ビルメン人材の採用コスト、本当に高い?
本日の最初のテーマは「採用コスト」です。単にコストを抑えるだけでなく、投資対効果(ROI)をどう高めるかが重要ですね。人材紹介のコストについて、最近の動向はいかがでしょうか?
そうですね、業界全体として成功報酬のフィーが上昇傾向にあります。以前は30%が目安でしたが、最近では条件によって40%でお取引させていただくケースが増えています。これは、私たちも候補者の方を獲得するために広告費など、いわば「仕入れコスト」が上がっている背景があります。
なるほど、人材獲得コストそのものが上がっているということですね。
企業様としては、フィーが低い方が助かる、という本音もあるかと思います。そのあたり、良い人材の紹介に影響はありますか?
正直なところ、フィーが高い企業様を優先したいというビジネス上の心理は働きますよね。もしコストを抑えたいというご要望があれば、応募要件の緩和などをご提案し、バランスを取るようにしています。
人材紹介では「コストはかかったが良い採用ができた」と感じていただけるケースも多いと思いますが、その秘訣は何でしょう?
当社の強みは、企業様と求職者様の双方を同じ担当者が対応する「両面型」であることです。これにより情報の齟齬が少なく、ミスマッチを防ぎやすくなります。結果的に早期離職のリスクを減らし、長期的なコスト削減に貢献できると考えています。また、紹介人数よりも「面接に進んでいただける率」を重視していますね。
企業様がコストを意識しつつ、良い人材を採用するためのアドバイスはありますか?
人材紹介は特定のスキルを持つ人材をピンポイントで採用したい場合に有効です。ただ、常に人材紹介がベストとは限りません。企業様の課題をしっかりお伺いし、場合によっては求人広告など他の手法も含めて、最適なプランをご提案することが大切だと考えています。
では、その求人広告についてMさんにお伺いします。一般的に人材紹介より安価なイメージがありますが、費用対効果についてはどのようにお考えですか?
求人広告には、主に「掲載課金型」「クリック課金型」「応募課金型」「採用課金型」という4つの課金タイプがあり、それぞれ費用対効果を高める工夫が異なります。例えば「掲載課金型」は、掲載期間中にいかにターゲットに響くメッセージを届けられるかが勝負です。
そうですね。「クリック課金型」では、無駄なクリックを避け、ターゲットに的確に届くキーワード選定と原稿自体の最適化が鍵になります。また、「応募課金型」はリスクが低い反面、ターゲットと異なる応募が増えるとコストがかさんでしまうので、どの媒体を選ぶかが重要です。当社の「
シニア求人ナビ」もこのプランを提供していますね。
採用が決まって初めて費用が発生する「採用課金型」もありますよね。
はい、当社の「
ビルメン転職ナビ」がそうですね。企業様にとっては最もリスクが低いですが、よりターゲットを明確にした原稿作成が不可欠です。人材紹介と比較すると、
採用コストを大幅に抑えられる可能性がありますね。
ただ、採用課金型の求人広告は、急ぎの採用には向かないイメージもありますが。
おっしゃる通り、ある程度の期間掲載し、改善を繰り返しながら成果に繋げるものなので、急募案件にはあまり適していないかもしれません。
実は、人材紹介も必ずしも急募に万能というわけではないんです。良い方ほど早く次の仕事が決まってしまうので。。。また、当社の場合、常に多くの候補者を抱えているわけではないのが実情でもあります。
なるほど。求人原稿でコストを抑えつつ質の高い応募者を集めるに、どんな工夫をしていますか?
まず、その職種の採用市場の状況、例えば難易度や平均的な採用コストを企業様としっかり共有することが大切です。その上で、ターゲットに刺さる詳細で魅力的な原稿を作成します。仕事内容だけでなく、働きやすさや応募後の選考フローなども具体的に記載することが重要ですね。
求人原稿だけでは伝えきれない魅力は、やはり企業のホームページ等で補完してほしいですよね。
本当にそう思います。求職者の方は、応募前に必ずと言っていいほど企業のホームページを確認します。情報が不足していると、それだけでマイナスな印象を与えかねません。採用ホームページの充実は、採用ブランディングの観点からも非常に重要だと思います。
ビルメン採用に効果的な採用チャネルとは?
続いてのテーマは「採用チャネル」です。様々な採用方法がありますが、まずはコーディネーターのHさん、当社の人材紹介にご登録いただくビルメンテナンス業界の候補者の方は、どのような経路で集めているのでしょうか?
