シニア採用・活用

Information

シニア採用・活用

2025.06.16最終更新日2025.06.16

新年金法案可決とシニア人材活用の必要性|高齢化社会における企業の人材戦略

新年金法案可決とシニア人材活用の必要性|高齢化社会における企業の人材戦略

「若手の採用が年々難しくなっている」「経験豊富な人材がなかなか集まらない」。
多くの人事・採用担当者様が、深刻化する人手不足に頭を悩ませているのではないでしょうか。その根本には、日本の生産年齢人口の減少という、避けては通れない構造的な課題があります。

この状況を打開する鍵こそが「シニア人材の活用」です。昨今の法改正も後押しとなり、働く意欲のあるシニア層は確実に増加しています。

本記事では、2025年に可決された新年金法案にも触れながら、労働人口の実態、シニア人材の動向、そして企業に求められる人材戦略・対応策について多角的に解説します。

シニア・ミドル世代の採用なら「シニア求人ナビ」

若年層の労働人口が減少する中、シニア世代の労働力活用が注目を集めています。「シニア求人ナビ」はシニア向け求人に特化したお仕事情報サイトとして、様々な求人情報を掲載しています。

シニア求人ナビ掲載のご案内

生産年齢人口の減少と日本社会の構造変化

現在の日本が直面する最大の人口問題は生産年齢人口の急減にあります。この章では、以下の観点を交えながら、少子化と労働力減少の関係をデータで整理し、その影響を明らかにします。

  • 少子化が生む人口構造の変化
  • 生産年齢人口の推移と将来予測
  • 外国人材・DXだけでは補えない現実

少子化が生む人口構造の変化

日本における人口減少の根本的な要因は、出生率と出生数の著しい低下です。厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計月報年計の概況」によれば、2024年の出生数は70万人を下回り、国の想定より15年も早く過去最低を更新しました。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.15と、人口維持に必要とされる2.07を大きく下回っています。

これは将来の労働力となる若年層が確実に減少することを意味し、企業の採用競争が今後さらに激化することは避けられないという事実を示しています。

生産年齢人口の推移と将来予測

総務省・内閣府の統計によると、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は、1995年をピークに減少傾向が続いています。将来的な見込みでは、2020年に約7,400万人だった生産年齢人口は、2065年には3,000万人近く減少し、約4,500万人まで落ち込むと推計されています。

年次 生産年齢人口(万人) 減少数(対2020年比)
2020年 7,406 
2030年 6,875  ▲531
2040年 5,978  ▲1,428
2050年 5,276  ▲2,130
2060年 4,793  ▲2,613
2065年 4,529  ▲2,877

これは単なる数字だけの変化にとどまらず、経済・税制・社会保障全体にも深刻な影響を及ぼします。また、労働市場の需給バランスが崩れて、地方や中小企業、現場作業が中心の業界では、事業の維持自体が困難になるケースも出てくるでしょう。

このデータが示すのは、企業にとって「若手採用だけで事業を維持する」という従来の方程式が、もはや成り立たなくなる未来がすぐそこまで来ているという厳しい現実です。

外国人材・DXだけでは補えない現実

人手不足の対策として、外国人材の受け入れやDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進める企業も増えています。しかし、これらの打ち手だけでは限界があるのも事実です。

外国人材
受け入れ制度の複雑さや文化の違いによるマネジメントコスト、高い日本語能力が求められる業務への配置の難しさといった課題があります。
DX
初期投資のコストに加え、導入・運用できるIT人材の不足、そして何より、長年の経験がものを言う「暗黙知」や細やかな対人スキルが求められる業務の代替は困難です。

だからこそ今、“働く意欲と経験を兼ね備えた国内人材”であるシニア層の活躍に、大きな期待が寄せられているのです。

新年金法案の概要とその意義

2025年6月13日に年金制度改革法が成立しましたが、これは高齢者の就労環境に大きな変化をもたらすものであると言えます。この章では、法改正の内容とその背景、企業が注目すべきポイントについて解説します。

  • 主な改正ポイント
  • 制度改正が企業に与える影響

主な改正ポイント

<在職老齢年金制度の見直し>

これまで在職老齢年金制度では、月収と年金受給額の合計が47万円を超えると年金が減額される「逆インセンティブ」が存在し、多くのシニア層が働く意欲を抑制されてきました。今回の法改正により、この減額基準額が月47万円から月62万円へ大幅に引き上げられました。

期待される効果
シニア社員がフルタイムまたはフルタイムに近い働き方を継続しやすくなり、企業は豊富な経験を持つ人材をより長期にわたって活用可能に。
企業にとってのポイント
高付加価値業務やメンター業務など、シニアの強みを生かした配置計画を再検討するチャンスです。

