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「固定残業代を導入しているせいで、ブラック企業だと思われてるんじゃないか…」
人事・採用担当者様の中には、そんな不安を抱えている方も少なくないはずです。
実は、応募が集まらない本当の理由は「固定残業代という制度そのもの」ではありません。問題なのは、求職者に誤解と不信感を与えてしまう「書き方」なんです。
しかも、ここ数年で求人票のルールはどんどん厳しくなっています。「うちは昔からこの書き方だから」と放置していると、気づかないうちに法律違反になっていたり、Indeedの審査で弾かれて求人が表示されなくなっていた…なんてことも珍しくありません。
本記事では、法律をきちんと守った「固定残業代の正しい書き方」はもちろん、求職者に「この会社、ちゃんとしてるな」と思ってもらえる「伝え方のコツ」まで、実例つきで詳しく解説します。固定残業代を「応募が来ない原因」から「むしろ武器」に変える。そのために必要なノウハウを、ぜひこの機会に手に入れてください。

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求人票を改善する前に、まずは基本を押さえておきましょう。
「固定残業代(みなし残業)」って、そもそもどういう仕組みなのか?なぜこれほどまでに求職者から警戒されてしまうのか?
ここをきちんと理解しておかないと、どんなに内容を工夫しても求職者の不信感は消えません。逆に言えば、仕組みさえ理解していれば、的確な言葉で不安を解消できるようになります。
固定残業代とは、実際に残業したかどうかに関係なく、「あらかじめ決めた時間分の残業代を、毎月定額で支払う制度」のことです。「定額残業代」「みなし残業代」とも呼ばれます。
たとえば「月20時間分の固定残業代」が含まれている場合で考えてみましょう。
社員の今月の残業が0時間だったとしても20時間分の残業代を満額支払う必要があります。更に20時間を超えて残業した場合は、その超えた分についても追加で払わなければいけません。

この制度は適切に運用されれば、双方にメリットがあります。
特に求職者にとってのメリットは重要です。仕事を効率よく進めて残業を減らせば、実質的な時給単価が上がるため、「ダラダラ残業を防ぎ、効率的な働き方を推奨する制度」としてアピールすることも可能です。
人事担当者様でも混同しやすいのが、「裁量労働制」や「成果給」との違いです。これらは全く別の制度であり、混同したまま運用すると深刻な法律違反(未払い残業代)につながります。
固定残業代・裁量労働制・成果給の比較表
| 固定残業代制 (みなし残業) |
裁量労働制 | 成果給 (歩合・インセンティブ) |
|
|---|---|---|---|
| 制度の性質 | 「残業代の前払い」 一定時間分の残業代を固定で支払う。 |
「労働時間のみなし」 実労働時間に関わらず、決まった時間働いたとみなす。 |
「成果への対価」 売上や契約数などの実績に応じて支払う。 |
| 残業代の 支払い |
固定分を含んでいる。 ※超過分は追加支給が必要 |
みなし時間に含まれる。 ※深夜・休日割増は別途支給が必要 |
含まれていない ※成果給とは別に、残業代の全額支給が必要。 |
| 労働時間の 管理義務 |
あり(必須) 実労働時間の把握が必要。 |
あり(健康管理のため) 出退勤の管理自体は必要。 |
あり(必須) 実労働時間の把握が必要。 |
| 導入できる 職種 |
全職種で可能 | 法律で決まった職種のみ (デザイナー、研究、企画など) ※一般的な営業や事務はNG |
全職種で可能 (営業職などで一般的) |
| 人事の よくある誤解 |
×「何時間働かせても定額で済む」 → 超過分は払い漏れリスク大 |
×「営業職にも適用できる」 → 違法適用が無効になるリスク大 |
×「歩合を払うから残業代は不要」 → 未払い残業代請求の最大要因 |

