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2025.06.30最終更新日2025.06.30

中小企業が抱える人材採用の課題とは?原因と具体的な解決策を徹底解説

中小企業が抱える人材採用の課題とは?原因と具体的な解決策を徹底解説

「求人を出してもなかなか応募が集まらない…」
「せっかく採用しても、すぐに辞めてしまう…」
このような悩みを抱えている中小企業の採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

人手不足が深刻化するなか、特に中小企業では大手企業との競争や、採用リソースの不足など、さまざまな要因が採用活動を難しくしています。

本記事では、中小企業が直面しがちな人材採用の課題を整理し、その原因を深掘りしながら、今すぐ取り組める具体的な解決策をわかりやすく解説します。採用活動をもっとスムーズに進めたい、自社に合った人材と出会いたいと考えている採用担当者の方に向けた実践的なヒントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

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目次

中小企業の採用活動の現状

中小企業の採用活動は、いくつもの制約のなかで行われています。大企業と比べて知名度が低く、予算や人材リソースも限られているなかで、同じ土俵で人材を獲得する難しさに直面している企業は少なくありません。

例えば、「そもそも会社名を知られていない」「採用専任者がおらず他業務と兼務している」「求人媒体にお金をかけられない」といった悩みは、多くの担当者が抱える共通の課題ではないでしょうか。

こうした制約がある以上、採用のスピードや量で大手企業に後れを取ってしまうのはある意味で当然です。
その一方で、中小企業だからこそ打てる手もあります。近年ではSNSやダイレクトリクルーティングの活用、候補者との中長期的な関係構築など、工夫次第で大手企業以上に採用を成功させている企業も増えています。

まずは自社の立ち位置を客観的に把握するため、中小企業の定義と採用市場の動向について確認しておきましょう。

そもそも中小企業の定義とは?

日本にある約337.5万の企業のうち、99.7%にあたる336.5万社が中小企業であることをご存知でしょうか。これほど身近な存在でありながら、「中小企業の明確な定義は?」と聞かれると、曖昧な方も多いかもしれません。

中小企業基本法では、業種ごとに以下のように基準が定められています。

業種 資本金or出資額 常時使用する従業員数
製造業・建設業など 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下

このように、厳密には資本金や従業員数に応じて中小企業とされるかどうかが決まります
しかし、実際にはこれらの定義に収まらなくても、中小企業的な立場で事業を営み、採用市場では同じような課題を抱えている企業が多いのが実情です。

中小企業の採用動向

中小企業の採用活動は、年々厳しさを増しています。
東京商工会議所の調査によると、採用状況について「深刻」または「非常に深刻」と答えた中小企業は、64.1%と半数以上に上ることがわかっています。

また、中小企業庁のデータによると、約半数の中小企業が「もっとも優先したい課題」として人材の確保を挙げており、それだけ人手不足が深刻であることがわかります。

なぜ、これほどまでに中小企業の採用は難しいのでしょうか。
リクルートワークス研究所の調査(大卒求人倍率調査2025年卒)によると、従業員数5,000人以上の大企業の求人倍率が0.34倍なのに対し、300人未満の中小企業は6.50倍という非常に高い数値になっています。この「求人倍率の高さ」は、求職者1人に対して6社以上の求人があることを意味します。つまり、中小企業は「1人の優秀な人材を多くの企業で奪い合う」という、極めて競争の激しい環境で採用活動を行わなければならないのです。

加えて、中小企業側も採用活動に多くの時間や費用をかける余裕がないことから、求人募集を出しても待つしかない「受け身の姿勢」になりがちな点も課題といえます。

このような状況を改善するには、各企業が自社の採用課題を理解し、課題を解決するための対策を講じることが不可欠です。

【原因別】中小企業でよくある6つの採用課題と解決策

中小企業の採用がうまくいかない背景には、単なる知名度の低さやタイミングの問題だけではなく、「応募者数が集まらない」「内定後に辞退されてしまう」など、より根本的で構造的な課題が存在しています。
その一方で、「自社の魅力をうまく伝えられていない」「求職者との接点がそもそも少ない」「入社後のフォロー体制が不十分」など、企業側の準備不足や情報発信の弱さが原因となっているケースも少なくありません。
ここからは、中小企業が直面しがちな6つの採用課題を取り上げ、それぞれの原因をひも解き、具体的な解決策を紹介していきます。

