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2024.10.28最終更新日2024.10.28

2025年問題とは?企業へもたらす影響や対策について解説

2025年問題とは?企業へもたらす影響や対策について解説

2025年問題とは、団塊世代が75歳以上に突入することによって起こる問題のことです。団塊世代が後期高齢者となることで、さまざまな社会問題が起こり、企業経営や雇用に多大な影響を与え、多くの業界が打撃を受けるといわれています。

なかでも人材不足が深刻化する可能性があるとされているため、人材採用・育成を担う人事担当者としては、しっかりと対策しておきたいポイントです。

そこでこの記事では2025年問題について、以下の4項目から解説します。

  • 2025年問題に関する基礎知識
  • 企業へもたらす5つの影響
  • 影響を大きく受ける業界
  • 企業がすべき5つの対策

 ぜひ最後まで記事を読み、企業が2025年問題にどう備えるべきか一緒に対策を考えていきましょう。

2025年問題とは?基礎知識を解説

最初に2025年問題についての基礎知識を、以下の3項目で解説します。

  • 2025年問題とは超高齢化に伴う社会問題のこと
  • 「2025年の崖」との違い
  • 「2040年問題」との違い

類似したキーワードを持つ問題と合わせて解説するので、ぜひ参考にしてください。

2025年問題とは超高齢化に伴う社会問題のこと

「2025年問題」とは西暦2025年以降、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで起こる、さまざまな社会問題のことです。

2025年には約800万人いる団塊世代がすべて75歳以上になり、日本の後期高齢者の総数は約2180万人になります。日本国民の5人に1人が75歳以上という、世界的な超高齢化社会に突入します。

この超高齢化社会により引き起こされるとされているのが、以下のような社会問題です。

  • 労働力(労働人口)の減少による人手不足
  • 介護や医療の崩壊
  • 社会保障費の負担増加

特に労働人口の減少による人手不足は、医療・介護をはじめ様々な業界で顕在化すると予想される深刻な問題です。

少子高齢化問題により、すでに多くの企業が人材採用に苦戦していますが、その傾向が2025年問題により、ますます強くなると予想されています。

「2025年の崖」との違い

2025年問題と共に取り沙汰される「2025年の崖」ですが、その本質はまったく別のものです。2025年の崖とは、企業が既存の古いシステム(レガシーシステム)に依存することで起こる問題です。

2025年を迎えると、企業内で稼働している基幹システムやソフトウェアのうち、全体の6割以上が20年以上稼働している古いシステムとなります。
これら既存システムに依存することは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の阻害を助長します。

経済産業省の調査によると、DX化の阻害による経済損失額は、2025年以降最大で12兆円/年になるとされています。これが「2025年の崖」と呼ばれる問題の本質です。

この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。

経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」より引用

2025年の崖を克服するには、既存システムをしっかり見直し、最適化していくことが重要です。問題を段階的に克服してDX化を進めることで、業務効率を改善し、国際社会に対する競争力を高めていけます。

「2040年問題」との違い

「2040年問題」とは、2025年問題がさらに深刻化した先にある、一連の社会問題・経済的問題です。
2040年になると、団塊ジュニア世代層(1971〜1974年生まれ)が65歳を迎えます。すると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%に達するとされています。

2040年になり史上類を見ない少子高齢化に陥った日本では、以下のような問題が起こると予想されています。

  • 社会保障制度の負担の急増
  • 人口減少による労働力・生産性低下
  • 地方の深刻な過疎化
  • 世代間格差の拡大

2040年問題へ備えるには、長期的な視点での社会保障制度の改革や、少子高齢化への対策が急務です。社会全体が協力し、多角的に問題に取り組むことが重要となります。

2025年問題が企業へもたらす5つの影響

2025年問題が企業にもたらす影響は、大きくわけて以下の5つです。

  1. 人材不足の深刻化と採用競争の激化
  2. 後継者不足による事業継承問題の発生
  3. 現場の知識やスキルの喪失
  4. 高齢者人口の増加による社会保障負担増
  5. 既存システムの老朽化による維持負担増