先ほど説明したとおり、固定残業代制度はきちんと運用すれば「仕事を早く終わらせても給与が減らない」という、能力の高い人材にとってはむしろメリットになる制度です。
しかし、実態として多くの求職者は「固定残業代あり」の文字を見た瞬間、応募候補から外すか、警戒レベルを一気に上げます。
なぜ、メリットよりもデメリット(リスク)のほうが強く伝わってしまうのか?
その背景には、過去のブラック企業による悪用事例と、それに伴う「3つの根強い不信感」があります。
最も大きな理由がこれです。「固定残業代=残業代込み」という言葉が拡大解釈され、「どれだけ働いても給料が変わらない(=サービス残業の温床)」と受け取られています。
本来なら「固定分を超えたら追加で払う」のが法律上の義務なのですが、
といった違法な運用をする企業が過去に横行したため、求職者は「超過分、本当に払ってくれるの?」という点に極めて敏感になっています。求人票に「超過分別途支給」と書いてあっても、それだけでは信用してもらえないのが現状です。
給与の「総支給額(月収)」を高く見せるために、固定残業代が悪用されるケースです。
求職者が警戒する「見せかけの高月給」

このように、基本給を極端に低く設定し、無理やり固定残業代を乗せて「月収25万円!」とアピールする手法は、求職者に見抜かれています。「基本給が低い=会社としての評価が低い、将来設計が不安」と判断される大きな要因です。
例えば「固定残業代(45時間分)を含む」と書かれていた場合、企業側は「最大枠として45時間分を用意している(実際はそんなにいかない)」つもりでも、求職者は違います。
求職者は「45時間分ついているということは、毎月きっちり45時間残業させられるんだ」と解釈しがちです。
この認識のギャップ(ズレ)こそが、応募が来ない最大の原因です。
実態の残業時間が月10時間程度であるなら、単に制度を記載するだけでなく、そのギャップを埋めるための「補足説明」がなければ、みすみす優良な人材を逃すことになります。

固定残業代を求人票に記載する際は、「求職者がパッと見て内容を理解でき、基本給とハッキリ区別できること」が求められます。
具体的には、以下の3項目をすべて明記する必要があります。これらは「推奨」ではなく「義務(必須要件)」と捉えてください。
以前は曖昧な表現でも許されていた時代がありましたが、今は違います。以下の要素がひとつでも欠けていると「固定残業代」として認められず、通常の残業代を別途全額請求されるリスクが跳ね上がります。
上記の3点に加えて4つ目に「計算根拠(時間外割増率など)」を記載しましょう。トラブル防止と信頼性向上のため、計算の基礎となる割増率(通常は25%以上)を明確にすることがスタンダードになりつつあります。

かつて横行していた「基本給に含む」というだけの表記は、現在は完全にNGです。
求職者が「自分の基本給(ベース給)はいくらなのか?」を計算できない表記は、職業安定法の指針に抵触します。
給与総額の中に固定残業代が含まれている場合は、必ず「基本給」と「固定残業代」を金額で分けて記載してください。
この「明示ルール」は、法律だけの話ではありません。求人メディアに掲載できるかどうかにも直結しています。
「応募が来ない」以前に、「ルール違反のせいで、そもそも求人が求職者の目に触れていない」という事態を避けるためにも、この4つのルールは必ず守ってください。

「他社もこう書いているから大丈夫だろう」「昔からこのテンプレートを使っているから」
その油断が、労働基準監督署からの是正勧告や、退職者からの未払い残業代請求、さらには「ブラック企業」のレッテル貼りに直結します。
ここでは、ついやってしまいがちですが、法律違反のリスクが高い(または求職者に著しく不審がられる)NG表記の代表例を4つ紹介します。
これが最も典型的なNG例です。
ここが問題
「いくら分が含まれているのか」「何時間働けば超過分が出るのか」が全く分かりません。これは職業安定法違反になるだけでなく、求職者からは「定額働かせホーダイのブラック企業だ」と判断され、応募が寄り付かなくなります。
固定残業代を大きく見せようとして、基本給を下げすぎた結果起きるトラブルです。
ここが問題
最低賃金のチェックは、固定残業代を除いた「基本給(+一律手当)」で行います。
上記の場合、基本給12万円を月平均労働時間(例:160時間)で割ると、時給750円となり、日本のどこの都道府県でも最低賃金法違反となります。
「総支給額」が最低賃金を超えていても意味がありません。ここは必ず計算し直してください。