企業自体の知名度が低く、母集団形成ができない

多くの中小企業が採用活動で最初にぶつかる壁が、「そもそも企業名が知られていない」という知名度の問題です。求職者の多くは、まず知っている企業から応募先を検討するため、知名度が低いと選択肢にすら入らないケースが少なくありません。

この課題を乗り越えるには、どうすればよいのでしょうか。まずはその原因を深掘りし、具体的な対策を見ていきましょう。ここからは、そのための具体的な対策手段を3つ紹介します。

原因:大手企業に比べ広告予算やブランド力が不足しがち

知名度で差がつく最大の原因は、やはり採用にかけられる予算とブランド力の違いです。
大手企業のように潤沢な広告予算を投じて求人メディアでの露出を増やしたり、大規模な合同説明会で大きなブースを構えたりすることは、中小企業にとって現実的ではありません。その結果、求職者へのリーチ力で劣ってしまい、せっかく求人メディアに掲載しても多くの情報の中に埋もれてしまいます。
また、求人が目に留まったとしても、「何の会社かわからない」「どんな人が働いているのか見えない」という情報の不足が、応募へのハードルをさらに高くします。結果として、応募の絶対数である「母集団」を十分に形成できないという事態に陥ってしまうのです。

対策1:採用サイトやオウンドメディアで情報発信基地を作る

この課題を解決する第一歩は、求人媒体の情報に頼る「待ち」の姿勢から脱却し、自社の魅力を能動的に発信する「基地」を持つことです。その最も有効な手段が、自社専用の採用サイトオウンドメディアの構築です。

採用サイトがあれば、求人媒体のフォーマットでは伝えきれない、以下のような多角的な情報を自由に発信できます。

  • 社員インタビュー: どんな人が、どんな想いで働いているのか
  • 1日の仕事の流れ: 入社後の働き方を具体的にイメージさせる
  • オフィスツアー: 働く環境や雰囲気を伝える写真・動画
  • プロジェクト実績: 事業の面白さや社会への貢献度をアピール

こうした情報発信の「基地」は、求職者が企業を深く知るための受け皿となり、応募を力強く後押しします。

対策2:SNSを活用し"中の人"が見えるリアルな情報を発信する

採用サイトとあわせて活用したいのが、SNSによる継続的な情報発信です。SNSは低コストで始められ、知名度がゼロの状態からでもファンを増やせる、中小企業にとって非常に心強いツールです。

重要なのは、綺麗な情報だけを並べるのではなく、中の人が見えるリアルな情報を届けることです。

  • Instagram 社内イベントやランチの様子など、写真や動画で社風を伝える
  • X(旧Twitter): 業界ニュースへの見解や社員の日常など、リアルタイムな情報を発信する
  • note 創業ストーリーや社員の入社経緯など、深い想いを文章で伝える

求職者が本当に知りたいのは、飾らない「普段の姿」です。日々の発信を通じて自社らしい価値観や雰囲気を伝え、共感を呼ぶことができれば、それは知名度を上回る強力な魅力となり、採用成功へとつながっていきます。

採用にかけられる予算が限られている

知名度と並んで中小企業の採用を難しくするのが、「予算の制約」です。採用費が限られる中で、大手企業のように大規模な広告出稿や採用イベントを行うのは現実的ではありません。
しかし、予算が少ないからと諦める必要はありません。コストを抑えながらも、自社に合った人材に的確にアプローチする工夫こそ、中小企業の採用成功の鍵となります。

原因:事業運営が優先され、採用コストを十分に確保できない

中小企業では、まず目の前の事業運営や設備投資に資金を回す必要があり、将来への投資である採用活動の優先順位が後回しにされがちです。
その結果、高額な求人広告費や人材紹介サービスの手数料を十分に確保できず、採用手法の選択肢が狭まってしまいます。「求人広告を出しても応募が来なければ費用が無駄になる」というリスクを恐れ、採用活動そのものに消極的になってしまうケースも少なくありません。

対策1:費用対効果の高い採用手法に切り替える

限られた予算を最大限に活かすには、「費用対効果」を意識した採用手法の選択が不可欠です。

成果報酬型の求人媒体
求人を掲載するだけでは費用が発生せず、応募や採用といった成果が出た時点で初めて費用が発生する仕組みです。代表的なサービスにクリック課金型のIndeedや求人ボックスなどがあります。無駄なコストをかけずに採用活動を始められるため、リスクを最小限に抑えたい企業にとって最適な選択肢と言えます。
ダイレクトリクルーティング
企業側から「会いたい」と思う人材に直接アプローチする「攻め」の採用手法です。求人広告で待ち続けるよりも、自社の求めるスキルや経験を持つ人材に的を絞ってアプローチできるため、ミスマッチが少なく、結果的に採用コストを抑えられる可能性があります。