この見直しは今回の法改正で、最も注目すべきポイントであり、これによりシニア層の働き方に大きな影響を与えることが予想されます。

<基礎年金の給付水準の底上げ>

主に年金だけに頼って生活する高齢者への支援を目的に、基礎年金の給付水準が底上げされました。

<社会保険適用の対象拡大>

中小企業の短時間労働者にも厚生年金・健康保険への加入が可能となり、就業継続への安心材料となります。

制度改正が企業に与える影響

上記の年金制度改正により、シニア世代にとって“働くメリット”が明確になり、就労への後押しとなることが予想されます。同時に、企業にとっても就業意欲・労働意欲の高いシニア層を採用しやすい環境が整いつつあると言えるでしょう。

就労意欲を示すシニア層の実態

法改正によってシニア層が働きやすい環境が整いつつある中、当のシニア層自身は本当に働くことを望んでいるのでしょうか。公的な統計データや転職市場の動向から、労働市場における「シニア層のリアルな実態」を明らかにしていきます。

  • シニア層のハローワーク利用者数増加
  • シニア層の就業者数が過去最多更新
  • 50代以上の転職者動向

シニア層のハローワーク利用者数増加

シニア層の就労意欲は、ハローワークの利用状況からも見て取れます。
厚生労働省が発表する「一般職業紹介状況」によると、2025年4月の65歳以上のハローワーク新規求職者数は12万3,179人で、前年同月比5.6%増加しており、働く意欲のある高齢者が積極的に職探しを行っていることがわかります。

高齢者専用窓口の利用や職業訓練への参加者数も年々増加傾向にあり、シニア層のハローワーク利用はもはや“例外的な選択肢”ではなく、“働く意欲の現れ”として定着してきていると言えるでしょう。

シニア層の就業者数が過去最多を更新

実際に働くシニアの数も、過去最多を更新し続けています。
総務省の「労働力調査(季節調整値)」によると、2025年4月の65歳以上の就業者数は944万人と、18年連続での増加を記録。10年前の2015年と比較すると200万人以上の増加であり、就業者全体に占める高齢者の比率も大きく上昇するなど、シニア層が日本の労働市場において不可欠な存在になっていることがデータから明らかです。

また、日本商工会議所が24年9月に公表した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」では、対象の239社のうち19.6%が、60歳以上のシニア人材の雇用を「強化・拡大したい」と回答しており、企業側の受け入れが進んでいる実態も明らかになっています。

50代以上の転職者動向

50代の転職者数に関して、リクルートエージェントの調査では、ここ10年で約12倍に、またエン・ジャパンの同様の調査でも、2018年比で約5倍に増加しており、ミドルからのキャリアの再構築や新たな挑戦を志す人が多いことがわかります。

かつては「50代の転職は難しい」というイメージがありましたが、現在は年齢ではなく個人の経験やスキルを正当に評価する企業が増えています。実際に、転職によって年収がアップするケースも珍しくありません。
このトレンドは、多くの企業がミドル・シニア層を、組織の中核を担う「即戦力」として真剣に求めていることの表れと言えるでしょう。

シニア人材の活用がもたらす価値

シニア人材は今や単なる補助人員ではありません。積み重ねてきた年齢・経験・スキルを活かして、大きな戦力となってくれる存在なのです。この章では、シニア層が企業にもたらす多面的な価値に注目します。

  • 豊富な経験と知識
  • 高い責任感と勤勉さ
  • 若手社員の育成力

豊富な経験と知識

シニア人材は、長年に渡る実務経験により、業務全体の流れや課題の本質を把握する力に長けています。業界特有の慣習や複雑な業務フローを熟知しているため、多くの場合、研修コストをかけずに即戦力として活躍が期待できます。

さらに特筆すべきは、マニュアル化が難しい「暗黙知」や「勘所」を形式知化し、組織に還元できる点です。例えば、トラブル発生時の的確な判断や、顧客との信頼関係を築くための機微な対応などは、一朝一夕では身につきません。彼らの存在は、こうした組織の貴重な知識資産を次世代に継承する上で、欠かせない役割を担います。

高い責任感と勤勉さ

多くのシニア人材は、職業人としての基本(時間厳守、丁寧な仕事、責任感)が体に染みついています。離職率が低く、安定して勤務してくれる傾向も強いため、組織の安定的な運営に大きく貢献します。

彼らの勤勉な働きぶりは、周囲の社員、特に若手・中堅社員にとっての良き手本となります。言葉で教えるだけでなく、その背中を見せることで、職場全体の規律意識やプロフェッショナリズムを高める、組織文化の醸成役としての価値も非常に大きいと言えるでしょう。

