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採用事情
近年、採用難や人材不足が深刻化する中、離職率の高さが企業にとって大きな課題となっています。特に中小企業における離職状況や若年層の離職については、人事・採用担当者や経営者の方々にとって喫緊の課題ではないでしょうか。
本記事では、離職率の現状と深刻な影響、そして離職率を下げるための4つの秘訣を紹介します。本記事で紹介するポイントを参考に、離職率低減に向けた具体的な対策を実行してみませんか。
目次
離職率とは、一定期間内に企業を辞めた従業員の割合を示す指標です。企業の従業員の定着率や人材の流動性を測るために用いられます。
離職率は以下の式で計算できます。
平均在籍者数は、期首と期末の従業員数を合計して2で割って算出するのが一般的です。
2020~2021年は感染症の拡大が雇用状況に影響を与えた可能性もあり、日本の離職率は過去10年の中でも低い数値を推移していましたが、2022年は15.0%と少し上昇しています。
この数値は欧米諸国と比べると高い水準であり、特に若年層の離職率が高い傾向にあります。
資料:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」
厚生労働省がまとめた新規学卒就職者の離職状況によると、令和2年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年比1.1ポイント上昇)、新規大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。全体の離職率が約15%であることから、若年層の離職率が非常に高いことが伺えます。
更に事業所規模別の離職率を見ると、従業員数100名未満の事業所の離職率は、高卒、大卒共に40%を超えており、事業所規模が小さくなればなるほど離職率が高くなる傾向にあります。中小企業にとって若年層の離職をいかに抑えるかが大きな課題であることが分かります。
新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率 ( )内は前年比増減
事業所規模 | 高校 | 大学 |
---|---|---|
5人未満 | 60.7% (+0.2P) | 54.1% (▲1.8P) |
5~29人 | 51.3% (▲0.4P) | 49.6% (+0.8P) |
30~99人 | 43.6% (+0.2P) | 40.6% (+1.2P) |
100~499人 | 36.7% (+1.6P) | 32.9% (+1.1P) |
500~999人 | 31.8% (+1.7P) | 30.7% (+1.1P) |
1,000人以上 | 26.6% (+1.7P) | 26.1% (+0.8P) |
労働環境や将来に対する不安、大企業と中小企業の賃金や福利厚生の差などにより、企業規模によって離職率に違いはあります。労働環境に恵まれている大企業であっても、一定の割合で離職が発生していることが分かります。
2022年の企業規模別の離職率
5~ 29人 | 15.7% |
30~ 99人 | 16.6% |
100~299人 | 15.5% |
300~999人 | 15.9% |
1,000人以上 | 13.7% |
労働環境、仕事内容、キャリアパス、賃金などの要因に課題がある業種については離職率が高くなる傾向にあるなど、離職率は業種によって大きく異なります。
2022年の業種別の離職率
宿泊業・飲食サービス業 | 26.8% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 18.7% |
医療・福祉 | 15.3% |
教育・学習支援業 | 15.2% |
卸売・小売業 | 14.6% |
不動産業・物品賃貸業 | 13.8% |
運輸・郵便業 | 12.3% |
情報通信業 | 11.9% |
複合サービス業 | 11.0% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.7% |
建設業 | 10.2% |
製造業 | 10.2% |
離職率が高いと、企業は以下のような影響・デメリットを受ける可能性があります。
