Circumstance

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採用事情
新入社員の早期離職が相次ぎ、「採用してもすぐに辞めてしまう」「定着率を上げるにはどうすればいいのか」と頭を悩ませている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
実は社員1人の離職が企業にもたらす金銭的コストは、想像以上に大きいことをご存知でしょうか?単に採用費や研修費が無駄になるだけでなく、後任採用までの機会損失や周囲の社員の生産性低下など、目に見えにくいコストまで含めると、1人あたり数百万円規模に達することも珍しくありません。
この「見えざるコスト」とも言える離職コストの実態を正確に把握し、組織全体でその深刻さを共有することが、効果的な対策を講じるための重要な第一歩となります。
本記事では、離職コストの内訳や計算の考え方をわかりやすく解説するとともに、早期離職を防ぐために取り組むべき対策についても紹介します。社員の定着率を高め、採用活動の成果を無駄にしないために、ぜひ参考にしてください。

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「社員が1人辞めるだけ」――もし、そう軽く考えてしまっているとしたら、それは大きな誤解かもしれません。たった1人の離職であっても、企業は想像以上に多岐にわたる「コスト」を支払っているのです。
新しく社員を採用するための求人広告費や人材紹介料、そして時間と労力をかけて実施した研修費用。これらは比較的イメージしやすい「見えるコスト」でしょう。しかし、本当に注意すべきは、それだけではありません。
離職者が出たことによる業務の引き継ぎの混乱、それによる一時的な生産性の低下。残された社員への業務負担の集中とそれによるモチベーションの低下。さらには「あの会社は人がすぐ辞める」といったネガティブな評判が広がり、企業の採用ブランドや顧客からの信頼を損なう可能性――これらは、すぐには金額として現れにくい「見えにくい損失」ですが、確実に企業の体力を蝕んでいきます。
つまり、離職は単に採用や育成にかけた費用が無駄になるという話に留まらず、チーム全体のパフォーマンス低下、ひいては企業全体の競争力低下にまで繋がりかねない深刻な問題なのです。
具体的に、離職によって発生するコストには、以下のようなものが挙げられます。
これらの要素を総合的に考慮すると、社員1人の離職がもたらす経済的損失は、場合によっては数百万円、あるいはそれ以上に膨れ上がることも決して珍しくありません。
だからこそ、社員の離職を単なる「人手不足の問題」として片付けるのではなく、経営全体に影響を及ぼす重大な「損失」であると認識を改めることが不可欠です。
では、具体的にどのような種類のコストが、どの程度のインパクトを持っているのでしょうか?まずはその実態を明確に理解することから、効果的な対策への第一歩を踏み出しましょう。

