員リテンション戦略とは

採用費を大幅削減!人事担当者が知っておくべき従業員リテンション戦略とは

採用活動が長期化し、それに伴って採用コストが膨らんでいる――そんな課題に頭を悩ませている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。採用費を大きく削減するためのポイントは、「新たな人材を探すこと」ではなく、「既存の従業員に長く働き続けてもらうこと」にあります。

そこで重要になるのが「リテンション」です。
リテンションとは、従業員の定着率を高め、優秀な人材の離職を防ぐための取り組みのことで、組織の安定と成長を支えるうえで欠かせない考え方です。

本記事では、従業員リテンションについての解説やすぐに実践できる最新のリテンション施策を、具体例とともに分かりやすくご紹介します。「採用コストを抑えたい」「従業員満足度を高めたい」――そんな方は、ぜひ参考にしてみてください。

人材定着にお悩みではありませんか?

人材定着にお悩みではありませんか?

社員の採用や定着に関する課題、具体的なリテンション戦略の立案・実行でお困りの際は、ぜひ私たち内藤一水社にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

まずはこちらから無料相談

目次

従業員リテンションとは?注目されている背景を知る

従業員リテンションを理解することは、企業の人事戦略において極めて重要です。なぜなら、社員の離職は、企業にとって採用・教育コストの増加、組織全体のパフォーマンス悪化など、さまざまな影響を及ぼすためです。

まずは「従業員リテンション」とは何か、定義や注目されている背景について解説します。

  • リテンションの定義と人事における意味
  • リテンションが注目される背景

リテンションの定義と人事における意味

リテンションとは英語で「維持・保持・保留」を意味する言葉で、人事領域では「企業にとって価値のある人材、特に優秀な従業員の離職を防ぎ、彼らが自社で能力を最大限に発揮し、継続的に活躍してもらうためのあらゆる取り組み」を指します。

単に「辞めさせない」という受け身の姿勢ではなく、従業員が「この会社で働き続けたい」と心から思えるような魅力的な環境を整備し、エンゲージメントを高めるための積極的な働きかけが、人事におけるリテンションの本質です。

このリテンションを実現するための具体的な人事施策やその運用を「リテンションマネジメント」と呼びます。そして、企業がどのような人材を定着させ、そのためにどのような方針で、どのような施策を計画的に実行していくのか、という組織全体の人事戦略を「リテンション戦略」と呼びます。

つまり、人事担当者にとってリテンションとは、単なる離職率の低下を目指す活動に留まらず、企業の持続的な成長と競争力強化に不可欠な、戦略的人材マネジメントの中核をなすものと言えるでしょう。

リテンションが注目される背景

リテンションが注目されるようになった背景として、労働市場における「労働人口の減少」、「人材獲得競争の激化」、「人材の流動化」が挙げられます。

労働人口の減少

現在の日本では、少子高齢化により労働人口が減少し、企業は働き手を確保することがますます困難になっています。内閣府の「令和6年版高齢社会白書」では、2060年の65歳以上人口割合は約38%、日本人の約4割が高齢者になると推計されています。

人材獲得競争の激化

前述のとおり日本の労働力人口は減少傾向にあり、人手不足を加速させています。
業界を問わず企業間の競争が非常に激しくなり、優秀な人材を確保することが難しくなってきています。令和6年・令和7年3月の有効求人倍率を比較すると多数の職種で前年同月よりも有効求人倍率が高くなり、企業が人材を確保しづらくなっていることがわかります。

令和6年3月 令和7年3月
職業計 1.22 1.24
その他技術者 2.16 7.21
保安 6.74 7.05
建築・土木・測量技術者 6.74 6.96
土木 6.45 6.80
機械整備・修理 4.58 4.53
電気工事 3.47 3.84
介護サービス 3.32 3.51
外勤事務 3.20 3.47
運輸・郵便事務 3.00 3.09
営業 2.39 2.40
清掃 1.17 1.08