「営業手当」や「職務手当」という名目で払っていて、会社側は「これ、残業代の代わりなんだけど」と思い込んでいるケース。
ここが問題
求人票や就業規則に「営業手当には固定残業代〇〇時間分を含む」と明記されていなければ、この5万円はただの「職務への対価」とみなされます。
結果、退職した社員から「残業代が未払いである」と訴えられた際、営業手当とは別に、残業代を全額支払わなければならなくなる(ダブル払い)リスクが極めて高い危険な書き方です。
法律上の「上限」と、実態の「乖離」の問題です。
ここが問題
法的には45時間の設定自体は可能ですが、実態とあまりにかけ離れている場合、職業安定法の「的確な労働条件の明示」という観点で問題視される可能性があります。
何より、「実態は5時間なのに、45時間分の残業を覚悟しなければならない求人」に見えてしまうため、採用マーケティングの観点で大損をしています。
実態に合わせて固定残業時間を20時間に下げる(その分、基本給を上げる等の調整を行う)か、後述する「補足説明」を必ず入れるべきです。

前章までの内容で、法律を守った「正しい表記」はクリアできました。しかし、それだけでは採用競争には勝てません。なぜなら、「正しい表記」=「魅力的な求人」ではないからです。
法律通りの無機質な記載だけだと、求職者に「事務的で冷たい」「やはり残業前提なのか」という誤解を与えかねません。
ここからは、求人のプロが現場で実践している、マイナスイメージを払拭し、むしろ「働きやすい会社」だと思わせるための4つの書き方テクニックを公開します。
法律上、残業代は1分単位で計算・支給するのが原則ですが、「超過分は別途支給します」という定型文だけでは、「そうは言っても、15分や30分単位で切り捨てられるのでは?」という求職者の疑念を晴らせません。
そこで、あえて「1分単位」という言葉を使います。
この一言があるだけで、「勤怠管理がしっかりしているクリーンな会社」という印象が一気に強まります。
固定残業代の最大のメリットは、「設定された時間枠(例:40時間)より早く帰っても、40時間分の手当がもらえる」ことです。
しかし、求職者は「40時間分=毎月40時間残業させられる」と勘違いします。
この誤解を解くには、「制度上の枠」と「実態の残業時間」を並べて書くのが最も効果的です。

このように「実態」を数字で公開することで、長時間労働への不安を「得をして早く帰れる」というメリットへ変換できます。
なぜ、あなたの会社は固定残業代を導入しているのでしょうか?
「計算が楽だから」という会社都合の理由ではなく、社員向けのメッセージとして言い換えてみましょう。
こう書くことで、固定残業代が「成果主義・効率重視のポジティブな制度」として映り、優秀な人材(生産性の高い人材)からの応募が期待できるようになります。
固定残業代のデメリットとして、見かけ上の「基本給」が低くなり、求職者が生活水準に不安を感じることが挙げられます。
これを払拭するには、内訳の細かさよりも「トータルでいくら貰えるのか(総支給額)」のイメージを具体的に持たせることが重要です。
求人票の「給与」欄だけでなく、「モデル年収例」の欄を充実させましょう。
ここでも「実績」をさりげなく添えることで、「基本給は低そうに見えるけど、実際はこれだけ稼げて、しかも残業は少ないんだ」という安心感を与えられます。

