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2025.06.16最終更新日2025.06.16

中小企業のための採用ROI最大化戦略:コスト削減から人材投資の成果を測る

中小企業のための採用ROI最大化戦略:コスト削減から人材投資の成果を測る

日本の労働市場は、少子高齢化により2040年には労働力人口が約2割も減少すると予測されるなど、深刻な構造変化の只中にあります。中小企業の皆さまにとって、この状況下で優秀な人材を確保し続けることは、まさに経営の持続可能性を左右する喫緊の課題と言えるでしょう。

もはや「目立つ求人を出せば人が集まる」時代は終わりを告げ、求職者が企業を厳しく選ぶ時代へと完全に移行しました。インターネットやSNSの普及により、企業の情報は瞬く間に拡散され、求人票と実態のギャップは許されない状況です。今こそ採用活動を、単なる「人員補充」や「コスト」として捉えるのではなく、「未来の会社を創るための戦略的な投資」と位置づけ、「良い会社づくり」そのものと一体で推進していく必要があります。

本記事では、「採用投資」の成果、すなわち「投資対効果(ROI)」を最大化するための具体的な戦略と評価手法を、中小企業の人事・採用担当者の皆さまに向けて解説します。コスト削減だけに目を向けるのではなく、採用後の人材の活躍や定着までを見据えた、真に価値ある採用活動への転換に役立てば幸いです。

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目次

中小企業の採用コストの基本

採用活動を効果的に進めるためには、まず「採用コスト」について正しく理解することが第一歩です。一体どのような費用が含まれ、どれくらいの金額がかかるのでしょうか。ここでは、中小企業の人事・採用担当者が押さえておくべき採用コストの基本を分かりやすく解説します。

採用コストとは?~外部コストと内部コスト~

採用コストとは、新しい人材を確保するためにかかる費用の総称です。これは大きく分けて「外部コスト」と「内部コスト」の2種類に分類されます。

外部コスト
企業が外部のサービスや業者に対して支払う費用のことです。具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 求人広告掲載費(求人サイト、新聞広告、雑誌広告など)
  • 人材紹介会社への成功報酬手数料
  • 合同企業説明会や就職イベントへの出展料
  • 会社説明会やセミナーの会場費
  • 採用パンフレットや動画などの制作費
  • 適性検査や能力検査ツールの利用料

内部コスト
採用活動を行うにあたって、社内で発生する費用のことです。目に見えにくいコストもありますが、これも重要な採用コストの一部です。

  • 採用担当者や面接官の人件費(業務時間、会議時間など)
  • 応募者への交通費支給
  • 内定者への研修費用
  • 内定者フォローにかかる費用(懇親会、交通費、宿泊費など)
  • リファラル採用における紹介者へのインセンティブ

これらのコストを把握することが、採用戦略を立てる上で非常に重要になります。

どれくらいかかる?新卒・中途・アルバイト別採用コストの目安

では、実際に採用にはどれくらいのコストがかかるのでしょうか。あくまでも平均的なデータにはなりますが、新卒・中途・アルバイト採用における1人あたりの平均採用コストは以下の通りです。

  • 新卒採用:93.6万円
  • 中途採用:103.3万円
  • アルバイト採用:7.0万円

※企業の規模や業種、採用する職種によって大きく変動しますので、目安として参考にしてください。

リクルートの「就職白書2020」によると、2019年度の新卒採用における1人あたりの平均採用コストは93.6万円、中途採用では103.3万円でした。これは2018年度と比較して、新卒採用で約20万円、中途採用でも約20万円増加しており、採用コストは年々上昇傾向にある(※)ことがうかがえます。

アルバイト・パート採用に関しても、株式会社マイナビが発表した「アルバイト・パート採用費レポート2022」によると、2022年の1人あたり平均採用コストは7.0万円となり、2020年に一時減少したものの再び増加傾向にあります。

(※)「就職白書2022」採用活動に費やす総費用:増える22.9%、同じ67.1%
「就職白書2023」採用活動に費やす総費用:増える31.3%、同じ62.1%

【企業規模によるコストの違いにも注意】
特に中小企業が注意したいのは、企業規模によって採用コストが大きく異なる点です。例えば、前述のアルバイト採用の調査では、従業員数3~10名の企業では1人あたり21.4万円であるのに対し、500人以上の企業では10.2万円と報告されています。これは、中小企業が大手企業と同じような求人広告媒体や採用手法を用いた場合、相対的に一人あたりのコストが高くなる傾向があることを示唆しています。


このように、採用市場における人材獲得競争の激化に伴い、優秀な人材を確保するための費用は高騰しているのが現状です。

なぜ採用コストの把握が重要なのか?