引用:ハローワーク情報サイト「職業別の有効求人倍率

人材の流動化

以前は「終身雇用」が一般的でした。近年「転職が当たり前」という考え方が広まり、転職サイトの登録者数は、全体的に増加傾向にあります。特に、Z世代と呼ばれる若い世代を中心に「キャリアオーナーシップ」を意識し、将来を見据えて早めに転職サイトに登録する傾向が強まり人材の流動化が進んでいることがわかります。

ritenshion02

出典:パーソルキャリア「新社会人の転職サイト登録動向・2024年版

以上の背景から、既存の従業員を定着させ、いかに労働生産性を向上させるかが企業の重要課題となっていることが分かります。
そこで、新たな人材を採用するだけでなく、既存社員の活躍を促すリテンション戦略が欠かせないのです。

従業員リテンションがもたらすメリット

drsc04

従業員リテンションの強化は、単に社員の離職を防ぐという守りの一手にとどまらず、企業の成長と競争力を大きく左右する攻めの一手ともなり得ます。人事担当者として知っておくべき、具体的な5つのメリットを見ていきましょう。

  • 採用コストの大幅削減
  • 組織知識・ノウハウの維持と継承
  • 生産性の向上と組織の活性化
  • 企業文化の醸成とエンゲージメント向上
  • 顧客満足度の向上

採用コストの大幅削減

社員が定着し、長く活躍してくれることは、採用活動におけるコストと時間の両面で大きなメリットをもたらします。
頻繁な人員補充の必要性が低減すれば、求人広告費や人材紹介会社への手数料といった直接的な採用コストはもちろんのこと、書類選考や面接、入社手続きといった採用担当者の貴重な工数も大幅に削減できます。さらに、新入社員の受け入れや教育にかかるコストや時間も軽減されるでしょう。

これらの削減された経営資源は、既存従業員のさらなるスキルアップ研修、より魅力的な福利厚生の導入、あるいは事業成長を加速させるための新たなテクノロジーへの投資など、企業の未来を形作るための戦略的な分野へと振り向けることが可能になります。

組織知識・ノウハウの蓄積と継承

長年にわたり企業に貢献してきた従業員は、単に業務をこなすだけでなく、マニュアルだけでは伝えきれない貴重な経験知や、顧客との間に築き上げてきた信頼関係といった、いわば「組織の財産」をその身に宿しています。これらは、企業の競争力の源泉となる暗黙知や熟練の技とも言えるでしょう。

社員の離職を防ぐことは、これらの専門知識、業務ノウハウ、そして顧客との関係性といった目に見えない重要な資産が社外へ流出するのを防ぎ、組織内に確実に蓄積していくことを意味します。そして、その貴重な知識やスキルは、OJTやメンター制度などを通じて若手社員や他の従業員へと着実に継承され、組織全体のスキルレベル向上と持続的な成長を支えます。

生産性の向上と組織の活性化

社員の定着率が高まると、個々の従業員のスキルアップだけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながります。経験豊富な従業員が安定して在籍することで、業務の効率や質は自然と高まります。また、互いの強みや弱みを理解し、阿吽の呼吸で連携できるような強固なチームワークが育まれ、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。

さらに、リテンション施策を通じて従業員が「この会社で長く安心して働ける」と感じられるようになると、心理的安全性が高まり、日々の業務改善の提案や新しいチャレンジへの意欲が湧きやすくなります。その結果、組織全体でイノベーションが促進され、変化に強い、活気あふれる職場環境が実現するのです。

企業文化の醸成とエンゲージメント向上

従業員が自社に愛着を持ち、「この会社で働き続けたい」と心から思える状態、すなわちリテンションが効果的に機能している状態では、企業の理念や価値観が社員一人ひとりに深く浸透しやすくなります。これにより、組織としての一体感が生まれ、判断基準が共有されることで、一貫性のある「ブレない組織運営」が可能となり、他社にはない独自の企業文化が育まれていきます。

このような良好な企業文化のもとでは、組織や日々の業務に対する安心感や信頼感が生まれ、既存社員のモチベーション維持・向上、ひいては従業員エンゲージメント(会社への愛着や貢献意欲)の向上へとつながります。エンゲージメントの高い社員は、自律的に行動し、より積極的に組織へ貢献しようとするため、企業成長の大きな推進力となるでしょう。