「社員が1人辞めると、数百万円の損失が出るって本当?」――にわかには信じがたいかもしれませんが、これは決して大げさな話ではありません。特に入社後1年以内といった早期離職の場合、企業が被る経済的ダメージは深刻です。
なぜなら、採用にかけた直接的な費用はもちろんのこと、育成に注いだ時間とコスト、そして何より、その社員が在籍していた期間に支払われた給与や社会保険料などが、十分な成果を上げる前に「回収不能な投資」となってしまうからです。
実際に、ある試算(※)によれば、新卒社員が1年で離職した場合のコストは約530万円~580万円、中途社員の場合はさらに深刻で約640万円~850万円にも上るとされています。
※これらの数値は、あくまで一般的なモデルケースであり、企業の規模や採用手法、育成方針によって変動します。
この驚くべき金額は、主に以下の3つのコスト要素から構成されています。
これらのコストが積み重なることで、1人の離職が数百万円規模の損失につながるのです。特に、採用単価や期待される貢献度が高い中途社員の場合、その損失額はさらに大きくなる傾向にあります。
では、具体的にどのような内訳で、これほどのコストが発生するのでしょうか?それぞれのコスト要素を詳しく見ていきましょう。
社員が離職すると、まず無駄になるのが、その人材を獲得するために投じた採用コストです。さらに深刻なのは、欠員を補充するために再び採用活動を行わなければならず、その都度、多額の費用が発生するという悪循環です。
採用コストには、以下のようなものが含まれます。
これらの費用を合計すると、新卒採用で1人あたり約100万円~150万円、中途採用では100万円~300万円程度が一般的な相場と言えるでしょう。(参考:リクルートキャリア「就職白書2020」では、新卒1人あたりの採用単価は平均93.6万円)
離職が繰り返されるたびに、このコストが何度も発生することを考えると、いかに大きな負担となるかご理解いただけるはずです。
離職した社員が在籍していた期間中、企業は当然ながら給与や社会保険料といった人件費を支払い続けています。早期離職の場合、この期間に社員が企業へ十分な価値貢献を果たせていないケースが多く、支払われた人件費は「投資回収できなかったコスト」として重くのしかかります。
人件費には、月々の給与だけでなく、賞与、そして企業が負担する社会保険料(健康保険、厚生年金など、給与のおおよそ15.5%程度)や通勤手当などの法定福利費も含まれます。
仮に、月給30万円(賞与年3ヶ月分)の中途社員が1年で離職した場合の年間人件費を試算すると、以下のようになります。
これはあくまで直接的な人件費であり、この社員が生み出すはずだった利益や機会損失は含まれていません。
新入社員や中途入社者が一人前の戦力となるまでには、多大な教育コストが投じられています。早期離職は、これらの投資が文字通り「水の泡」となることを意味します。
教育コストは、大きく分けて以下の2つです。
これらを合計すると、新卒で約39万円、中途でも約9万円程度の教育コストが、離職によって失われることになります。
さらに、これらの直接的な教育費用に加え、教育期間中の生産性低下や、指導者の業務停滞といった間接的な損失も考慮に入れる必要があります。

離職によって生じる損失は、金銭的なコストだけではありません。
離職によって失われるのはお金だけでなく、「組織の関係性」「職場の雰囲気」「企業の信用」といった、定量化しづらい価値も含まれます。
そして、このような「数字で見えない損失」は後々まで影響を及ぼすことがあり、企業にとっても軽視できない問題です。
これらの「見えざる損失」は、放置しておくと以下のような形で、企業の根幹を揺るがす問題へと発展する可能性があります。
これらの「数字で見えにくい損失」は、一つひとつが直接的に財務諸表にマイナスとして計上されるわけではありません。しかし、長期的に見れば、組織力の低下、イノベーションの停滞、そして採用競争力の低下といった形で、確実に企業の収益性や成長性を脅かすことになるのです。
だからこそ、企業は「定着率の向上=単なるコスト削減」という短期的な視点だけでなく、「定着率の向上=組織の持続的な成長と社会からの信頼を維持するための投資」という長期的な視点を持って、真摯に対策を講じていくことが極めて重要と言えるでしょう。
これほどまでに大きなコストと組織的ダメージが発生するにもかかわらず、なぜ新入社員や若手社員の早期離職は一向に減らないのでしょうか?
「せっかく育てようと思ったのに…」「どうしてこんなに早く見切りをつけてしまうのだろう?」
人事・採用担当者の方々は、そんなやるせない思いや、時には無力感を抱く場面も少なくないかもしれません。
早期離職という現象の背景には、社会全体の労働観の変化やキャリア意識の多様化といったマクロな要因と、個々の企業における採用・育成・職場環境の問題というミクロな要因が複雑に絡み合っています。
つまり、従来の「当たり前」だった雇用や育成の在り方を見直し、今の時代の求職者・社員の価値観に寄り添ったアプローチを模索しなければ、貴重な人材の流出は今後も繰り返される可能性が高いのです。
まずは、近年の離職率がどのような状況にあるのか、客観的なデータから現状を把握しましょう。その上で、早期離職を引き起こす代表的な原因を深掘りしていきます。
近年、特に若年層、とりわけ新規学卒者の早期離職は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。人材確保の難易度が上がる中で、ようやく採用できた人材が短期間で離れてしまうことは、企業の成長戦略に大きな影響を及ぼしかねません。
厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は、高卒で38.4%、大卒で34.9%という依然として高い水準にあります。これは、おおよそ3人に1人が3年以内に最初の職場を去っていることを意味しており、前年度と比較しても微増傾向が見られます。