「なんとなく採用にお金がかかっている」という認識だけでは不十分です。採用コストを正確に把握することには、以下のような重要な意味があります。

適切な予算策定
過去の採用コスト実績を分析することで、今後の採用活動に必要な予算を現実的に見積もることができます。これにより、無駄な支出を抑え、計画的な採用活動が可能になります。
費用対効果の検証と改善
どの採用チャネル(求人広告、人材紹介など)にどれだけのコストをかけ、何人の採用につながったのかを把握することで、各手法の費用対効果を客観的に評価できます。効果の低い手法は見直し、効果の高い手法にリソースを集中させるなど、採用戦略の改善につなげられます。
経営判断への貢献
採用コストは、企業の経営戦略にも影響を与える重要な指標です。コストを正確に把握し、その増減要因を分析することで、事業計画における人員計画の妥当性や、採用戦略の見直しの必要性などを経営層に的確に報告できます。
採用活動の「見える化」
採用に関わるメンバー間でコスト意識を共有し、目標達成に向けた共通認識を持つことができます。

少子高齢化による労働力人口の減少や、売り手市場化が進む現代において、戦略的な採用活動は企業の成長に不可欠です。その第一歩として、自社の採用コストを正しく把握し、管理していくことの重要性をぜひ認識してください。

採用コストは「経費」から「投資」へ!「採用ROI」という考え方

採用には様々なコストがかかることをご理解いただけたかと思いまが、採用コストを単なる「経費」として捉えてしまうと、どうしても「いかに安く抑えるか」という発想に陥りがちです。もちろんコスト意識は重要ですが、それだけでは企業の成長に必要な人材獲得は難しくなってしまいます。

そこで提案したいのが採用コストを「企業の未来を創るための投資」と捉える新たな視点です。そして、その投資がどれだけの成果を生んだのかを測る指標が「採用ROI(投資対効果)」です。

「採用ROI」って何?~かけた費用でどれだけ成果があったか~

「ROI」とは"Return On Investment"の略で、日本語では「投資収益率」や「投資対効果」と訳されます。簡単に言えば、「投資した費用に対して、どれだけの利益(リターン)が得られたか」を示す指標です。

これを採用活動に当てはめたのが「採用ROI」です。
例えば、ある人材を採用するために100万円のコスト(求人広告費、面接時間の人件費など)をかけたとします。その結果、採用した人材が会社に100万円以上の価値(売上貢献、業務効率化など)をもたらしてくれれば、その採用は「投資に見合う、あるいはそれ以上の成果があった」と言えます。
採用ROIは「かけたコスト」と「得られた成果」を比較することで、採用活動の有効性を客観的に評価するための考え方です。単に「何人採用できたか」だけでなく「その採用が会社にどれだけのプラスをもたらしたか」という質的な側面にも目を向けることができます。