顧客満足度の向上

社員の定着率が高い企業では、経験豊富な従業員が顧客対応の最前線に立つことが多くなります。彼らは長年の経験で培われた深い商品知識や高度なコミュニケーションスキルを活かし、マニュアル通りの対応だけでなく、個々の顧客の状況やニーズに応じたきめ細やかで柔軟な対応を提供できます。

このような質の高い顧客対応は、顧客との間に強固な信頼関係を築き上げ、長期的なお付き合い、すなわち顧客ロイヤルティの向上に大きく貢献します。結果として、リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の増加、さらには企業全体のブランドイメージ向上といった好循環を生み出すのです。従業員満足度(ES)なくして顧客満足度(CS)なし、と言われるように、社員が安心して長く働ける環境こそが、最終的に顧客への価値提供を高めることにつながります。

従業員リテンションを阻害する要因

sign02

従業員リテンションが企業にもたらすメリットは計り知れませんが、その一方で職場環境に潜む様々な「阻害要因」は、従業員のモチベーションを蝕み、最悪の場合、貴重な人材の流出という事態を招きかねません。人事担当者として、これらのサインを見逃さず、早期に対策を講じることが重要です。

給与・待遇への不満
自身の貢献や業界水準に見合わないと感じる給与、昇給の不透明さ、将来設計を描きにくい福利厚生などは、社員が離職を考える直接的なきっかけとなり得ます。
キャリア成長の機会不足
昇進やスキルアップの具体的な道筋が見えず、自身の成長を実感できない環境は、特に向上心の高い社員のモチベーションを低下させ、新たな活躍の場を求める要因となります。
ワークライフバランスの欠如
長時間労働の常態化、休日の少なさ、テレワークやフレックスタイム制といった柔軟な働き方への対応の遅れなど、私生活との両立が困難な環境は、心身の疲弊を招き、離職へとつながりやすくなります。
上司・同僚との人間関係
上司からの過度なプレッシャーやハラスメント、同僚とのコミュニケーション不全や孤立感など、職場の人間関係におけるストレスは、社員の精神的な安定を大きく損ない、働く意欲を奪います。
評価制度への不満
評価基準の曖昧さ、フィードバックの欠如、成果が正当に評価されないと感じる状況は、社員の努力を踏みにじることになりかねません。「頑張っても報われない」という不満は、組織への不信感を募らせます。
入社時のミスマッチ
採用時に説明された仕事内容、役割、あるいは企業文化と、入社後の現実との間に大きなギャップ(リアリティ・ショック)を感じると、社員は早期に失望し、早期離職を選択する可能性が高まります。

これらの阻害要因は、一つひとつが従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させ、最終的には貴重な人材の流出へとつながる可能性があります。自社に当てはまるものがないか、今一度見つめ直し、早期に対策を講じることが、リテンション向上への第一歩と言えるでしょう。

従業員リテンションを強化するための具体的な施策

ritenshion03

従業員の定着率を高め、貴重な人材の流出を防ぐためには、具体的かつ効果的なリテンション施策の実行が不可欠です。ここでは企業が取り組むべき代表的な9つの施策をご紹介します。

  • 報酬・福利厚生の見直しと充実
  • キャリアパスの明確化と成長機会の提供
  • 柔軟な働き方の推進とワークライフバランスの支援
  • 良好な人間関係の構築とコミュニケーションの活性化
  • 公正で透明性の高い評価制度の導入
  • 従業員の声に耳を傾ける仕組み
  • オンボーディングとメンター制度の強化
  • 企業理念・ビジョンの浸透と共感
  • 従業員を称賛・承認する文化の醸成

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

報酬・福利厚生の見直しと充実

従業員が安心して働き続けるためには、生活の基盤となる金銭的報酬と、それを支える福利厚生の充実が欠かせません。

適正な給与水準の確保
まずは自社の給与水準が業界平均や競合他社と比較して適正であるかを確認しましょう。その上で、貢献度や成果が公平に反映される、透明性の高い報酬制度を設計・運用することが重要です。
多様な福利厚生の提供
基本給だけでなく、賞与制度、インセンティブ、各種手当(住宅、通勤、家族など)、退職金制度、社員持株制度、あるいは育児・介護支援といった法定外福利厚生を充実させることで、従業員の多様なライフステージやニーズに応え、長期的な安心感を提供します。