どれも無視できない問題であるため、しっかり確認しておきましょう。

人材不足の深刻化と採用競争の激化

団塊世代が75歳以上となり労働の中核から外れ、かつ少子高齢化によって若年層人口が減少することで、人材不足が深刻化します。

厚生労働省が2004年に発表した資料によると、現状のままで有効な対策(※)を講じなかった場合、2025年には労働力人口が2003年の約6,666万人から約6,000万人へと、約666万人も減少すると予測しています。

(※)高齢者や女性の就業促進、若年層の雇用対策、外国人労働者の受け入れ促進など

労働人口が減少すると、企業間の採用競争の激化は避けられません。優秀な人材を確保できず、競争力を失う企業が増加すると見られています。

後継者不足による事業継承問題の発生

2025年までに、70歳以上の中小企業や小規模事業者の経営者は約245万人に達すると予測されています。そのうち、約半数の127万人は未だ後継者が決まっていません。

現状を放置すると、中小企業や小規模事業者の廃業が急増します。中小企業庁の試算によると、累計約650万人の雇用と約22兆円ものGDPの損失になる可能性があるとのことです。

現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性

中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より引用

特に伝統産業や地域経済は高齢の経営者が担っている場合が多く、担い手不足が深刻です。これらを絶やさないためにも、早急な対策が必要となります。

現場の知識やスキルの喪失

高齢従業員の退職や企業の廃業に伴う、現場の知識やスキルの喪失も深刻な問題です。製造業や建設業、農業などの経験やスキルに依存する業界では、担い手不足により培ってきたものが失われる恐れがあります。

知識やスキルは1度失われると、取り戻すのが困難です。伝統芸能のような専門性が高い現場においては、技術継承が進まないことで、長年の文化や技術が途絶える危険性も高まります。

対策としては担い手育成が重要となりますが、少子高齢化が進むと、それもままならなくなります。日本の伝統的な知識やスキルを喪失しないためには、担い手育成と共に、少子化対策も急務です。

高齢者人口の増加による社会保障負担増

高齢者人口が増えると、社会保障負担額が増加します。実際に国民の社会保障負担の推移を見ると、さまざまな要因により増加の一途を辿っていることが分かります。

2025年問題により高齢者人口がさらに増えると、社会保障負担額はますます増加するでしょう。企業は社員の社会保険料の一部を負担している関係上、支払金額が増えることが考えられます。そのため、賃金の低下や雇用減少といった形で、人件費の圧縮に動く必要性が出てきます。

既存システムの老朽化による維持負担増

2025年の崖にも関連することですが、現在の高齢従業員が開発・維持してきた既存システムの老朽化により、維持コストが増大する可能性があります。
高齢従業員が退職した場合、システムを維持するのは現役の従業員です。しかし十分に継承が行われなかった場合、システムがブラックボックス化します。

この「なぜか分からないけど動いている」状態のまま運用するのは危険です。サポート終了や維持管理費の高額化によりシステム維持が困難になり、経営の大きな負担となります。
システムの問題を防ぐためにも、DX化の推進は重要課題です。

2025年問題の影響を大きく受ける業界6選

2025年問題により大きな影響を受ける業界は、主に以下の6つです。

  1. 物流
  2. 医療・介護
  3. IT・情報
  4. 建設
  5. 保険
  6. 飲食

自身の会社が該当している場合、今後の対策が重要になります。

物流

物流業界は、2024年の改正労働基準法の施行により大きな打撃を受けました。トラック運転手の労働時間が制限されることで、以下の3つの問題が噴出しています。

  • 収益の減少
  • 運賃の値上げ
  • トラックドライバーの離職

例えば、ヤマト運輸はこれらの問題に対し、日本郵便との協業や契約社員の整理、営業所の集約化を行い、乗り越えようとしています。しかし現在では、これらの施策がドライバーの不信を生み、大量離職につながってしまいました。