中小企業こそ「採用ROI」を意識すべき理由

特に中小企業にとって、この「採用ROI」という考え方は非常に重要です。その主な理由を3つご紹介します。

限られたリソースの有効活用
大企業に比べて、中小企業は採用にかけられる予算や人員(リソース)が限られています。だからこそ、一つひとつの採用活動が「本当に効果的だったのか」「もっと良い方法はなかったのか」を厳しく見極め、貴重なリソースを最大限に有効活用する必要があります。採用ROIを意識することで、より費用対効果の高い採用戦略を検討し、取り入れることができるようになります。
採用の失敗が経営に与えるインパクトが大きい
中小企業では、一人の社員が会社全体に与える影響が大きくなる傾向があります。そのため、もし採用した人材が期待した活躍をしてくれなかったり、すぐに辞めてしまったりした場合(採用のミスマッチ)、その損失は会社にとって大きな打撃となり得ます。採用ROIの視点を持つことは、こうした採用の失敗リスクを減らし、確実性の高い採用を目指すことにつながります。
戦略的な人材獲得による成長加速
現代は変化の激しい時代であり、企業の持続的な成長のためには、その時々の経営戦略に合致した優秀な人材を計画的に獲得していくことが不可欠です。採用ROIを意識することは、場当たり的な人員補充ではなく、「どのような人材がどれだけの価値を生み出してくれるのか」を考え、戦略的に採用活動を進めるための指針となります。

採用コストを単なる「出ていくお金」と考えるのではなく、「未来への投資」と捉え、その成果を測る「採用ROI」の視点を持つことこそが、厳しい採用環境を勝ち抜き、企業を成長させていくための重要な鍵となるのです。

どうやって測る?採用の成果~採用ROIの簡単な考え方とKPI~

「採用ROI」という視点を持つことが重要だと理解はできるものの、具体的にどのようにして採用の成果を測り、ROIを意識した活動につなげていけば良いのでしょうか?
何となく難しそうに聞こえるかもしれませんが、基本的な考え方と成果を測るための指標(KPI)を理解すれば、中小企業でも採用活動の改善に大いに役立てることができるはずです。ここでは採用ROIのシンプルな捉え方と具体的な指標(KPI)について解説します。

採用ROIを「見える化」するためのシンプルな考え方

採用ROIとは、前章で述べた通り「採用に投資した費用に対して、どれだけの利益(リターン)が得られたか」を示す指標です。

投資額
これは「採用コストの基本」で解説した「外部コスト」と「内部コスト」の合計となります。

利益(リターン)
 ここがポイントで採用活動における「利益」は、採用した人材が会社にもたらす価値全般を指します。具体的には、以下のようなものが考えられます。

採用した人材の直接的な貢献
売上への貢献:営業職なら新規契約による売上増、開発職なら新製品開発による利益など。
生産性向上によるコスト削減:新しいスキルを持った人材の加入や、業務改善提案による残業代の削減など。
ミスマッチ防止による間接的な貢献
早期離職による再採用コストの削減:適切な採用で早期離職が減れば、再度募集広告を出したり、選考に時間をかけたりするコストが不要になります。例えば、離職率が20%から12%に改善するだけで、年間数十万円の採用・教育コストが削減できるという試算もあります。
非財務的な価値(長期的な利益につながるもの)
定着率の向上:長く働いてくれる人材は、経験を積み重ねてより大きな戦力となり、教育コストも低減します。
社員エンゲージメントの向上:意欲の高い社員が増えれば、組織全体の活性化や生産性向上につながります。
企業ブランド価値の向上:良い人材が集まる会社は、社外からの評判も高まり、将来の採用活動が有利になる可能性があります。

完璧な数値化は難しくても、「かけたコストに対して、これらのリターンがどれくらい見込めるか?」という視点を持つことが採用ROIを意識する第一歩です。

【採用ROIの計算例】

一般的な計算式は「利益÷投資額×100(%)」で表されます。

例えば、営業職1名を200万円の採用コストで採用し、その社員が年間1,200万円の粗利(売上から給与などの直接コストを引いたもの)を生み出すとします。
この場合、採用ROIは「1,200万円÷200万円×100%=600%」となります。
この数値が高いほど、投資効率が良いと言えます。中小企業では一人ひとりの影響が大きいため、こうした貢献度を意識することが大切です。

これだけは押さえたい!採用活動の成果を測るKPI

採用ROIを意識し、採用活動を改善していくためには、具体的な目標(KGI:重要目標達成指標)と、その達成度合いを測るための指標(KPI:重要業績評価指標)を設定することが不可欠です。
例えば、KGIを「1年以内に、自社の理念に共感するエンジニアを5名採用し、入社1年後の定着率を90%以上にする」と設定した場合、それを達成するためのプロセスで以下のようなKPIを追いかけます。