従業員が離職すると、採用や教育に費やしたコストが無駄になります。新卒社員の場合、採用コストは約1人あたり90万円~100万円と言われています。更に研修にも費用がかかりますので、戦力化する前に退職してしまうと採用コストの2~3倍程度の損害になると言われています。
また、離職者の穴埋めをするために新たな人材を採用する必要があります。採用活動には、求人広告掲載費、面接にかかる人件費、採用イベント開催費用など、様々なコストがかかります。
離職者が増えると、業務の引き継ぎや新しい人材の育成に時間や労力がかかります。また、残っている従業員は担当する業務が増えることになります。その結果、企業として生産性が低下し、競争力が損なわれる可能性があります。
離職者が多いと、残っている従業員は将来に対する不安を感じたり、会社への帰属意識が低くなる傾向にあります。会社のために頑張ろうという気持ちが薄れ、仕事へのモチベーションが低下する恐れがあります。
離職率が高い企業は、従業員満足度が低いと見なされたり、何か問題があるブラック企業として認知されるなど、企業イメージが悪化する傾向にあります。ブラック企業に就職しようという人は稀ですので、人材採用が難しくなる可能性が高くなるでしょう。
よくある離職理由として以下のような理由が挙げられます。
これらの離職理由は、「労働環境など企業側の問題」と「個人側の問題」に分類できます。それぞれについて詳しくみていきましょう。
離職には、労働環境など企業側の問題が大きく影響します。
企業側の問題は、従業員のモチベーション低下、不満の増加、ストレスの蓄積などに繋がり、離職意欲を高めてしまいます。
離職の原因が企業側にあるのか、個人側にあるのかの線引きは難しいですが、離職には企業側の問題だけでなく、個人側の問題も大きく影響します。
離職率を下げるために企業が取り組むべき4つの秘訣は以下の通りです。
それぞれの秘訣について、より具体的な取り組みを見ていきましょう。
労働環境を改善することで、従業員が適切なワークライフバランスを保てるようになれば、従業員の満足度やモチベーション向上に繋がり、安心して勤務できる環境だという認識が広がるでしょう。
長時間労働は、従業員の健康を損なうばかりか、モチベーションの低下にも繋がります。業務効率化や人員の増員、配置の見直しにより、就業時間は集中して業務に取り組める環境をつくり、残業時間を削減することが重要です。
十分な休暇取得は、従業員の心身の健康を維持し、リフレッシュ効果をもたらします。
年次有給休暇の取得促進や、育児・介護休暇制度の充実など、休暇制度を見直すことが重要です。
従業員のニーズに合わせた充実した福利厚生は、満足度向上に貢献します。
育児・介護支援制度や健康増進制度など、多様な福利厚生を提供することが重要です。
フレックスタイム制など、柔軟な勤務時間制度は、ワークライフバランス実現を支援します。
従業員が自身のライフスタイルに合わせて勤務時間や働き方を選択できる環境を整備することが重要です。
リモートワークは、通勤時間の削減や働き方の自由度向上など、多くのメリットがあります。
業務内容によりリモートワークが難しい職種への対応やセキュリティ対策、リモートワーク時の生産性向上など、リモートワーク導入に対する課題をしっかり検討した上で導入することが重要です。
ハラスメントは、従業員の心身に深刻な被害を与えます。
ハラスメント防止研修の実施や相談窓口の設置など、ハラスメント対策を徹底することが重要です。
メンタルヘルス不調は、離職だけでなく、企業の生産性にも悪影響を及ぼします。
ストレスチェックの実施やカウンセリングの提供など、メンタルヘルス対策を充実することが重要です。
個人側の問題で離職に至るケースも多いので、従業員が孤立したり、不満や不安を抱えこむことがないように、様々な方法でコミュニケーションを取り、各個人が納得して働ける環境づくりが大切です。
上司と部下、あるいはチーム内のコミュニケーションとして、上司は部下の声を聞き、意見を尊重する。一方で部下は積極的に意見や悩みを伝えることができるなど、コミュニケーションしやすい環境の整備が必要です。
また、企業と従業員のコミュニケーションとして、企業や部門のトップが方針や目標、進捗などを発信し共有することで、社員の理解と一体感を高めることができます。
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う定期的な面談です。
悩みや課題を把握し、解決策を共に考えることで部下の成長を促したり、オープンなコミュニケーションを通して相互理解を深めることによって信頼関係の構築が可能になります。