この集約化によって大量の退職者が出ている現状を#4で報じた。そして、この男性が勤める東東京主管でも「ここ数年でセンターの集約化が進み、この1年間で30人ほどの正社員が自主退職する事態に発展しました」と話す。いったいなにが起きているのか。

集英社オンラインの記事より引用

2024年の改正労働基準法の施行による傷が癒えない中、物流業界に2025年問題が加わることで、さらなる深刻な影響が出る可能性が高まるでしょう。

そこで現在物流業界では、自動運転技術を活用した無人配送車の導入や、AIを用いた物流センターの効率化によるDX化を進めています。最新技術を駆使して労働環境の改善を行い、新たな人材を確保できるかは重要な課題です。

医療・介護

医療・介護業界は高齢化の進展に伴い、需要が急増している一方、医療・介護サービスの供給が追いつかない可能性が高まっています。担い手不足で従事者一人ひとりに大きな負担がかかり、耐えかねて離職するケースも珍しくありません。

現在でも医療・介護業界の人材不足は深刻であるのに加え、2025年問題によって少子高齢化が進むことで、加速度的に労働力が不足する可能性が高くなります。

深刻な人材不足を打開するには、以下のような施策や最新技術を用いて、現場の負担を軽減できるかが重要です。

  • 地域包括ケアシステムの推進
  • ICTやAI技術を活用した業務効率化
  • リモートケアの導入

医療・介護業界において、サービスの質の確保と従業員の負担軽減を両立できるかは、大きな課題です。

IT・情報

技術の進化が非常に速いIT・情報業界では、その進化に対応するための人材が常に不足している現状があります。経済産業省の発表によると、IT市場規模の拡大に伴うIT人材の不足は、2030年で最大79万人にも上るとされています。

経済産業省「IT人材需給に関する調査」より引用

原因としてはIT分野の急速な成長に加え、少子高齢化も無関係ではありません。労働力の減少によりIT分野での人材需要がますます高まる一方で、供給が追いつかない状況が続いているためです。

2025年問題は、今後のIT・情報業界に打撃を与えるでしょう。先端IT人材をいかに育成するかは、業界の大きな課題です。

建設

建設業界は物流業界と同様、2024年の時間外労働への規制強化に苦しんでいます。業界全体が、従業員の長時間労働に支えられている面が強いためです。

加えて、少子高齢化により若い職人が不足しているにも関わらず、働き方の多様化から、建設業界を志望する人材も減少傾向にあります。

2025年問題でさらに担い手が不足すれば、窮地に追い込まれるのは間違いありません。
建設業界は、国の発展には必須の存在です。今後の成長を支えるためには、政府の施策と業界全体の取り組みが不可欠といえます。

保険

保険業界は、2025年問題の影響をダイレクトに受ける可能性がある業界です。
保険会社は、新規契約者を増やして保険料を集めることで収益化が可能です。しかし、労働人口減少と少子化が重なると、必然的に新規契約者は減少します。

一方で高齢者の増加に伴い、既存の契約者に対する保険料の支払い額が増加する可能性は高まります。
保険業界が継続していくためには、少子化への早急な対策がもっとも重要です。

飲食

飲食業界は、低賃金と慢性的な長時間労働が重なり、すでに慢性的な人材不足に悩まされています。

飲食業界は、学生アルバイトに依存している傾向が強いのも原因の1つ。少子高齢化によって若い人材が採れなければ、正社員の負担が増加します。

仕事がキツいうえに賃金も低ければ、離職率も上昇します。待遇改善や業務効率化を行わなければ、崩壊する可能性は高まるでしょう。

2025年問題に対し企業がすべき5つの対策

2025年問題に対して企業がすべき対策は、以下の5つです。

  1. 多様な雇用形態を導入する
  2. 多様性のある人材採用を検討する
  3. 高齢者雇用を充実させる
  4. IT・DX化による業務改善に取り組む
  5. 事業継承の方法を検討する

