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採用事情
近年、労働人口の減少に伴う人材確保の必要性が一段と増す中、社員の定着について課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
社員は、4つの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中の一つであり、企業の成長にとって欠かせないファクターです。社員定着率を上げることで企業が得られるメリットは計り知れません。
本記事では、離職に至る主な原因や離職対策を行うべき理由、効果的な離職防止の取り組み・ポイントについて解説します。
目次
出典:厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」
厚生労働省の雇用動向調査によると、日本の離職率はこの15年、15%前後という高い水準で推移しています。これは5~6人に1人が年間で離職している計算となり、企業の人材流出は深刻な課題と言えるでしょう。
2020年には新型コロナウイルス感染症の影響で離職超過となりましたが、その後入職率は回復傾向にあります。2023年には入職率・離職率ともにコロナ禍前の水準に近づき、雇用情勢は活発な状況にあると言えます。
2022年以降、企業の積極的な採用活動に伴い入職率が上昇する中、並行して離職率も上がり、今後も高い水準を維持することが予想されます。人事担当者は離職率の高止まりを深刻に捉え、経済情勢の変化にも注意を払いながら効果的な離職防止策を継続的に実行・改善していく必要があります。
まずは、社員がなぜ離職に至ってしまうかを考えてみましょう。主として以下のような理由が挙げられます。
それでは、離職原因について一つずつ解説していきます。
近年、従業員の価値観は多様化し、企業に求めるものも変化しています。しかし、労働条件や働く環境への不満は、依然として多くの従業員が抱える悩みであり、離職へと繋がる大きな要因となっています。
では、具体的にどのような不満が離職の引き金となるのでしょうか。
上司や同僚との関係がうまく築けない職場では、社員は孤立感やストレスを抱えやすくなります。特にコミュニケーション不足が原因で業務の進め方が不明確になったり、不公平な評価を受けていると感じたりすると、仕事への意欲が低下する可能性があります。
また、ハラスメントや職場の風通しの悪さも深刻な問題です。上司や同僚からの圧力、不適切な指導、陰口・派閥争いなどが発生すると、社員は精神的負担を感じ、退職を選択することにつながります。
昇進・昇格の基準が不透明で、将来のキャリアパスが見えにくい職場では、社員が将来に対して不安を抱きやすくなります。また、スキルを活かせる機会が限られている、成長を実感できる挑戦の場が少ないといった状況では、仕事への意欲が低下しやすくなります。
特に、意欲的な社員ほど「このまま働き続けても成長できるのか」「市場価値を高められるのか」といった疑問を抱き、転職を考えるきっかけになりやすいです。
評価基準が不明確な職場では、社員が「どのような努力が正当に評価されるのか」が分からず、不信感を抱きやすくなります。成果が適切に認められない、不公平な評価が行われていると感じると、仕事への意欲が低下し離職につながる要因になります。
また、評価結果に対するフィードバックが不十分な場合、社員は自身の強みや改善点を把握できず、成長の機会を失ってしまいます。適切なフィードバックがないと「会社が自分の成長に関心を持っていない」と感じることもあります。
さらに、研修や教育制度の不足も離職の大きな要因です。スキルアップの機会が限られていると、社員は将来のキャリアに不安を感じ「この会社では成長できない」と判断することがあります。特に、成長意欲の高い若手社員ほど、キャリアアップを求めて転職を考える傾向が強まります。
社員が企業の将来に不安を感じる要因は多岐にわたります。特に、以下のような状況が続くと、「この会社にいて大丈夫だろうか」という疑念を抱き、転職を考えるきっかけになりやすくなります。
これらの要因が複数重なると、社員は会社の将来に不安を抱え、「より安定した環境で働きたい」と考えるようになります。
企業内部の要因だけではなく、外的要因によって、離職を検討する社員もいるでしょう。
例えば、市場価値の高いスキルを持つ社員は、他社からより良い条件で引き抜かれることがあります。人材の流動化が進む日本では、「今の職場より年収・環境が良い会社があるなら転職したい」と考える人が増えており、特にその傾向は若年層に顕著です。
その他にも、ライフイベントの影響(結婚・出産・介護・配偶者の転勤など)を受けることもあります。育児・介護と仕事の両立が難しい場合、家庭優先を考えて転職や退職を決断する社員もいるでしょう。
次に離職理由が理解できたら、次に離職防止対策が必要です。離職防止対策を行うべき理由について、以下の4点を解説します。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
優秀な人材の流出は企業にとって大きな損失になります。社員一人ひとりには、研修やOJTなどで育成した際の教育コストがかかっています。特に専門職や管理職の離職の場合、代わりの人材を探すことが難しく、企業にとって大きなダメージとなり得ます。一度獲得した優秀な人材は定着させることが重要です。