キャリアパスの明確化と成長機会の提供

従業員が「この会社で成長できる」「将来のキャリアを築ける」と実感できる環境は、リテンションにおいて極めて重要です。自身の成長に希望を持てることは、働くモチベーションの源泉となります。

キャリアパスの提示
どのような経験やスキルを積めば、どのようなポジションや役割にステップアップできるのか、具体的なキャリアパスを提示しましょう。これにより、従業員は自身の将来像を描きやすくなります。
成長機会の提供
  • 研修制度の充実:階層別研修、専門スキル研修、リーダーシップ研修など、多様な学習機会を提供します。
  • 資格取得支援制度:業務に関連する資格取得を奨励し、費用補助や報奨金制度を設けます。
  • ジョブローテーション制度:定期的な部署異動やプロジェクトへの参加を通じて、多角的な経験とスキル習得を促します。
  • OJT・メンター制度:実務を通じた指導や、先輩社員によるサポート体制を強化します。

柔軟な働き方の推進とワークライフバランスの支援

現代の働き手は、自身のライフスタイルや価値観に合わせた柔軟な働き方を求めています。ワークライフバランスを重視した環境整備は、従業員の満足度向上とストレス軽減につながり、結果として定着率向上に貢献します。

リモートワークの導入
通勤時間の削減や、育児・介護との両立を支援し、集中できる環境での業務遂行を可能にします。
フレックスタイム制の採用
始業・終業時刻を従業員が柔軟に決定できるようにすることで、プライベートとの両立を支援します。
短時間勤務・時差出勤の導入
育児や介護など、個々の事情を抱える従業員も継続して就業しやすい環境を提供します。
休暇制度の充実
有給休暇の取得奨励はもちろん、リフレッシュ休暇やボランティア休暇など、独自の休暇制度を設けることも有効です。

これらの制度を導入する際は、業務への影響を最小限に抑えるために適切なルール設計や運用体制も同時に整備しましょう。

良好な人間関係の構築とコミュニケーションの活性化

職場の人間関係は、従業員の精神的な安定や働きがいに直結する重要な要素です。コミュニケーションが円滑で、互いに尊重し合える環境は、心理的安全性を高め、従業員の定着を促します。

コミュニケーションツールの活用
チャットツールや社内SNSなどを導入し、部門を超えた情報共有や気軽なコミュニケーションを促進します。
相談窓口の設置
ハラスメント相談窓口やキャリア相談窓口などを設け、従業員が安心して悩みを打ち明けられる環境を整備します。
定期的な1on1ミーティング
上司と部下が定期的に対話する機会を設け、業務の進捗確認だけでなく、キャリア相談や悩み事のヒアリングを行います。
社内交流イベントの実施
懇親会やレクリエーション、部活動支援などを通じて、部署や役職を超えた交流を促進し、連帯感を醸成します。
チームビルディング研修の実施
チーム内の相互理解を深め、協力体制を強化するための研修を行います。

公正で透明性の高い評価制度の導入

従業員は、自身の努力や成果が正当に評価されていると感じることで、モチベーションを維持し、さらなる成長意欲を持つことができます。評価基準の曖昧さや不公平感は、組織への不信感を招き、離職の大きな要因となり得ます。

評価基準の明確化と公開
何をすれば評価されるのか、具体的な評価基準を明確にし、全従業員に周知徹底します。
評価プロセスの透明化
評価のプロセスを透明にし、誰がどのように評価するのかを明らかにします。
定期的なフィードバック
評価結果だけでなく、具体的な行動や成果に対するフィードバックを丁寧に行い、次の成長につなげます。
多面評価(360度評価)
上司だけでなく、同僚や部下、関連部署の担当者など、複数の視点から評価を行うことで、客観性と納得感を高めます。
目標管理制度(MBO)
従業員自身が目標設定に関与し、その達成度合いで評価することで、主体性と納得感を醸成します。
コンピテンシー評価
成果だけでなく、成果に至るまでの行動や能力(コンピテンシー)も評価対象とすることで、多角的な評価を実現します。