差し迫った問題への、しっかりした対策を整えましょう。

多様な雇用形態を導入する

単に正社員を雇用するだけでなく、さまざまな雇用形態を導入することは有効な対策の1つです。

例えば、今後重要になるとされているのが「短時間正社員」です。短時間のみ正社員として働ける、現代の労働環境にマッチした雇用形態として注目されています。

他にも契約社員やパート・アルバイトなど、個々の従業員に合った雇用形態を提供できれば、離職率の低下や新規人材の定着に役立ちます。

多様性のある人材採用を検討する

人材不足を解消するには、多様な人材採用も重要な施策です。
外国人や女性、障がい者など、さまざまな背景を持つ人材を採用することで、労働力不足に対応できます。

ただし単純に採用するだけでなく、スキルを発揮できる環境を整えることも重要です。個々の能力を活かし切ることで、自社の生産性を最大限高められます。

また多様性のある人材を採用することで、ダイバーシティを推進する企業としてのアピールも可能です。今後は多くの面から、多様性への配慮は必要不可欠な要素となるでしょう。

高齢者雇用を充実させる

今後の労働市場では、増加する高齢の従業員をいかに活用できるかは、重要な課題です。

企業が高齢者雇用を充実させることで、スキルがあっても中々就職できない高齢の従業員の雇用先を確保できます。企業は労働力を拡充できるうえ、多様な人材を取り入れていることを強くアピール可能です。

高齢者雇用には充実した助成金もあるので、採用拡大や人材の定着に活用しましょう。

IT・DX化による業務改善に取り組む

既存の古いシステムにIT・DX化を施し、業務改善に取り組むのも対策の1つです。
IT化やDX化といっても、難しいものばかりではありません。例えば、帳票や稟議書を紙から電子に変更することも、IT・DX化の一環です。

例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入することで、定型業務の自動化が可能です。また、クラウドサービスを利用することで、情報共有の迅速化が図れます。デジタル技術の活用により、業務のブラックボックス化を防止し、効率化を実現することができます。

手を付けやすいところから電子化を行うことで、従業員の労働時間の短縮や働き方改革を実現できるでしょう。既存業務をできるところから段階的に効率化することで、社員の負担軽減に努めることが大切です。

事業継承の方法を検討する

特に中小企業では、後継者不足が深刻化しています。事業継承の方法を具体的に検討することは、重要な対策です。

後継者の育成期間を含め、一般的に事業継承には5~10年を要します。そのため、経営者は継承の計画を早めに立て、段階的に進めていくことが重要です。

場合によっては、M&Aや親族外経営者による事業継承の可能性も出てくるかもしれません。いずれにせよ、事業と従業員を守るためには、計画的な事業継承の検討が必要です。

後継者不足の背景を踏まえ、中小企業庁では、事業承継診断や無料の専門家派遣を行っています。またM&Aのマッチングを支援する「事業引継ぎ支援センター」も各都道府県に設置されています。

後継者不足に悩む中小企業の経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

【まとめ】2025年問題を理解し人材不足や社会問題に備えよう

2025年問題は、現代社会の差し迫った問題として、すでにその影響を現しつつあります。特に中小企業にとって、人材や後継者が不足することは、企業の存続に影響を与える大きな懸念事項です。

2025年問題に対応するには、雇用形態の変革やDX化による業務改善など、すべきことが多くあります。ですがマンパワーが不足している企業では、これらの対策を講じる余裕もないのも事実です。

自社に合った2025年問題への対策を考えたい人事担当者の方は、ぜひ当社までご相談ください。90年にわたって企業の採用活動をサポートしてきた当社が、専門知識やノウハウを活かし、全力でサポートします。

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