対策2:ハローワークや大学のキャリアセンターを有効活用する

コストをかけずに採用活動を行うなら、公的機関や学校との連携は欠かせません。

ハローワーク(公共職業安定所)
無料で求人を掲載できる、最も基本的な採用手段です。地域に根差した人材の採用に強く、助成金の相談窓口も兼ねているため、積極的に活用しましょう。
大学・専門学校のキャリアセンター
新卒や第二新卒の採用を考えている場合に有効です。求人票の掲示だけでなく、学内説明会の開催などを通じて、大学側と良好な関係を築くことで、優秀な学生を紹介してもらえる可能性も高まります。

対策3:国の助成金を活用してコスト負担を軽減する

採用活動で活用できる国の助成金制度は、予算に限りのある中小企業にとって非常に心強い味方です。条件を満たせば、返済不要の資金で採用コストを大幅に軽減できます。
以下に代表的な助成金を紹介します。自社が対象となる制度がないか、ぜひ確認してみてください。

制度名 対象となる企業・条件 支給額の目安
トライアル雇用助成金 雇用経験が乏しい求職者を試用的に雇用する企業 最大月額4万円(最長3ヵ月)
特定求職者雇用開発助成金 高年齢者・障碍者などの就職困難者を継続雇用した場合 最大240万円/人
キャリアアップ助成金 非正規社員を正社員に転換した企業 最大57万円/人
地域雇用開発助成金 地域雇用の促進を目的に事業所を設置した企業 最大600万円(条件による)

※制度ごとに要件や申請方法が異なるため、厚生労働省の公式情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めると安心です。

対策4:低コストで質の高い採用が期待できる「リファラル採用」を導入する

コストを抑えつつ、採用の「質」も高めたいなら、リファラル採用の導入が効果的です。リファラル採用とは、自社の社員に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。

一般的な人材紹介サービスでは採用1名あたり年収の30%前後(例:年収400万円なら120万円)の費用がかかりますが、リファラル採用なら紹介者へのインセンティブ(数万円~数十万円程度)で済むため、採用コストを1/10以下に抑えることも可能です。

さらに、社員を通じて社風や仕事内容のリアルな情報が伝わるため、入社後のミスマッチが起こりにくく、定着率が高いという大きなメリットもあります。制度を導入する際は、紹介してくれた社員が正当に評価される仕組みを整えることが成功の鍵です。

求人を出しても応募が集まらない

中小企業の採用課題として多く見られるのが「求人を出しても応募が来ない」というもので多くの時間とコストをかけて求人を出したにもかかわらず、「応募が全く来ない」「数件しか応募がない」という状況は、採用担当者にとって最も頭の痛い課題の一つです。
この「応募が集まらない」という課題は、単に運やタイミングの問題ではありません。その裏には、必ず明確な原因が隠されています。

原因:求人票が魅力的でない、またはターゲットに届いていない

応募が集まらない原因は、大きく2つに集約されます。

  1. 伝え方の問題: 求人票の内容に魅力がなく、仕事の面白さや働くメリットが求職者に「伝わっていない」ケース。
  2. 届け方の問題: 採用したいターゲット層が見ていない媒体で募集しており、情報が「届いていない」ケース。

つまり、「魅力的な求人票」を作成し、「適切な場所」で発信するという、採用活動の基本ができていないケースがほとんどです。どれだけ良い会社であっても、その魅力が伝わらなければ、届かなければ、応募につながることはありません。

対策1:採用ターゲットを明確にし、ターゲットに響く求人票に刷新する

応募数を増やすための第一歩は、「誰に」来てほしいのか、採用ターゲットを明確にすることです。ターゲットが曖昧なままでは、誰の心にも響かない当たり障りのない求人票になってしまいます。
ターゲットを定めた上で、その人物が「この会社で働いてみたい」と感じるよう、求人票を徹底的にブラッシュアップしましょう。

キャッチーな職務内容
「営業職」ではなく「お客様の課題を解決し、事業成長を支援するパートナー」など、仕事の価値が伝わる言葉を選ぶ。
具体的な労働条件
「残業月平均10時間」「有給消化率85%」「リモートワーク週3日可能」など、数字で具体的に示す。
働く人の顔を見せる
社員の写真や簡単なインタビューを掲載し、「誰と働くか」をイメージさせる。
入社後の未来を提示
「未経験から3年でマネージャーに」「資格取得支援制度あり」など、キャリアパスや成長環境をアピールする。