採用プロセスにおける主要KPI(採用活動の効率を見る指標)

  • 応募率・応募数: 求人広告の閲覧数に対してどれくらいの応募があったか。ターゲットに情報が届いているか。
  • 書類選考通過率: 応募者のうち、書類選考を通過した割合。求める人物像との合致度。
  • 面接通過率: 各面接段階を通過した割合。選考基準の適切さや面接官のスキル。
  • 内定承諾率: 内定を出した候補者のうち、実際に入社を決めた割合。企業の魅力度、競合との比較。
  • 選考辞退率・内定辞退率: 選考途中や内定後に辞退された割合。選考プロセスや条件面での課題がないか。
  • 採用単価(一人あたりコスト): 採用者1人あたりにかかった総コスト。費用対効果の良いチャネルはどれか。
  • 平均採用期間: 募集開始から採用決定までの日数。採用スピードは適切か。

これらのKPIを定期的にチェックすることで、採用プロセスのどこに課題があるのか(例:応募は来るが書類選考で落ちすぎる、内定は出すが辞退が多いなど)を把握し、改善策を打つことができます。

採用後の成果を測るKPI(「採用の質」を見る指標)

採用は、人材が入社したら終わりではありません。入社した人材が定着し、活躍して初めて「良い採用だった」と言えます。

  • 入社後定着率: 入社後、一定期間(例:3ヶ月、1年、3年)経過した時点で在籍している社員の割合。ミスマッチがなかったか、受け入れ体制は十分か。
  • 新入社員の活躍度・貢献度:
    • 研修後評価・OJT評価: 研修の理解度や実務への適応度。
    • 1年後のパフォーマンス評価: 目標達成度、業務スキル、周囲からの評価など。
    • 売上や生産性への貢献(数値化できる場合): 新規顧客獲得数、担当プロジェクトの成果、業務改善によるコスト削減額など。
  • エンゲージメントスコア: 社員の会社への愛着度や仕事への意欲。

これら入社後に計測できる「採用の質」に関するKPIは、採用ROIの「利益」部分に大きく関わってきます。

KPI設定のポイント:自社に合った指標を見つけよう

  • 測定可能で具体的であること: 「なんとなく良くなった」ではなく、数値で測れる具体的な指標を設定します。
  • シンプルで分かりやすいこと: 関係者全員が理解し、追いかけられるKPIが理想です。最初から多くのKPIを設定しすぎないようにしましょう。
  • 経営目標と連動させる: 会社の事業計画や目標達成に必要な人材像を明確にし、そこから逆算してKPIを設定しましょう。
  • 定期的な見直しを行う: 設定したKPIが本当に適切か、市場環境の変化に合わせて定期的に見直し、必要であれば修正します。

中小企業では、大企業のように高度な分析ツールを利用していないケースが多いかもしれませんが、まずはエクセルなどでデータを記録・集計することから始めてみましょう。大切なのは数値を意識し、データに基づいて採用活動を改善していくという姿勢です。

コストを抑えて効果アップ!中小企業のための採用ROI最大化戦略7選

採用コストを「投資」と捉え、そのROI(投資対効果)を高めることの重要性をご理解いただけたなら、実際に採用コストを抑えつつ、採用の質を高め、ROIを最大化するための具体的な戦略に取り組みましょう。ここでは7つの戦略をご紹介しますので、自社に合ったものから取り入れてみるといいでしょう。

リファラル採用(社員紹介制度)の強化

リファラル採用とは、自社の社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法です。

ROI向上へのつながり

コスト削減効果(外部コスト減)
求人広告費や人材紹介会社への手数料といった外部コストを大幅に削減できます。
採用の質向上・定着率アップ
紹介する社員は自社の文化や働きがいをよく理解しているため、企業にマッチしやすく、入社後の定着率が高い傾向にあります。これにより、早期離職による再採用コストや、ミスマッチによる生産性低下を防ぐことができます。

実践のポイント:

  • 紹介してくれた社員へのインセンティブ制度を設ける(金銭だけでなく、休暇や表彰なども有効)。
  • 紹介された候補者には迅速かつ丁寧に対応する。
  • 社内で制度の目的やメリットを共有し、協力を促す。