固定残業代の書き方は、募集する職種によって「響くポイント」が異なります。
例えば、成果重視の「営業職」と、労働時間の管理がシビアな「ドライバー・工場」では、求職者が固定残業代に対して抱く不安や期待が全く違うからです。
ここでは、職種別の具体的な記載テンプレートと、ターゲットの心をつかむ言葉選びのポイントを紹介します。そのまま自社の求人票作成にお役立てください。
営業職の求職者は、「成果」と「報酬」のバランスを重視します。「営業手当」の中に固定残業代を含めるケースが多いですが、その内訳を明確にしつつ、「ダラダラ残業せず、成果を出して早く帰るのが評価されるスタイル」であることをアピールするのが効果的です。
【記載テンプレート:営業職】
給与:月給 280,000円
《内訳》
《ここがポイント!》
当社は「メリハリ」重視。固定残業代が含まれていますが、「40時間残業が義務」という意味ではありません。アポイントの合間に事務処理を済ませ、定時で帰る社員も多数。効率よく成果を出せば、残業ゼロでも満額の手当が支給されます。
この層は「裁量労働制(みなし労働)」と混同しやすく、「デスマーチ(終わらない長時間労働)」を最も警戒します。
「裁量労働制ではなく、時間は管理されている(=天井なしの残業はない)」という点と、プロジェクトの谷間など「仕事が落ち着いている時期でも給与が下がらない」という安定性をメリットとして訴求しましょう。
【記載テンプレート:クリエイティブ職】
給与:月給 300,000円
《内訳》
《ここがポイント!》
裁量労働制ではありません。会社として稼働時間を管理しており、無理な連続稼働を防いでいます。
納期前など忙しい時期もありますが、プロジェクト終了後の落ち着いた時期(残業ゼロの月)でも、固定残業代(30時間分)は満額支給されます。毎月の給与変動が少ないため、生活設計が立てやすいのが特徴です。
同じ制度でも、職種によって「刺さるキーワード」はこれだけ変わります。自社のターゲットに合わせて、備考欄やキャプションの言葉を選んでみてください。
| 職種 | 求職者が気にするポイント | アピールすべきキーワード |
|---|---|---|
| 営業・コンサル | 成果が給与に反映されるか | 「効率重視」「成果主義」「メリハリ」「残業ゼロでも満額支給」 |
| IT・クリエイティブ | サービス残業・長時間拘束 | 「裁量労働制との違い」「稼働管理」「閑散期でも満額支給」 |
| 工場・物流・建設 | 安全性・未払い・体調管理 | 「実働ベースの明瞭会計」「1分単位の支給」「無理な残業なし(安全第一)」 |
職種や給与体系によって「正解」は異なります
このように、単に法律要件を満たすだけでなく、職種ごとの「求職者の本音」に合わせた書き方をすることで、応募の反応率は劇的に変わります。
「自社の職種だと、どう書くのがベストなのか?」
「今の給与規定(手当の名称など)で、法的に問題ない書き方ができるか?」
もし迷われた場合は、自己判断で進めず、当社のような専門家のチェックを受けることをおすすめします。
本記事では、固定残業代に関する法的な「4つの明示ルール」と、求職者の心理的ハードルを下げる「書き方のテクニック」を解説しました。
ここで改めて強調したいのは、「固定残業代があるから応募が来ない」というのは誤解だということです。
応募が来ない本当の原因は、説明不足によって「サービス残業させられるのではないか?」「基本給をごまかしているのではないか?」という不信感を与えてしまっていることにあります。
この3ステップを踏めば、敬遠されがちな固定残業代も、むしろ「メリハリをつけて働き、安定収入を得られる」という強力な採用アピールポイント(武器)に変わります。
ぜひ今回の記事を参考に、求人票の備考欄やアピール文を見直してみてください。たった数行の補足説明を加えるだけで、応募者の反応は劇的に変わるはずです。
「記事の内容は分かったけれど、自社の給与規定だと具体的にどう書けばいいのか不安…」
「今の求人票が、法律違反になっていないか心配だ」
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