当社運営サイトがそれだけ強いというのは、専門性の高さが認知されている証拠ですね。
登録いただいた方とは、どのように関係を継続されているのですか?以前のお話では、良い方ほどすぐ決まってしまうということでしたが。
確かにアクティブな方はすぐに転職されますが、個人情報の取り扱い同意のもと、1年間は登録者として情報を保持しています。ただ、それだけでは忘れられてしまうので、最近では面談時にLINE登録をお願いし、新しい求人情報の一斉配信や転職活動に役立つ情報を提供することで、繋がりを保つ努力をしています。
ちなみに、年間でどれくらいの候補者と面談されているのですか?
事業部全体で年間1500~2000名程度です。当社運営サイト経由が7割ほどで、残りの2~3割が大手データベースを活用したスカウトからの流入ですね。
それぞれの媒体で、候補者の特徴に違いはありますか?
「
ビルメン転職ナビ」は専門サイトなので、有資格者や経験者がほとんどです。そのため、私たちが求める人材にピンポイントでアプローチしやすいのが強みです。一方、大手さんのデータベースは登録者数こそ多いものの、私たちが探している条件に合致する方は限られている印象ですね。
「
ビルメン転職ナビ」には、当社の人材紹介で利用できるスカウト機能もあるそうですね?
はい、そのスカウト機能を活用し始めてから、人材紹介の成約数を大きく伸ばすことができました。専門サイトなので母数は多くありませんが、スカウトへの反応率は大手媒体と比較して格段に高いです。
また、ビルメン業界に特化しているため、既存の登録者様からのご紹介、いわゆるリファラルでご登録いただくケースも少なくありません。同僚から「転職なら内藤一水社が良い」と聞いて登録したというお声もいただきますし、ありがたいことに、あるYouTuberの方が「ビルメン系の転職に強い」と発信してくださったのを見て、ご連絡いただくこともあります。
口コミやインフルエンサーの影響もあるのですね。ありがとうございます。では、求人原稿担当のMさんにお伺いします。様々な求人広告媒体がありますが、それぞれの特徴をどのように捉えていますか?
特化型で言えば、やはり
自社媒体の「ビルメン転職ナビ」は強みがあります。ただ、全体で見ると、Indeedなどの求人検索エンジンと連動しているサイトが非常に多く、
全職種・全年齢層でIndeedの影響力は大きいと感じています。当社の媒体もIndeed経由の流入は多く、Indeed表示オプションの有無で効果も大きく変わってきます。
はい、十分に貢献できていると思います。
ターゲットを明確にし、訴求ポイントをしっかり打ち出せば、効果は期待できます。「
シニア求人ナビ」も、Indeed連携によりシニア層以外の流入もありますし、「
ビルメン転職ナビ」も設備管理だけでなく、清掃や警備といった関連職種への波及効果も見られます。
メディアミックス、つまりチャネルの組み合わせも重要になってきますよね。ビルメン業界の採用で、効果的なメディアミックスの考え方はありますか?
そうですね、例えば同じ専門特化型の媒体を複数利用するよりも、検索エンジン型の媒体と専門特化型の媒体を組み合わせるなど、異なるアプローチで求職者への間口を広げる方が効果的だと考えています。課金形態の異なる媒体を組み合わせるのも一つの手ですね。
なるほど、チャネルの特性を理解し、戦略的に組み合わせることが重要ということですね。
【成功・失敗談から学ぶ】採用が難しい求人、どう攻略する?
次のテーマは「採用が難しい求人案件での工夫」です。コーディネーターのHさん、これは難しいな、と感じる案件はありますか?
それはもう、日常茶飯事ですね(苦笑)。例えば、企業の知名度が低く、雇用形態が契約社員で…となると、正直、人材紹介での対応は厳しいと感じることもあります。そういった場合は、求人広告でのアプローチをお勧めすることもあります。
確かに、条件面で不利な場合は、紹介のハードルも上がりますよね。
ただ、難しい案件でも、必ずどこかにアピールポイントはあるはずです。例えば、業界経験者からできれば避けたいという意見の多い病院やホテルの設備管理も、見方を変えれば多様な経験が積めるチャンスです。面談の際には、「確かに大変な面もあるけれど、この経験は将来のキャリアに必ず活きますよ」といった具体的なメリットを直接お伝えすることで、応募に繋がることもあります。これは、求人広告ではなかなか伝えきれない、人材紹介ならではの強みかもしれません。
直接対話できるからこそのアプローチですね。他に工夫されていることはありますか?