出典:厚生労働省「令和3年度における新規学卒就職者の離職率」
さらに深刻なのは、事業所の規模別データです。従業員数が少ない企業ほど離職率が高くなる傾向があり、例えば、従業員5人未満の事業所では、高卒の離職率が62.5%、大卒でも59.1%と、半数以上が3年以内に離職しているという衝撃的な実態が明らかになっています。
このような状況は、特にリソースに限りのある中小企業にとって、採用と育成にかけた多大なコストと労力が水泡に帰すリスクが高いことを示しており、事業継続への大きな脅威となり得ます。

では、社員が早期離職してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
その背景には、多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは、特に代表的な原因を5つに整理して解説します。
このように、早期離職の背景には「ちょっとした違和感」の積み重ねがあることも多く、社員が「この会社で働き続ける意味を見出せない」と感じた時、離職という決断に至るのです。

ここまで見てきたように、社員の離職は、目に見える金銭的コストだけでなく、組織の士気や生産性の低下、さらには企業ブランドに至るまで多岐にわたる深刻な影響を及ぼします。
この負の連鎖を断ち切るためには、「辞めた後にどう対応するか」という対処療法ではなく、「そもそも辞めさせないために、入社前から入社後にかけてどのような戦略を講じるべきか」という根本的な予防策に注力すべきです。
特に、入社後数年以内の「早期離職」を防ぐためには、採用の入り口段階から「定着」をゴールに見据えた緻密な設計と、入社後のきめ細やかなフォローアップ体制の構築が不可欠です。
ここからは企業が具体的に実践できる対策を、【採用段階】と【入社後】の2つのフェーズに分けて、具体的なアクションプランと共に解説します。
早期離職の最大の原因の一つが、入社前の期待と入社後の現実との間に生じる「ミスマッチ」です。「仕事内容が想像と違った」「職場の雰囲気にどうしても馴染めない」――こうした入社後のギャップは、社員のモチベーションを著しく低下させ、早期の離職願望へと直結します。
この致命的なミスマッチを未然に防ぎ、「この会社で長く働きたい」と思える人材との出会いを実現するために、以下の戦略が極めて有効です。
RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)とは、求職者に対して、仕事の魅力ややりがいといったポジティブな側面だけでなく、実際に働く上で直面するであろう困難や厳しさ、泥臭い部分も含めた「ありのままの姿」を正直に開示する採用コミュニケーションの手法です。
一見、「ネガティブな情報を伝えたら応募者が減ってしまうのでは?」と懸念されるかもしれません。しかし、RJPには以下のような強力な効果があり、結果として定着率向上に大きく貢献します。
【実践例】
「情報を正直に開示することで、かえって企業の誠実さが伝わり、自社に本当にマッチした人材からの応募が増えた」という事例は少なくありません。短期的な応募者数に一喜一憂するのではなく、長期的な定着を見据えた情報提供を心がけましょう。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求人媒体に広告を掲載して応募を待つ「待ち」の採用ではなく、企業自らがデータベースやSNSなどを活用して、求める人物像に合致する候補者に直接アプローチする「攻め」の採用手法です。
この手法は、特に以下のような点でミスマッチ防止と定着率向上に貢献します。
ダイレクトリクルーティングは、採用担当者の工数がかかるという側面もありますが、質の高い母集団形成とミスマッチの低減という点で、長期的に見れば非常に効果の高い戦略と言えるでしょう。
どれほど採用段階でミスマッチを防いでも、入社後の受け入れ態勢や職場環境が整っていなければ、社員は「この会社に居場所がない」、「自分の価値観と合わない」と感じ、早期離職に至ってしまう可能性があります。