リファラル採用については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。

無料・低コスト求人メディアの戦略的活用

ハローワーク、Indeed、求人ボックスのような無料で利用できる求人サービス、地方採用の場合は各地域のローカル求人メディア、あるいは企業のSNSアカウントを活用したソーシャルリクルーティングなど、費用を抑えられるメディアを積極的に活用します。

ROI向上へのつながり

コスト削減効果(外部コスト減)
有料広告への依存度を下げ、採用コストを直接的に削減します。
ターゲットに合わせた媒体選択
各メディアには得意なターゲット層や職種があります。自社が求める人材に合わせて媒体を使い分けることで、応募の質を高め、無駄なコストを削減できます。

実践のポイント:

  • 各メディアの特徴(利用者層、得意な職種、料金体系など)を理解し、自社の採用ターゲットに合ったものを選ぶ。
  • 求人情報は具体的に、魅力的に記載する(仕事内容、働く環境、求める人物像など)。
  • 定期的に応募状況や採用結果を分析し、費用対効果の低い媒体は見直す。

ダイレクトリクルーティングの導入検討

企業が求職者データベースを活用して、求める人材に直接アプローチする採用手法です。

ROI向上へのつながり

コスト削減の可能性(外部コスト減)
人材紹介会社への高額な成功報酬を削減できる可能性があります。
採用の質向上・ミスマッチ低減
企業が直接候補者を選定するため、より自社のニーズに合致した人材にアプローチでき、ミスマッチのリスクを低減できます。

実践のポイント:

  • 登録会員の多いサービスや特定の専門分野に特化したダイレクトリクルーティングサービスを活用する。
  • ターゲット人材に響くスカウトメールの文面を工夫する(企業の魅力、なぜその人に興味を持ったかなどを具体的に)。
  • 返信率や面談設定率などのKPIを設定し、効果を測定しながら改善する。
  • 運用にはある程度の手間とノウハウが必要なため、社内体制を整えるか、部分的なサポートを検討する。

ダイレクトリクルーティングについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。

採用広報の強化とオウンドメディア(自社サイト等)活用

自社のウェブサイト、ブログ、SNSなどを活用して、企業のビジョン、文化、働く環境、社員の声などを積極的に発信し、企業の魅力を伝えます。

ROI向上へのつながり

応募数の増加・母集団の質向上
企業の魅力が伝わることで、より多くの、そして自社に共感する質の高い候補者からの応募が期待できます。
ミスマッチ低減
事前に企業文化や働きがいを理解してもらうことで、入社後のギャップを減らし、早期離職を防ぎます。
長期的なコスト削減
魅力的なオウンドメディアは、継続的に応募者を集める資産となり、有料広告への依存度を下げ、結果的に採用単価の低減につながります。

実践のポイント:

  • ターゲットとする人材に響くコンテンツ(社員インタビュー、1日の仕事の流れ、社内イベントの様子、経営者の想いなど)を企画・発信する。
  • 求人情報だけでは伝わらない「会社のリアル」を伝える。
  • 継続的に情報を更新し、求職者とのエンゲージメントを高める。

自社サイトの採用ページが重要な理由やこれからの自社採用コンテンツはどのように進化させるべきかについてこちらの記事でご確認いただけます。

ミスマッチ防止策の徹底で早期離職を防ぐ

採用選考の段階から、企業と候補者の相互理解を深め、入社後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐための施策を徹底します。

ROI向上へのつながり

再採用コストの大幅削減
早期離職は、新たな採用コスト(広告費、選考時間など)や教育コストを発生させます。ミスマッチを防ぐことは、これらの無駄なコストを削減する最も効果的な方法の一つです。
組織全体の生産性向上
ミスマッチによる早期離職は、残された社員のモチベーション低下や業務負担増にもつながります。定着率を高めることで、組織全体の安定と生産性向上に貢献します。

実践のポイント:

  • 「求める人物像」の明確化: スキルだけでなく、価値観や社風との相性も具体的に定義する。
  • 情報開示の透明性: 企業の魅力だけでなく、RJP(リアリスティックジョブプレビュー)を意識して課題や大変な側面も正直に伝える。
  • カジュアル面談の導入: 選考前に、お互いをより深く知るためのフランクな面談機会を設ける。
  • 職場見学や社員との交流機会の提供: 実際の働く環境や雰囲気を体験してもらう。
  • 適性検査の活用: 客観的なデータで候補者の特性を把握する。
  • 内定後の丁寧なフォロー: 入社までの不安を取り除くコミュニケーションを継続する。

採用DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

採用活動にITツールやデジタル技術を導入し、業務効率化やデータ活用を進めます。

ROI向上へのつながり

内部コストの削減
ATS(採用管理システム)などを導入することで、応募者情報の一元管理、選考進捗の可視化、メール連絡の自動化などが可能になり、採用担当者の作業時間や手間を大幅に削減できます。
データに基づいた意思決定
過去の採用データ(応募経路、選考通過率、採用決定者の傾向など)を分析することで、より効果的な採用チャネルの選定や、選考基準の改善につなげられます。
候補者体験の向上
スムーズな応募プロセスや迅速な連絡は、候補者の満足度を高め、選考辞退を防ぐ効果も期待できます。

実践のポイント:

  • 自社の課題や規模に合ったATSやツールを選定する(多機能すぎても使いこなせない場合がある)。
  • オンライン面接ツールを導入し、遠方の候補者との面接コスト(交通費、時間)を削減する。
  • まずは一部の業務からスモールスタートで導入し、効果を見ながら拡大していく。

ATS(採用管理システム)については、以下の記事で詳しく解説しています。

選考プロセスの見直しと効率化

現在の選考プロセス全体を客観的に見直し、無駄なステップや時間を削減し、候補者にとっても負担の少ない、かつ効果的な選考フローを構築します。

ROI向上へのつながり

内部コストの削減
面接回数の最適化、書類選考基準の明確化、評価シートの標準化などにより、面接官や採用担当者の時間的コストを削減します。
候補者体験の向上と選考辞退の防止
長すぎる選考期間や、分かりにくい選考プロセスは候補者の離脱につながります。迅速で透明性の高い選考は、企業の印象を高め、内定承諾率の向上にも貢献します。
採用スピードの向上
効率的な選考プロセスは、採用決定までの期間を短縮し、競合他社に優秀な人材を奪われるリスクを低減します。

実践のポイント:

  • 各選考ステップの目的と必要性を再検討する。
  • 面接官トレーニングを実施し、評価のバラつきをなくし、面接の質を高める。
  • 応募者からのフィードバックを収集し、選考プロセスの改善に活かす。
  • 録画面接やグループワークなど、多様な選考方法を検討する。

これらの戦略は、一つひとつが独立しているわけではなく、相互に関連し合っています。自社の状況や課題に合わせて、優先順位をつけながら取り組むことで、採用コストを最適化し、採用ROIの最大化を目指しましょう。

見逃せない!採用活動を後押しする助成金の賢い活用法

雇用関係助成金とは、一定の条件を満たして労働者の雇用維持や新規雇用、能力開発などを行った事業主に対して、国(主に厚生労働省)から支給されるお金のことです。返済の必要がないため、うまく活用すれば採用コストの負担を大きく軽減できます。

中小企業が活用しやすい主な助成金には、以下のようなものがあります。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用労働者、パートタイマー、派遣社員などを正規雇用労働者に転換する事業主を支援。

【中小企業への支給額・助成率の目安】
労働者1名あたり28万円~72万円(生産性要件を満たす場合など条件により変動)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、原則3ヶ月間の試行雇用(トライアル雇用)する事業主を支援。

【中小企業への支給額・助成率の目安】
労働者1名あたり月額最大4万円(最長3ヶ月間)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母など、特に就職が困難な方を継続して雇用する事業主を支援。

【中小企業への支給額・助成率の目安】
労働者1名あたり30万円~240万円(対象者の類型や労働時間により複数年にわたり支給)
早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)
東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動費の一部を助成。