テンプレートを埋めるだけの作業ではなく、ターゲットへの「手紙」を書くような意識で求人票を作成することが重要です。

対策2:自社に合った求人媒体・採用手法を見直す

魅力的な求人票が完成したら、次はその情報を「どこで」届けるかを考えます。使用している求人媒体が、設定したターゲット層とずれているケースは少なくありません。
採用したい人物像に合わせて、媒体や手法を戦略的に見直しましょう。

20代若手・未経験者
Re就活、マイナビ転職、Wantedly、dodaキャンパス、SNS
30代以降の経験者
doda、dodaダイレクト、ビズリーチ、ミイダス
地域密着型人材
イーアイデム、ハローワーク、地域の求人情報誌、ジモティー
エンジニアなど専門職
type、Green、ビルメン転職ナビ、専門職向けイベント

一つの媒体に固執せず、「Indeedで広く告知し、自社の採用サイトで魅力を伝える」「SNSで社風を発信し、リファラル採用につなげる」など、複数のチャネルを組み合わせることで、応募の機会は格段に広がります。

対策3:社員インタビューや受賞歴など、客観的な魅力で差別化する

給与や福利厚生といった条件面で大手企業と勝負するのは簡単ではありません。そこで重要になるのが、「客観的な事実」に基づいた魅力で他社と差別化することです。

採用担当者が「うちは良い会社です」と語るよりも、第三者の視点や客観的なデータを示す方が、何倍も説得力が増します。

社員の声(インタビュー記事、座談会)
「なぜこの会社を選んだのか」「仕事のやりがいは何か」といった生の声は、最高のPRコンテンツです。
受賞歴・認定歴
「ベストベンチャー100」「健康経営優良法人」「地域未来牽引企業」などの認定や第三者からの評価は、企業の信頼性を高める強力な武器になります。
お客様の声
顧客からの感謝の言葉は、自社のサービスや製品が社会にどう貢献しているかを伝える客観的な証拠です。

これらの客観的な情報を求人票や採用サイトに盛り込むことで、求職者は「この会社は信頼できる」「ここで働くことに価値がある」と感じ、応募への最後のひと押しとなります。

内定を出しても辞退されてしまう

多くの選考ステップを経て、ようやく「この人だ」という人材に内定を出したにもかかわらず、辞退されてしまう――。これは、時間もコストもかけた採用活動の最終局面における、最も避けたい事態です。
特に複数の企業から内定を得ることが一般的な現代の就職・転職活動において、中小企業は大手企業との比較で不利になりやすく、内定辞退率の高さが深刻な課題となりがちです。

原因:候補者の入社意欲を高めるフォローが不足している

内定辞退が起こる根本的な原因は、内定をゴールだと考え、候補者の入社意欲を高めるための継続的なフォローを怠ってしまうことにあります。

候補者は内定後、「本当にこの会社で良いのだろうか」という不安(内定ブルー)を抱えながら、他社と比較検討しています。このタイミングで、

  • 企業との接点が途絶え、会社の雰囲気が見えなくなる
  • 選考中に感じた小さな疑問や不安が解消されないまま放置される
  • より条件の良い他社から魅力的なオファーを受ける

といったことがあると、候補者の気持ちは簡単に離れてしまいます。選考プロセスから内定後に至るまで、一貫して「この会社で働きたい」という気持ちを醸成し続ける姿勢がなければ、最後の最後で選ばれる企業にはなれません。

対策1:選考体験(CX)を向上させ、ファンになってもらう

内定辞退を防ぐ最初のステップは、選考プロセスそのものを「候補者が企業のファンになる場」へと変えることです。これを「選考体験(Candidate Experience, CX)」の向上と呼びます。
選考は企業が候補者を見極める場であると同時に、候補者が企業を見極める場でもあります。一つひとつの接点で「この会社は自分を大切にしてくれている」と感じてもらうことが、入社意欲の向上に直結します。

迅速で丁寧なコミュニケーション
応募後の連絡や面接日程の調整などを迅速に行う。事務的な文面ではなく、個別に配慮した言葉を添える。
質の高い面接
候補者の話を真摯に傾聴し、一方的な質問攻めにしない。面接官自身が会社の魅力を熱意をもって語る。
現場社員との接点
面接だけでなく、現場で働く社員とカジュアルに話す機会を設け、入社後のイメージを具体化させる。