コロナ禍により社内イベント等は自粛ムードでしたので、あえて社内イベントやランチタイムの交流など、親睦を深める機会を作るのも一つの方法ではないでしょうか。
従業員満足度を高めることで、モチベーション向上、目標達成、自己成長に繋がり、離職率の低減に貢献できます。
SMARTな目標(※)を企業側からの一方的な押し付けではなく、話し合いの中で設定することで、主体性を持って業務に取り組めるようにすることが大切です。また、定期的な面談で進捗を確認し、必要に応じて目標修正やサポートを行い、目標達成を支援することも必要です。
(※)Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)
適切な目標設定と達成による成功体験は、自信と達成感に繋がりモチベーションを大きく向上させます。モチベーションがしっかり維持できていれば、会社への帰属意識が大きく損なわれることはないでしょう。
業務に必要なスキルや、将来的に役立つスキルを習得できる研修を実施したり、資格取得のための費用負担や学習時間の確保など、資格取得を支援することで自己成長をサポートします。
また、個々のキャリア目標や能力に合わせたキャリアパスを企業がしっかり把握し、支援することで、将来への安心感に繋がります。
公平性のある報酬や評価制度は、従業員の納得・理解、貢献意欲の向上、帰属意識の強化に繋がり、離職率の低減に貢献できます。
給与体系や評価基準に公平性や透明性がなければ、従業員の理解や納得を得ることは難しいでしょう。
給与であれば、個々の能力や貢献度に応じた能力給を導入すれば、能力の高い人材を正当に評価することができます。但し、前提として個々の能力や貢献度を客観的な評価基準に従って判断する評価の公平性が同時に求められるでしょう。
地域や職種別の賃金相場を把握し、対外的に劣っていないか、あるいは社内で格差が生じていないかを確認しましょう。更に昨今であれば生活費や物価上昇に合わせて給与を調整することで、従業員の生活水準を維持することも必要となります。
また、業績に応じて利益の一部を特別手当として還元することで、従業員のモチベーションを高めることができるでしょう。
営業や販売職などであれば、目標数値に対する達成度という明確な評価基準が存在します。
仕事の成果を数値化できない職種については、チームや組織への貢献度を評価する項目を明確にし、客観的な評価ができるようにすることが大切です。評価者の主観による評価はできるだけ排除し、成果や働きぶりを公正に評価できる仕組みを構築する必要があります。
昇給・昇進の基準を明確化し、誰でも公平に昇給・昇進できる可能性を提供します。そうすることで誰もが将来のキャリアプランを自分自身でイメージできるようになるでしょう。
離職率の現状や離職率の高さが引き起こす弊害、さらに離職率を下げるためのポイントを4つ紹介してきました。
ところで皆さまの会社の離職状況はいかがでしょうか?「期待していた新入社員がすぐに辞めてしまった」「離職率が高くて困っている」とお悩みの人事担当者、経営者の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事で紹介したポイントについて、実施していないものを導入してみることはもちろん大切ですが、一度導入した取り組みを継続させることのほうがより重要だと考えます。取り組みが自社にマッチしているのかを評価し、改善を続ける、そして着手できていない取り組みにチャレンジし続けることで、きっと離職率は改善していくでしょう。
更に異なる視点として、離職に繋がるミスマッチを入社前にできるだけ排除する取り組みも大切です。
例えば、募集・採用時に仕事内容や働く環境、キャリアパス、社内文化などを、採用サイト等にしっかりと記載しておけば、入社前と入社後のギャップを軽減し、離職率の低減につながるでしょう。
これらの取り組みにチャレンジし、継続させることこそが人事担当者の一つの役割なのかもしれません。
人材採用時におけるミスマッチにお悩みの方
募集・採用時に求職者に対して過度や期待や誤解を与えず、適切な情報提供を行うことが、入社後のミスマッチの抑制に繋がります。求人方法や採用サイトを工夫し、少しでもミスマッチを減らす取り組みに興味がある方は、お気軽にご相談ください。
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