【中小企業への支給額・助成率の目安】
採用活動費用の1/2~1/3、上限100万円
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度などの雇用管理制度を導入し、従業員の定着・確保を図る事業主を支援。

【中小企業への支給額・助成率の目安】
制度導入助成57万円(生産性要件を満たす場合)+目標達成助成など

(注:上記は代表的な例であり、助成金の名称、内容、支給額は年度によって変更されることがあります。必ず最新の情報を厚生労働省のウェブサイト等でご確認ください。)

これらの助成金は、採用ROIの計算式における「投資額」を直接的に減らす効果があります。つまり、たとえ採用によって得られる「利益」が同じでも、投資額が少なくなれば、ROIの数値は大きく向上するのです。これにより、通常では予算的に難しいと感じていた採用手法や、特定のスキルを持つ人材への投資が可能になるなど、企業の成長戦略を後押しする力強いツールとなり得ます。

助成金活用のメリットと申請時のポイント

助成金を活用するメリットは、採用コストの削減だけではありません。

  • 採用コストの直接的な削減: これが最大のメリットです。
  • 採用できる人材の幅が広がる: 例えば、トライアル雇用助成金を活用すれば、経験が浅くてもポテンシャルのある人材を採用しやすくなります。
  • 社内の雇用管理体制の見直し・整備につながる: 助成金の受給要件を満たすために、就業規則の整備や労働時間の管理など、社内の労務管理体制を見直す良い機会になります。
  • 企業の社会的評価の向上: 積極的に雇用創出や人材育成に取り組む企業として、社会的なイメージアップにもつながる可能性があります。

一方で、助成金の申請にはいくつかの注意点があります。

最新情報の確認が必須
助成金制度は頻繁に内容が変更されたり、新たなものが創設されたりします。必ず厚生労働省のウェブサイトや、管轄のハローワーク、都道府県労働局などで最新の情報を確認しましょう。
対象要件の事前確認
各助成金には、対象となる事業主、労働者、実施すべき取り組みなど、細かな要件が定められています。自社が要件を満たしているか、事前にしっかりと確認することが重要です。
計画的な準備と申請
助成金の多くは、取り組みを実施する「前」に計画書を提出する必要があったり、申請期限が設けられていたりします。後から「知らなかった」では手遅れになることも。早めに情報を収集し、計画的に準備を進めましょう。
正確な書類作成と証拠書類の保管
申請には、多くの書類が必要となります。記載内容に誤りがないか、必要な証拠書類(労働契約書、出勤簿、賃金台帳など)が揃っているか、細心の注意を払いましょう。
専門家の活用も検討
手続きが複雑で分かりにくい場合や、確実に受給したい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談するのも有効な手段です。

助成金は、中小企業の採用活動を力強くサポートしてくれる制度です。情報を正しく理解し、計画的に活用することで、採用コストの負担を軽減し、より質の高い人材獲得、そして採用ROIの最大化へとつなげましょう。

他社はどうしてる?中小企業の採用コスト削減&ROI改善パターン

採用コストの削減やROI(投資対効果)の向上は、多くの企業にとって共通の課題です。こここでは、中小企業が実際に取り組み、成果を上げている代表的なパターンをいくつかご紹介します。自社の課題解決のヒントとして、参考にしてみてください。

パターン1:社員のつながりと情報発信で、コストを抑えつつ質の高い採用を実現

よくある課題

  • 求人広告費が高く、採用単価が下がらない。
  • 自社の魅力が外部に十分に伝わらず、応募が集まりにくい。
  • 入社後のミスマッチが多く、早期離職につながることがある。

効果的な取り組みの組み合わせ例

1. リファラル採用(社員紹介制度)の積極活用
・社員が安心して知人を紹介できるような、分かりやすい制度と魅力的なインセンティブ(報酬だけでなく、表彰や特別休暇なども)を用意する。
・社内で制度の目的や成功事例を共有し、全社的な協力体制を築く。
2. ターゲットに響く採用広報の展開
・自社のウェブサイトやSNSで、働く環境のリアルな情報(社員インタビュー、1日の仕事の流れ、社風が伝わるイベントの様子など)を発信する。
・求人票だけでは伝えきれない企業の理念やビジョン、社員の成長ストーリーなどを積極的に公開する。