従業員の声に耳を傾ける仕組みの構築

従業員が「自分の意見や考えが会社に届き、尊重されている」と感じられることは、エンゲージメント向上と信頼関係構築において非常に重要です。社員の不満や要望を早期に把握し、改善につなげるための仕組みを構築しましょう。

定期的な従業員満足度調査(ESサーベイ)
匿名のアンケート形式で、職場環境や人間関係、待遇、キャリアなどに関する満足度や意見を定期的に収集します。
パルスサーベイ
より短い間隔(例:週に一度、月に一度)で、簡潔な質問を通じて従業員のコンディションやエンゲージメントを把握します。
目安箱や意見箱の設置
匿名で気軽に意見や提案を発信できる場を設けます。
個別面談の実施
上司や人事担当者が定期的に従業員と面談し、直接悩みや要望を聞き取ります。
ラウンドテーブルミーティング
経営層や人事担当者が、少人数の従業員と直接対話し、意見交換を行う場を設けます。
提案制度の導入
業務改善や新規事業に関する提案を奨励し、優れた提案には報奨を与える制度を設けます。

集めた声は真摯に受け止め、可能な範囲で改善策を講じ、その結果をフィードバックすることが信頼関係の構築につながります。

オンボーディングとメンター制度の強化

新しい環境に飛び込む新入社員や中途採用者は、入社初期に多くの不安や戸惑いを抱えています。この時期の適切なサポートは、早期離職を防ぎ、早期戦力化を促す上で極めて重要です。厚生労働省の調査(令和5年若年者雇用実態調査の概況)でも、勤続年数1年未満の離職理由として「人間関係がよくなかった」が上位に挙げられており、入社直後のフォロー体制の重要性が伺えます。

体系的なオンボーディングプログラムの実施
企業文化や理念、就業規則、業務に必要な知識やスキルなどを体系的に学べる研修プログラムを用意します。部署配属後も、OJT担当者による丁寧な指導やフォローアップを行います。
メンター制度の導入・強化
年齢の近い先輩社員や、異なる部署の経験豊富な社員をメンターとして任命し、新入社員が業務上の悩みだけでなく、職場生活に関する些細なことでも気軽に相談できる相手を設けます。定期的な面談やランチミーティングなどを通じて、精神的な支えとなる存在を目指します。

企業理念・ビジョンの浸透と共感の醸成

従業員が自社の理念やビジョンに共感し、自身の仕事がその実現に貢献していると感じられることは、働く意義や誇りを持ち、会社への帰属意識を高める上で非常に効果的です。

トップメッセージの発信
経営層が自らの言葉で、企業理念やビジョン、事業戦略について繰り返し語りかけ、従業員の理解と共感を促します。
理念・ビジョンを体現する行動の奨励
日々の業務の中で、理念やビジョンに基づいた行動を称賛したり、表彰したりすることで、従業員の意識を高めます。
社内広報の活用
社内報や社内ポータルなどで、理念やビジョンに基づいた成功事例や従業員のストーリーを紹介し、共感を広げます。

理念やビジョンが単なる「お題目」ではなく、従業員一人ひとりの行動指針として浸透することで、組織全体の一体感が醸成され、リテンション強化につながります。

従業員を称賛・承認する文化の醸成

日々の努力や小さな成果であっても、それが認められ、感謝される経験は、従業員のモチベーションを大きく向上させ、会社への忠誠心を育みます。「自分はここで必要とされている」「頑張りを見てくれている」という実感は、働く喜びそのものです。

表彰制度の導入・活性化
成果を上げた社員やチーム、あるいは企業理念を体現した行動をした社員などを定期的に表彰する制度を設けます。
サンクスカードやピアボーナス制度の導入
従業員同士が感謝の気持ちを伝え合ったり、貢献を称え合ったりする仕組みを導入します。
社内SNSや社内ポータルでの成功事例共有
ポジティブな情報や成功事例を積極的に共有し、組織全体で称賛する雰囲気を作ります。
上司からの積極的な声かけとフィードバック
日常的なコミュニケーションの中で、部下の良い点や努力を具体的に褒めたり、感謝の言葉を伝えたりすることを奨励します。
「ありがとう」が飛び交う職場づくり
些細なことでも感謝を伝える習慣を組織全体で意識します。