こうした丁寧な対応の積み重ねが信頼関係を生み、「この人たちと一緒に働きたい」という強い動機付けとなります。

対策2:内定者面談や懇親会など、内定後のフォローを充実させる

内定を出した後こそ、関係構築の「本番」です。内定者が抱える不安を解消し、入社への期待感を高めるためのフォローを手厚く行いましょう。
内定から入社までの期間を「空白期間」にせず、「助走期間」と位置づけ、継続的なコミュニケーションを取ることが重要です。

内定者面談(オファー面談)
労働条件の確認だけでなく、内定者が抱える不安や疑問を解消するための1on1を実施する。配属予定部署の上長が同席するのも効果的。
社員との懇親会・座談会
役員や現場社員と食事やオンラインで交流する機会を設け、社内の雰囲気を肌で感じてもらう。
定期的な情報提供
月に一度、社内報やプロジェクトの進捗などを共有し、「もう仲間の一員である」という意識を持ってもらう。

こうした地道なフォローを通じて、内定者が「この会社を選んでよかった」と心から思える状態を作り出すことが、内定辞退を防ぐ最も確実な方法です。

入社後のミスマッチ・早期離職が多い

コストと時間をかけて採用した人材が、入社後すぐに辞めてしまう――。これは、採用コストが無駄になるだけでなく、現場の士気低下や新たな採用活動の発生など、企業にとって計り知れない損失をもたらします。
特に新入社員の受け入れ体制が整っていないことが多い中小企業では、この「早期離職」が慢性的な課題となっているケースも少なくありません。採用活動は、入社後の定着まで含めて設計することが不可欠です。

原因:選考段階で企業のリアルな情報を伝えきれていない

早期離職の最大の原因は、「入社前の期待と入社後の現実のギャップ(リアリティ・ショック)」です。
採用活動において、自社の魅力をアピールしようとするあまり、良い面ばかりを伝えてしまうのはよくあることです。しかし、仕事の厳しい側面や泥臭い部分、社内の課題などを伝えないまま入社すると、新入社員は「こんなはずではなかった」と強いギャップを感じ、早期離職につながってしまいます。

また、入社後のフォロー体制が不十分で、新入社員が「放置されている」「誰に相談していいかわからない」と孤立感を深めてしまうことも、離職を引き起こす大きな要因です。

対策1:RJP理論に基づき、仕事の良い面も厳しい面も正直に伝える

入社後のギャップを未然に防ぐために有効なのが、RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)理論の導入です。
これは、採用選考の段階で、あえて仕事の良い面だけでなく、厳しい面や大変な面も包み隠さず正直に伝える手法です。

伝えるべきポジティブな情報例 伝えるべきネガティブな情報例
・仕事のやりがい、達成感
・会社の成長性、将来性
・良好な人間関係、チームワーク
・業務の地道さ、単調さ
・繁忙期の残業、休日出勤の可能性
・求められるスキルの高さ、学習意欲

もちろん、ただネガティブな情報を伝えるだけでは、応募をためらわせてしまいます。大切なのは、「繁忙期はチーム全員で協力して乗り越える文化がある」「地道なデータ入力が、後の大きな成果につながる」といったように、ネガティブな事実と、それを乗り越えるためのサポート体制や仕事の意義をセットで伝えることです。
事前に覚悟を持って入社してもらうことで、入社後のリアリティ・ショックを最小限に抑え、結果的に定着率の向上につながります。

対策2:入社後の定着・活躍を支援する「オンボーディング」を整備する

入社後の「放置」による孤立を防ぎ、新入社員の早期活躍を支援する仕組みが「オンボーディング」です。
オンボーディングとは、新入社員が船(組織)に乗り込み、航海(業務)に慣れるまでを組織全体でサポートする一連のプロセスのこと。特に教育体制が属人的になりがちな中小企業こそ、意識的に導入すべき施策です。

メンター制度の導入
年齢の近い先輩社員が相談役となり、業務だけでなく精神的なサポートも行う。
1on1ミーティングの定期的実施
上司が週に1回、もしくは定期的に30分程度の面談を行い、悩み・不安をヒアリングする。
歓迎ランチ会の開催
チームメンバーや他部署の社員と交流する機会を設け、人間関係の構築を支援する。
入社後3ヶ月間の目標設定と振り返り
明確なゴールを示すことで、成長実感を得やすくし、モチベーションを維持する。

オンボーディングは単なる「研修」ではありません。新入社員が安心して組織に溶け込み、パフォーマンスを発揮できるようになるまでの「計画的なサポートプログラム」と捉え、全社で取り組むことが重要です。