期待される成果(ROI改善の方向性)

  • 採用コストの削減: 求人広告費や人材紹介手数料といった外部コストの抑制。
  • 応募の質の向上とミスマッチの低減: 社風や価値観に共感した応募者が増え、定着率の向上が期待できる。
  • 企業の魅力向上と認知度アップ: 継続的な情報発信により、採用市場における企業のブランドイメージが向上する。

パターン2:業務のデジタル化と選考プロセスの最適化で、「見えないコスト」を削減し、採用スピードと質を両立

よくある課題

  • 採用業務が多く、担当者の負担が大きい(残業が多い、コア業務に集中できない)。
  • 選考に時間がかかり、優秀な候補者を他社に取られてしまうことがある。
  • 選考基準が曖昧で、入社後にスキルギャップが生じることがある。

効果的な取り組みの組み合わせ例

採用関連ツールの導入による業務効率化
・採用管理システム(ATS)を導入し、応募者管理、選考進捗の共有、候補者とのコミュニケーションなどを効率化する。
・オンライン面接ツールを活用し、遠方の候補者との面接や日程調整の負担を軽減する。
選考プロセスの見直しと明確化
・各選考ステップの目的を明確にし、不要なプロセスは削減する。面接回数や内容を最適化する。
・客観的な評価基準(スキルチェック、適性検査など)を導入し、面接官による評価のブレを少なくする。
・候補者へのフィードバックを丁寧に行い、選考体験の満足度を高める。

期待される成果(ROI改善の方向性)

  • 内部コスト(採用担当者の工数)の削減: 採用業務の自動化・効率化により、担当者がより戦略的な業務に時間を使えるようになる。
  • 採用スピードの向上と機会損失の防止: 迅速な選考プロセスにより、優秀な人材を確保しやすくなる。
  • 採用の質の安定化: 客観的な評価基準と効率的な選考により、ミスマッチのリスクを低減し、入社後の早期戦力化を促進する。

これらのパターンはあくまで一例です。重要なのは自社の採用課題を正しく把握し、それに合った戦略を組み合わせて実行していくことです。小さな改善の積み重ねが、結果として大きな採用ROIの向上につながるでしょう。

まとめ|データに基づいた戦略的な採用活動へ

本記事では、中小企業における採用コストの基本的な考え方から、その投資対効果(ROI)を高めるための具体的な戦略、さらには活用できる助成金や具体的な取り組みパターンまで、幅広く解説してきました。

少子高齢化による労働力人口の減少、そして求職者優位の売り手市場が続く現代において、中小企業が優秀な人材を確保し、持続的に成長していくためには、採用活動に対する意識を根本から変革する必要があります。採用コストを単なる「経費」として捉えるのではなく、「未来の会社を創るための戦略的投資」と位置づけること。 これがこれからの時代を勝ち抜くための第一歩です。そして、その投資がどれだけの成果を生んでいるのかを客観的に測る指標として、「採用ROI」という考え方が不可欠になります。

採用ROIを最大化するためには、本記事で紹介した以下のポイントに対する多角的なアプローチが求められます。

  • 自社の採用コストを正確に把握する(外部コスト・内部コスト)
  • 採用の成果を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に分析する
  • リファラル採用、無料・低コストメディア活用、ダイレクトリクルーティング、採用広報、ミスマッチ防止策、採用DX、選考プロセス効率化といった具体的な戦略を、自社の状況に合わせて実行する
  • 活用できる助成金制度について積極的に情報収集し、賢く利用する

採用は単に欠員を補充する作業ではありません。企業の未来を担う人材という「財産」を獲得するための、極めて重要な経営戦略の一部です。一度戦略を立てて終わりにするのではなく、収集したデータに基づいて効果を検証し、継続的に改善を繰り返していくことが重要です。PDCAサイクルを回しながら、自社にとって最適な採用の形を追求していく姿勢こそが、中小企業の限られたリソースを最大限に活かし採用成功へとつなげる鍵となるはずです。

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