これらの施策を地道に積み重ねることで、「互いに認め合い、高め合える」ポジティブな職場文化が醸成され、従業員が前向きに働き続けられる環境が実現します。

従業員リテンションの効果測定とKPI

ritenshion04

従業員リテンションの取り組みを実施して終わるのでなく、その後の効果測定と改善を続けることが重要です。
ここでは、リテンション施策の効果をどのように測定し、どのようなKPI(重要業績評価指標)を設定すべきかについて解説します。

  • 主要なリテンション指標(KPI)の設定
  • リテンション率の計算方法と目標設定
  • 従業員エンゲージメント調査の戦略的活用
  • 多角的な視点を持つための、その他の効果測定指標

主要なリテンション指標(KPI)の設定

リテンションの状況を客観的に把握し、施策の効果を評価するためには、適切なKPIを設定し、継続的にモニタリングすることが不可欠です。代表的なKPIとしては、以下のようなものが挙げられます。

リテンション率(従業員定着率)
特定の期間において、どれだけの従業員が企業に留まり続けたかを示す割合です。リテンション施策の直接的な成果を測る上で最も基本的な指標と言えるでしょう。
離職率
特定の期間において、どれだけの従業員が離職したかを示す割合です。リテンション率とは表裏一体の関係にあり、こちらも重要な指標です。特に、入社1年以内、3年以内といった早期離職率にも注目すると、オンボーディングなどの課題が見えてくることがあります。
従業員エンゲージメントスコア
従業員が自社や仕事に対して持つ愛着、貢献意欲、満足度などを数値化したものです。エンゲージメントの高さは、生産性や定着率と強い相関があるため、リテンション戦略の先行指標としても活用できます。
平均勤続年数
従業員が平均してどれくらいの期間、企業に在籍しているかを示す指標です。長期的な視点でリテンションの状況を把握するのに役立ちます。

これらのKPIを定期的に計測・分析することで、リテンション施策の進捗状況や効果を定量的に把握し、データに基づいた意思決定を行うことが可能になります。

リテンション率の計算方法と目標設定

リテンション率の具体的な計算方法は以下の通りです。

リテンション率(%) = (期間終了時に在籍している従業員数 ÷ 期間開始時に在籍していた従業員数) × 100
例: 期首に100名の従業員が在籍し、1年後の期末に90名が在籍していた場合のリテンション率は、(90 ÷ 100) × 100 = 90% となります。

リテンション率の目標値を設定する際には、まず自社の過去のデータと比較し、改善傾向にあるかを確認することが重要です。その上で、業界平均や競合他社の状況を外部ベンチマーク(※)として参考にしつつ、自社の事業フェーズや組織課題に応じた現実的かつ挑戦的な目標を設定しましょう。
(※)外部ベンチマークとは、他社や業界全体の平均値など、自社の状況を相対的に評価するための比較対象となる指標のことです。

従業員エンゲージメント調査の戦略的活用

従業員エンゲージメント調査は、従業員の会社に対する「想い」や「満足度」、「働きがい」といった、目に見えない内面的な状態を可視化する強力なツールです。

定量的・定性的なデータ収集
選択式の質問(例:5段階評価)による定量的なスコアリングに加え、自由記述式の質問を設けることで、従業員の具体的な意見や本音(定性的なデータ)を収集できます。これにより、数値だけでは見えてこない課題や、離職の潜在的なリスクを早期に発見することにつながります。
定期的な実施と傾向分析
エンゲージメント調査は、一度きりで終わらせるのではなく、年に1~2回など定期的に実施し、スコアの推移や変化を追跡することが重要です。部署別、役職別、勤続年数別などで分析することで、より具体的な課題特定や施策の効果検証が可能になります。
施策改善への活用
調査結果を真摯に受け止め、明らかになった課題に対して具体的な改善策を検討・実行し、その効果を次回の調査で検証するというサイクルを回すことで、リテンション施策の実効性を高めることができます。