採用担当者のリソース・ノウハウが足りない

これまで様々な採用課題と対策を紹介してきましたが、「そもそも、それを実行する人手も時間も知識もない」というのが、多くの中小企業の現実ではないでしょうか。
採用市場が複雑化・高度化する中で、他の業務と兼務しながら最新の採用トレンドを追い、戦略を立て、実務をこなすのは至難の業です。「なんとなく」の採用活動を続けていては、時間とコストを浪費するだけで成果が出ない、という悪循環に陥ってしまいます。

原因:人事担当が他の業務と兼任しているケースが多い

中小企業では、専任の採用担当者を置く余裕がなく、総務や労務、経理担当者が人事を兼務しているケースがほとんどです。
日々の定型業務に追われる中で、どうしても採用活動は後回しになりがち。結果として、応募者への連絡が遅れたり、面接の日程調整に手間取ったりと、採用の「実行力(リソース)」が不足してしまいます。
また、兼務担当者は採用の専門家ではないため、効果的な求人媒体の選定や、候補者の心に響くスカウト文の作成、採用戦略の立案といった「専門知識(ノウハウ)」も不足しがちです。この「リソース」と「ノウハウ」のダブルの不足が、採用活動全体の停滞を招く根本原因となっています。

対策1:採用業務を外部に委託する「RPO(採用代行)」を利用する

「とにかく人手が足りない」「採用の実務から解放されたい」というリソース不足の課題を解決するのが、RPO(Recruitment Process Outsourcing:採用代行)です。

RPOは、採用活動における煩雑な実務を、プロに丸ごと、あるいは部分的に委託できるサービスです。まるで社内に専任の採用アシスタントがいるかのように、ノンコア業務を巻き取ってもらえます。

RPOで委託できる業務例>

  • 求人票の作成・出稿管理
  • 応募者対応・問い合わせ対応
  • スカウトメールの送信代行
  • 面接日程の調整
  • 採用データの集計・管理

採用担当者は、候補者の見極めや面接といった「コア業務」に集中できるため、採用活動全体のスピードと質が向上します。繁忙期だけの短期契約が可能なサービスも多く、固定費をかけずに実行部隊を確保できる、中小企業にとって非常に心強い味方です。

対策2:外部の専門家から助言を得る「採用コンサルティング」を依頼する

「何から手をつけていいか分からない」「採用がうまくいかない根本原因を解決したい」というノウハウ不足の課題を解決するのが、採用コンサルティングです。

採用コンサルティングは、実務を代行するのではなく、採用の「戦略立案」や「仕組み作り」を支援してくれるサービスです。外部の専門家が客観的な視点で企業の課題を分析し、成果の出る採用体制を一緒に構築してくれます。

<採用コンサルティングの支援内容例>

  • 採用戦略・採用計画の立案
  • 採用ペルソナ(ターゲット人物像)の設計
  • 自社に合った採用手法・求人媒体の選定
  • 魅力が伝わる求人票の作り方や面接手法のトレーニング
  • 採用担当者の育成支援

社内に知見がなくても、プロの力を借りることで、成功への最短ルートを歩むことができます。採用活動を根本から見直し、持続可能な採用体制を築きたい場合に最適な選択肢です。

まとめ:中小企業だからこそできる採用戦略がある

中小企業の採用活動は、知名度や予算、リソースの壁に阻まれ、計画通りに進まないことも多いでしょう。

しかし、本記事で解説したように、一つひとつの課題には必ず打ち手が存在します。

大手企業にはない、経営陣との距離の近さ、意思決定のスピード、社員一人ひとりの裁量の大きさ――。これらは、求職者にとって何物にも代えがたい魅力となり得ます。

採用成功の鍵は、こうした自社ならではの魅力を発見し、それを本当に求めている人に、熱意をもって届けることです。

重要なのは、完璧な体制が整うのを待つのではなく、今できることから始めること。

  • まずは、求人票のキャッチコピーを一つ見直してみる。
  • 次に、SNSで社内のランチの様子を投稿してみる。

そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな成果となり、未来の仲間との出会いにつながっていくはずです。

貴社の採用課題、プロに相談しませんか?

本記事で解説した課題に対し「何から手をつければいいかわからない」とお悩みではありませんか?内藤一水社では、多くの中小企業の採用を成功に導いてきたノウハウを活かし、貴社の状況に合わせた採用戦略の立案から実務代行までをご提案します。

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