例えば、非常に高いスキルが求められる案件で、該当者が見つからない場合、「募集ポジションを分割する」という提案をすることもあります。本来は有資格で経験豊富な30代を1名、というオーダーでも、現実的に難しい場合は、経験豊富な60代のシニアを契約社員で、そしてポテンシャル採用で若手の正社員を、というように2名体制での採用をご提案したりします。
なるほど、採用のハードルを下げるための工夫ですね。
あとは企業様の「理想のターゲット像」が、現実の市場と乖離している場合もあります。その際は、多少条件の異なる方であってもご紹介し、市場感を掴んでいただくこともあります。何度かご紹介する中で、「やはりこの条件では難しい」と企業様にご理解いただき、応募要件を緩和していただく、といったケースも少なくありません。粘り強いすり合わせが必要ですね。
企業様のこだわりと、市場の現実とのギャップを埋める作業ですね。Hさんが人材紹介として「ここは譲れない」というポイントはありますか?
私たちは、必ず登録者様とお会いして人柄などを確認した上でご紹介しています。書類だけでは分からない登録者様の魅力を企業様にお伝えするのが私たちの役割ですので、面談せずに書類だけを右から左へ流すようなことは絶対にしません。転職理由なども含め、じっくりお話を伺う時間は惜しみません。
ありがとうございます。では、求人広告担当のMさん、「応募が集まらない」といった難しい案件で、特に工夫されている点はありますか?
例えば、勤務地が郊外で母数が明らかに少ないと感じた場合、都市部からの移住希望者、いわゆるIターン層をターゲットに切り替えることを検討したりします。企業様に移住支援の可否などを確認し、「自然豊かな環境で長く働ける」といった訴求で応募に繋がった事例もあります。
ターゲットを広げる、あるいは変えるという視点ですね。
はい。ただ単に「未経験歓迎」と間口を広げただけでは、詳細な情報が不足していると応募に繋がりません。給与が低いのであれば、残業の少なさや休日の多さ、将来の安定性など、別のメリットを具体的に提示し、マイナス面を補う工夫をします。特に「
ビルメン転職ナビ」のような成功報酬型の媒体では、掲載期間中に原稿を修正し、数字を見ながら改善を図れるのが強みです。
具体的に、表現方法で効果があった例、逆に良くなかった例はありますか?
「残業少なめ」といった曖昧な表現よりも、「月平均残業時間〇時間」のように具体的な数字を入れる方が効果的だと感じています。「休日多め」ではなく「年間休日〇日」など、定量的な情報の方が求職者に響きやすいですね。
人材紹介でも、「ポテンシャル採用」や「やる気のある方」といったふんわりしたオーダーは、実は非常に難しいんです。「やる気」の基準は曖昧ですし、見極めも困難です。そういった場合は、「どういった経験を持つ方が活躍しやすいですか?」などと逆に質問し、ターゲットを具体的に絞り込むお手伝いをします。
「とにかくやる気のある人募集!」と企業様に言われた場合、求人広告ではどうアピールしますか?
「やる気」という言葉は直接的には使いませんね(苦笑)。まず、その職種の市場感やターゲット層の傾向を分析します。その上で、仕事内容から「体力が必要そうだ」「男性の方が母数が多そうだ」といった仮説を立て、ターゲット像をある程度こちらで具体化し、その層に響くようなメッセージや情報を盛り込むようにしています。曖昧な表現は避け、できるだけ具体的に訴求することを心がけています。
なるほど、難しい案件だからこそ、多角的な視点と具体的なアプローチが重要ということですね。
ビルメン業界における採用ブランディングの重要性
最後のテーマは「採用ブランディングの必要性」です。コーディネーターのHさん、候補者の方は、企業を紹介された際、ホームページなどをどの程度ご覧になっている印象ですか?
企業の公式ホームページはもちろんですが、最近は企業の口コミサイトをチェックされる方が非常に多いですね。「口コミサイトにマイナスな情報があったので、今回は見送ります」といったお話も増えています。
はい。ただ、ネットの情報は偏りがあることも皆さん理解されているようで、それよりも業界内のリアルな口コミ、例えば職場の先輩や同僚からの情報を重視する傾向もあります。ニッチな業界なので、そういったネットワークは意外と強いですね。
リアルな口コミで悪評が立たないようにするしかない、ということですね。他に、候補者の印象に影響するものはありますか?
人事担当者の方の印象は大きいですね。面接時の丁寧な対応や、若手の方が窓口になっていると、求職者からの評判が良いケースが多いです。新卒採用だけでなく、中途採用でも同様のことが言えると思います。
企業の「顔」となる人事の方の印象は、そのまま企業のイメージに繋がりますからね。企業のホームページを見て、入社意欲が高まったという話は聞きますか?