(※)従業員エンゲージメントとは、従業員が自社や仕事に対して持つ愛着や誇り、そして自発的に貢献したいという意欲を持つ心理状態を指します。

多角的な視点を持つための、その他の効果測定指標

上記の主要なKPIに加えて、以下のような指標も組み合わせることで、リテンション施策の効果をより多角的に評価し、深い洞察を得ることができます。

退職理由の分析
退職面談(エグジットインタビュー)で得られた情報を収集・分析し、真の離職原因を特定します。理由をカテゴリ別に集計し、傾向を把握することで、具体的な改善策のヒントが得られます。
採用コストの変化
リテンションが向上すれば、新たな人材を採用するためのコスト(求人広告費、人材紹介手数料、採用担当者の人件費など)が削減されるはずです。採用コストの推移を追跡することで、リテンション施策の費用対効果を間接的に測ることができます。
定着者のパフォーマンス評価
リテンション施策によって定着した従業員のパフォーマンス(生産性、目標達成度、貢献度など)が向上しているかを確認します。単に「辞めない」だけでなく、「活躍している」状態を目指すことが重要です。
部署別・属性別の離職率/リテンション率
全社平均だけでなく、特定の部署や職種、年齢層、性別などで指標を分析することで、課題が集中している箇所を特定しやすくなります。
研修・育成プログラムの参加率と満足度
提供している成長機会が従業員に活用され、満足されているかを確認します。

これらの指標を複合的に分析することで、リテンション施策が組織に与える影響をより深く理解し、戦略的な改善につなげることができるでしょう。

従業員リテンション成功事例

多くの日本企業が、従業員リテンションの重要性を認識し、様々な施策に取り組んでいます。
ここでは、厚生労働省の「若者が定着する職場作り取組事例集」から、様々な課題を乗り越え、リテンション向上に成功した企業の事例をいくつかご紹介します。

企業名 主な課題 導入した施策 成果
株式会社アイネット
(情報通信業)
若手社員の離職
定着率の低迷
・新入社員研修期間の延長
・社内インターン制度
若手社員の定着率向上
カネテツデリカフーズ株式会社
(食品製造業)
入社3年以内の
離職率50%前後
・新入社員指導員制度
・フォローアップ研修
入社3年以内の
離職率10%前後に改善
株式会社マナベインテリアハーツ
(小売業)
・賃金制度が不透明
・優秀な人材の退職
・等級制度
・賃金制度
・評価制度
社員のモチベーション向上
株式会社ホットランド
(飲食業)
・人材確保
・早期離職
・労務管理の徹底
・個別面談、集合研修(入社1年目)
・退職面談
新入社員の離職率低下

(出典:厚生労働省「若者が定着する職場作り取組事例集」より一部抜粋・要約)

まとめ:リテンション戦略で、人と組織の未来を強くする

本記事では、従業員リテンションの重要性から、そのメリット、阻害要因、具体的な強化策、効果測定、そして成功事例に至るまで、網羅的に解説してきました。

従業員リテンションは、単に「社員が辞めないようにする」という守りの一手ではありません。企業の競争力を高め、イノベーションを生み出し、持続的な成長を可能にするための、極めて戦略的な投資です。優秀な人材が安心して能力を発揮し、成長し続けられる環境を整備することは、採用コストの削減、生産性の向上、強固な企業文化の醸成、そして顧客満足度の向上といった、数多くの具体的なメリットとなって企業に還元されます。
今後、労働人口の減少や採用競争の激化が一層進むと予測される日本において、企業にとってリテンション施策への取り組みは、もはや「選択肢」ではなく「必須」の経営課題と言えるでしょう。

この記事をきっかけに、ぜひ一度、貴社の現状を多角的に見つめ直してみてください。そして、まずは小さな一歩からでも、従業員が「この会社で働き続けたい」と心から思えるような環境づくりに着手してみてはいかがでしょうか。一つひとつの施策が、必ずや貴社の未来をより明るく照らすはずです。

人材定着にお悩みではありませんか?

人材定着にお悩みではありませんか?

社員の採用や定着に関する課題、具体的なリテンション戦略の立案・実行でお困りの際は、ぜひ私たち内藤一水社にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

まずはこちらから無料相談

お電話はこちら

月~金曜日(土・日・祝日除く)
9:00~18:00

東京本社 03-3265-9113
名古屋支社 052-581-9591
大阪支社06-6456-4561
九州支社092-431-6611