特に近年は、賃金や待遇といった外的要因だけでなく、「組織とのつながり(エンゲージメント)」「仕事への誇り」「成長実感」といった内的要因が、社員の働きがいや定着意欲を大きく左右するようになっています。
社員一人ひとりが「この会社で頑張りたい」「この仲間たちと成長したい」と心から思えるような、エンゲージメントの高い組織文化を醸成することが、定着率向上の鍵となります。
オンボーディングとは、新入社員が組織にスムーズに溶け込み、早期に戦力として活躍できるようになるまでの一連の計画的かつ継続的な受け入れ・定着支援プロセスです。単なる数日間の初期研修で終わるのではなく、入社後数ヶ月から1年程度の期間を見据えた長期的なサポートを指します。
効果的なオンボーディングは、新入社員に以下のようなポジティブな影響をもたらします。
具体的なオンボーディング施策としては、歓迎ランチ会、メンター制度の導入、定期的な1on1ミーティング、目標設定と進捗確認、部門紹介、社内SNSの活用など、多岐にわたります。重要なのは、新入社員を”放置”せず、組織全体で温かく迎え入れ、成長をサポートする姿勢を示すことです。
オンボーディングと並行して、既存社員も含めた全社員のエンゲージメントを高めるための継続的な取り組みも不可欠です。多くの企業で実践され、効果を上げている代表的な施策をご紹介します。
これらの取り組みは、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、社員一人ひとりと真摯に向き合い、エンゲージメントを高めるための努力を継続することが、結果として「辞めない組織」「社員が誇りを持って働ける組織」へと繋がり、離職コストの削減という大きな果実をもたらすのです。
本記事では、社員1人の離職が企業にもたらす想像以上の「コスト」の実態(内訳や計算方法)から、その損失を未然に防ぐための具体的な採用戦略と入社後の定着支援策に至るまで、詳しく解説してきました。
改めて強調したいのは、社員の離職に伴うコストは、単に求人広告費や研修費といった直接的な費用に留まらないということです。在籍期間中に支払われた人件費、後任者が見つかるまでの機会損失、そして何よりも、組織全体の士気低下や貴重なノウハウの流出、企業ブランドの毀損といった「見えざるコスト」まで含めると、その総額は1人あたり数百万円規模に達することも決して珍しくありません。
特に、期待を込めて採用・育成した人材が短期間で去ってしまう「早期離職」は、企業にとって投資が回収できないまま損失だけが残る、まさに深刻な経営課題と言えるでしょう。
だからこそ、「辞めた後にどうするか」ではなく「そもそも社員が辞めない、辞めたくないと思える組織をいかに創り上げるか」という能動的な視点へと転換することが、今こそ求められています。
そのために、本記事でご紹介したように、
これらの取り組みは、決して一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、離職によって失われる莫大なコストを考えれば、社員の定着率向上に向けた投資は、間違いなく企業にとって最も賢明な投資の一つと言えるはずです。
社員が定着し、活き活きと働く組織は、生産性が向上し、イノベーションが生まれやすくなり、結果として企業の持続的な成長へと繋がっていきます。離職による損失が大きいということは、裏を返せば、社員1人が定着し活躍することが、企業にとってどれほど大きな価値を生み出すかを示しているのです。
ぜひ本記事を、貴社が直面する「離職コスト」の現状を再認識し、それを未然に防ぐための具体的なアクションプランを策定・実行する上での指針としてご活用ください。そして、社員から「選ばれ続ける組織」への変革に向けた、力強い一歩を踏み出していただけることを願っています。

離職コスト削減、プロに相談しませんか?
「離職コストの大きさに課題を感じていませんか?」内藤一水社では、貴社の状況に合わせた最適な採用計画の立案から早期離職を防ぐ支援までトータルでサポートいたします。数百万円の損失を防ぎ、強い組織を築く第一歩を、ぜひ私たちと一緒に踏み出しませんか?
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