離職者が出てしまうと、その穴埋めには時間がかかり、既存社員の業務量負担が増大することになります。特に、属人化した業務を担当する社員が退職してしまうと、引き継ぎが困難になり、既存社員へ重い負担がかかります。
加えて、退職者が増えると、「自分も退職した方がいいのか?」「この企業に残っていていいのか」と考える人が増え、負の連鎖が起きることもあります。これらが複合的な要因となり、チームや部門、ひいては企業全体のパフォーマンス低下を招く可能性があります。
新たな人材を採用するには多くの時間とコストがかかります。
例えば、採用面では面接・選考にかかる時間や求人広告費用・人材紹介会社の手数料など、教育面では、人材育成の際に研修を行う時間やトレーニング費用などがかかります。
これらの時間とコストは、既存社員の定着率を高めることでカットすることが可能です。
特に近年、採用難が深刻化している状況下では、一人採用するだけでも以前より多くのコストと時間を要する傾向にあります。離職が頻繁に発生すれば、その都度高額な採用コストが発生するだけでなく、採用活動に多くの時間と労力を費やすことになり、人事担当者が本来注力すべき業務がおろそかになる可能性も否めません。
離職者が増えてしまうと、「離職率の高い企業=働きにくい企業」というイメージがついてしまいます。企業口コミサイト(OpenWork、転職会議、Googleなど)にネガティブな評価が増えると、採用競争力の低下につながります。
優秀な人材は、より働きやすく、成長できる環境を求めて企業を選ぶため、離職率が高い企業は人材獲得で競争力を失い、人材不足に拍車がかかるという悪循環に陥る可能性も考えられます。
ここからは、具体的な離職防止対策を解説します。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
離職を防ぐためには採用段階でのミスマッチを最小限に抑えることが重要です。応募者のスキルや価値観と企業の求める人材像を適切に照らし合わせることで、長期的に活躍できる人材かどうかを見極めましょう。
まずはミスマッチを防ぐために、新たな採用を始める前に「採用要件の定義」を具体化し、必要スキル・経験・価値観を整理します。すでに会社で活躍している社員の共通点を分析し、適性を可視化するのも良いでしょう。
選考プロセスでは、応募者の適性や価値観を多角的に評価し、入社後のギャップを防ぐことが重要です。以下の方法を取り入れると効果的です。
ただし、選考要素を過剰に増やすと、応募者と採用担当者双方の負担が増し、かえって辞退率が高まる可能性があるため、適切なバランスを考慮することが必要です。
入社までの期間は、内定辞退が起きないように、内定者のフォローを徹底します。内定者懇親会を催したり、メンター制度を導入したりするなど、内定者が気軽に相談できる環境を作りましょう。入社まで期間が空いてしまう場合は、定期的に連絡をしたり、面談をしたりするなど、内定者とつながりを保てるようにします。
企業のビジョン・カルチャーを明確にすることで、「会社に合う人材」を採用できます。
企業理念やミッション、企業文化や働き方を発信し、自社の価値観に共感し、長く活躍できる人材を採用しましょう。その際、SNSや採用動画、社員インタビューを活用し、リアルな職場の雰囲気を伝えるのも有効です。
また、採用ページや求人情報では、曖昧な表現を避け、具体的な業務内容・キャリアパスを記載します。実際の社員の声・入社後の成長事例を掲載し、リアルな情報を提供すると良いでしょう。
入社後の早期対策としては、オンボーディングプログラムの充実が挙げられます。オンボーディングとは、人材の即戦力化や組織への定着を目指し、会社の方針や文化、チームの雰囲気を理解してもらい、自身の役割を明確に認識し、安心して業務を進められるよう、組織全体でサポートする取り組みです。
また、オンボーディングでは、人材を「育てる」視点を大切にし、入社後の不安を解消し、組織への帰属意識を高めることで、新入社員のポテンシャルを最大限に引き出します。そうすることで、早期離職を防ぎ、長期的な活躍につなげることが可能となります。
働きやすい職場環境を整えることは、社員の満足度向上や定着率の向上に直結します。特に、柔軟な働き方の導入や適切な労働時間管理は、ワークライフバランスの充実を促し、離職防止につながります。
社員が自身のライフスタイルに合わせて働ける環境を整えることで、ストレス軽減や仕事への満足度向上が期待できます。例えば、以下のような施策が有効です。
これらの制度を導入する際は、業務への影響を最小限に抑えるために適切なルール設計や運用体制の整備が重要となります。
長時間労働や業務の属人化は、社員の負担を増やし、離職リスクを高める要因になります。これを防ぐためには、労働時間の適正管理と業務の効率化が不可欠です。
社員が適切に休暇を取得できる環境を整えることも、職場環境改善の重要なポイントです。
このように、柔軟な働き方・適切な労働時間管理・休暇の取得促進を総合的に進めることで、社員の働きやすさを向上させ、長期的な定着につなげることができます。
社員が自身のキャリアに希望を持てる環境を整えることは、離職防止の重要な要素です。キャリアアップやスキルアップに対する不満が生じると、モチベーションの低下につながり、最終的には転職を考えるきっかけとなる可能性があります。そのため、明確なキャリアパスの提示と成長支援の充実が不可欠です。
社員が自身の成長イメージを持てるように、以下のような施策を行います。