それは非常に多いです。例えば、社員の方の1日の仕事の流れやキャリアパスが具体的に紹介されていると、候補者の方も仕事のイメージが掴みやすく、私たちも「詳しくはホームページのこちらをご覧ください」とスムーズにご案内できます。
情報が充実していても、ミスマッチは起こり得ます。それを減らすために、企業はどのような情報を発信すべきでしょうか?
離職率や有給取得率といった具体的な数字は、皆さん気にされている印象です。特に離職率を正直に開示している企業は、かえって信頼を得ているように感じます。「離職率0%」と書かれていると、逆に疑念を抱かれることもありますから。
求人広告は文字数制限などもあり、全てを伝えきれません。企業の魅力や文化を伝える上で、ホームページなどの重要性をどう感じますか?
求人広告だけでは限界があるので、企業のホームページの役割は非常に大きいです。求人広告は企業側からのアピールが中心ですが、ホームページでは社員の方の「生の声」や、職種ごとの1日の流れ、キャリアプランなどを具体的に紹介することで、求職者により深く響くと思います。
おっしゃる通りです。視覚情報は非常に重要で、サイト上に動画や写真を多く掲載したり、SNSと連携したりすることも有効です。特に今は転職が当たり前の時代なので、入社後のミスマッチを防ぐためにも、良い面だけでなく、企業のありのままの姿をできるだけ開示することが大切だと考えています。
「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」という考え方ですね。良い面だけでなく、少しネガティブな情報も正直に伝えるという。求人広告でそういったことは意識されていますか?
はい。例えば、残業時間が長い場合、以前はあえて記載しないこともありましたが、今は正直に伝えた上で、「その分、年収は業界水準より高い」とか「メリハリをつけて働ける」といった形で、ポジティブな側面と合わせて提示するようにしています。求職者の方に、納得して選んでいただくための工夫です。
お二人とも、企業としては採用ブランディングに積極的に取り組んだ方が良い、というご意見ですね。
そうですね。企業のリアルな情報を発信することは、ミスマッチを防ぎ、結果的に良い採用に繋がると思います。
はい、長期的な視点で見ても、採用ブランディングは不可欠だと考えます。
ありがとうございました。採用ブランディングの重要性がよく分かりました。
まとめ
本日は「採用コスト」「採用チャネル」「難しい案件への対応」「採用ブランディング」という4つのテーマについてご意見をいただきました。最後に、本日の議論全体を振り返って、特に重要だと感じられた点を一言ずついただけますでしょうか。まずはコーディネーターのHさん、お願いします。
はい。各テーマに共通して感じたのは、企業様と私たち支援側、そして求職者様との間の「情報共有の透明性」と「相互理解の深化」が、あらゆる採用課題を解決する上での鍵になるということです。
特に、採用が難しい案件や採用ブランディングにおいては、企業様がどのような情報を、どのように発信していくか、そして私たちがそれをどう候補者様に繋いでいくかが問われます。
人材紹介の立場としては、表面的な条件だけでなく、企業の「想い」や働く「リアル」を的確に伝え、ミスマッチのない、双方にとって幸せなマッチングを追求し続けることの重要性を改めて感じました。
私からは、「ターゲット設定の重要性」と「正直な情報発信」という2点を挙げたいと思います。
採用コストを最適化するにも、適切なチャネルを選ぶにも、難しい案件に対応するにも、まず「誰に届けたいのか」というターゲットが明確でなければ、効果的な打ち手は打てません。
そして、採用ブランディングの観点からも、企業の魅力だけでなく、時には厳しさも含めた正直な情報を、求職者の視点に立って分かりやすく伝えることが、結果的にミスマッチを防ぎ、企業の信頼に繋がるのだと再認識しました。
求人原稿は、その最前線にあるという自覚を持って、今後も取り組んでいきたいです。
お二人のお話から、採用活動は単に「人を探す」という作業ではなく、企業と人とを繋ぐコミュニケーションそのものであり、そこには戦略と誠実さが不可欠であるということが、改めて浮き彫りになったように思います。
今回の座談会では、採用コストの考え方から具体的なチャネル選定、難易度の高い案件への対処法、そして長期的な視点での採用ブランディングの必要性まで、多岐にわたる実践的なお話が伺えました。
これらの情報が、日々採用活動に取り組まれている人事・採用担当者の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
ビルメン人材の離職理由や転職に求めるもの、給与事情などについて意見交換した第一弾の対談記事も併せてご確認ください。