社員が継続的にスキルを磨き、成長を実感できる環境を整えることも重要です。
このように、キャリアの見通しを示し、スキルアップを支援することで、社員の成長意欲を高め、長期的な定着につなげることができます。
社員のモチベーションや企業へのエンゲージメントを向上させるには、公平な評価制度の導入が必要です。社員の能力や成果、評価の根拠を可視化できる評価基準を設定し、評価を収入に反映させる給与体系を構築しましょう。
さらに、社員の貢献を可視化し、承認する仕組みも有効です。たとえば、MVP表彰や永年勤続表彰などの社内表彰制度を導入することで、日々の努力が正当に評価されていると実感しやすくなります。
また、福利厚生の充実もモチベーション向上に寄与します。住宅手当や食費補助、健康維持に関する支援など、社員が働きやすい環境を整えることで、満足度や定着率の向上が期待できます。
<福利厚生の具体例>
良好な人間関係は、職場の定着率を高める大きな要因です。円滑なコミュニケーションが取れている職場では、社員の心理的安全性が確保され、働きやすさが向上します。その結果、離職率の低下にもつながります。
上司と部下の信頼関係を築くことは、職場のコミュニケーション改善に不可欠です。特に、評価を伝える場面だけでなく、日常的な対話を増やすことが重要です。
例えば、定期的な1on1ミーティングを実施し、上司が部下の悩みや課題を把握し、解決策を一緒に考えることで成長をサポートしましょう。その際、仕事の進捗確認をするのではなく、キャリアの方向性や働き方の希望について話し合い、双方向の対話を意識することが大切です。
部署を超えたコミュニケーションが活性化すると、社内の一体感が生まれ、孤立感を防ぐことができます。
人間関係の良好な職場は、社員が安心して働ける環境をつくり、結果として離職率の低下につながります。日常的なコミュニケーションの質を高めることで、風通しの良い職場を目指しましょう。
メンタルヘルス不調は、離職だけでなく、企業の生産性にも悪影響をもたらします。社員が孤立したり、悩みや不安を抱え込んだりすることがないように支援の手が必要です。
一方、長時間労働の常態化は睡眠時間が減ることで、従業員の健康やメンタルヘルスに重大な影響を与えることが分かっています。労働環境の改善も必要になってきます。
<メンタルヘルス支援の具体例>
一度退職した社員が再入社できる「アルムナイ採用」の制度があれば、「退職しても戻れる安心感」を提供することができます。注意が必要なのは、アルムナイ制度を案内する際に、無理な引き止めはしないことです。留意目的だと思われてしまうと、退職希望者に身構えられてしまいます。
そのため、
といった対応を心がけましょう。
また、退職者との関係を維持するために、定期的なOB・OG会の開催やアルムナイ専用のネットワークを構築するのも有効です。こうした取り組みによって、将来的な再雇用の可能性を高めるだけでなく、元社員からの良い評判が企業のブランド向上につながることも期待できます。
ここでは、離職防止の取り組みを成功させるポイントとして、以下の4点を紹介します。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
退職者面談を実施し、退職理由を定量・定性分析します。面談を実施するタイミングとしては、退職後のほうが本音に近い意見を聞き出せる可能性が高いですが、表向きの退職理由と実際の退職理由が異なることがあるので注意しましょう。面談をする際には、「会社の実態を知るため」「職場環境の改善のため」に退職理由を確認したい旨を説明します。
離職者の意見を活かして、職場環境の改善や評価制度の見直しなどの改善策を検討しましょう。
離職防止は人事部門だけで完結するものではなく、経営戦略の一環として取り組むべき問題です。職場環境の改善や評価体制の見直し、業務の効率化など、経営層の意思決定が必要な施策が多いため、経営層の理解が必要です。
一方で、改めて企業のビジョン・カルチャーを明文化し、社員に共有することで、経営層だけでなく、全社員で同じ方向を目指すことができます。社員の信頼を得るためには、トップの積極的な関与が不可欠なのです。
企業文化は社員のエンゲージメントに直結する部分なので、企業文化がオープンで心理的安全性が高いと、社員は「ここで働き続けたい」と感じます。「成長したいのに挑戦できない」「成果より年功序列が重視される」など、社員の価値観と組織文化のズレが原因で離職するケースが多いため、組織文化の見直しも行いましょう。
また、旧態依然の文化では、時代に取り残され、企業の成長機会を失います。変化の激しい時代に対応できるよう、柔軟な考え方やイノベーションを生み出せる文化をつくっていきましょう。
離職防止の取り組みを実施するだけでなく、その後の効果検証と改善を続けることが重要です。以下に効果検証と改善の流れを紹介します。
本記事では、離職に至る主な原因や離職対策を行うべき理由、効果的な離職防止の取り組みや成功のポイントについて詳しく解説しました。
離職防止を進めるには、新たな施策の導入だけでなく、現在実施している取り組みの効果検証と継続的な改善も欠かせません。この機会に、貴社の現状を振り返り、できることから実践してみてはいかがでしょうか。
また、そもそもの離職リスクを減らすためには、採用時のミスマッチを防ぐことも重要です。採用や定着にお悩みの方は、ぜひ内藤一水社にご相談ください。
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