若手社員の育成力

経験により培った知識や対人スキルは、若手社員のOJT指導やメンタリングにおいても強みを発揮します。信頼される「現場の先生」として、職場全体のスキル定着や定着率の向上に貢献してくれるでしょう。また、若手とバディを組んでもらえば、効率良くスキル継承が進み、組織力の向上も期待できます。幅広い世代が混在する職場は、心理的安全性の面でもプラスに作用するはずです。

高齢化社会における企業の人材戦略・対応策

シニア人材に活躍してもらうためには、企業側による職場の制度設計や工夫が必要不可欠です。ここでは、今企業が取り組むべき実践的な方策と戦略を3つのステップで解説します。

  • ステップ1:多様な働き方の選択肢を用意する
  • ステップ2:年齢ではなく「役割と貢献」で評価する制度を構築する
  • ステップ3:シニア層に「響く」採用チャネルとメッセージを発信する

ステップ1:多様な働き方の選択肢を用意する

シニア層は「フルタイムでバリバリ働きたい」「健康を考慮して短時間で」「趣味と両立したい」など、就労へのニーズが多様です。画一的な働き方を押し付けるのではなく、個々の希望や体力に合わせた柔軟な選択肢を用意することが、活躍の第一歩となります。

【具体的な施策例】

勤務時間・日数の柔軟化
週2~4日の勤務、1日4~6時間の短時間勤務 など
業務の切り出しと設計
経験を活かせる専門業務、負担の少ない軽作業など、役割を明確に切り出す
勤務場所の柔軟化
テレワーク、サテライトオフィス勤務、地域限定勤務 など
雇用形態の多様化
正社員だけでなく、契約社員、パート・アルバイト、業務委託などを用意

ステップ2:年齢ではなく「役割と貢献」で評価する制度を構築する

シニア人材のモチベーションを維持・向上させるには、制度的な裏付けが不可欠です。「年齢が上だから」という理由で評価や機会が制限される環境では、本来の力は発揮されません。年齢に関わらず、役割や貢献度に応じて正当に評価・処遇される公平な仕組みを整えましょう。

【具体的な施策例】

役割・貢献度に基づく評価制度
年齢給ではなく、担うミッションや成果に応じた「役割給(ジョブグレード制)」などを導入する。
公正な目標設定とフィードバック
「あなたに期待する役割はこれです」と明確に伝え、定期的な1on1で進捗や課題を共有する。
多様なキャリアパスの整備
定年後のキャリアとして、専門性を活かす「エキスパート職」、後進を育てる「メンター職」、経験を活かす「顧問」など、複数の選択肢を用意する。
健康・安全への配慮
安全な職場環境の整備や、定期的な健康診断、産業医との面談機会などを設ける。

ステップ3:シニア層に「響く」採用チャネルとメッセージを発信する

どんなに良い環境を整えても、それが求職者に届かなければ意味がありません。若手採用とは異なるアプローチで、シニア層に「ここで働きたい」と思ってもらえるような採用戦略を展開しましょう。

【具体的な施策例】

シニア向け求人サイトの活用
シニア・ミドル・主婦など中高年層の採用には、「シニア求人ナビ」や「しゅふJOB」といったターゲット型の求人サイトの利用は欠かせません。当社調査では、応募を躊躇する理由として「一般的な求人サイトで『中高年歓迎』などの表記のある求人に応募しても結局は不採用になる」という回答が多数見られました。ターゲット型の求人サイトは、ユーザーとのマッチ度が最大の特徴。結果高い採用率が期待できます。
ハローワークとの連携強化
「生涯現役支援窓口」などの行政リソースを活用することもひとつの方法です。「生涯現役支援窓口」は全国300カ所のハローワークに設けられた、シニア世代が退職後も社会で活躍し続けるための支援を提供する機関です。キャリア相談から職業訓練、求人情報の提供まで、幅広いサポートを行います。
自社HPやSNSでの訴求
総務省の「令和5年度 通信利用動向調査」では、60歳以上のスマホ保有率が、60代で9割、70代で8割超となっています。シニア世代といえど仕事を探す際に会社のHPを確認したり、口コミなどSNSを閲覧することが当たり前の時代です。採用ページでは「経験者歓迎」「年齢不問」などのキーワードを記載し、しっかり情報を伝えることが重要です。

シニア求人ナビリニューアル!

シニア特化型求人サイト『シニア求人ナビ』が2025年4月にリニューアルしました。リニューアル後の最大のポイントは、Indeedエントリーに対応している点。月間訪問数2,400万以上(※1)の圧倒的なユーザー数を誇るIndeedからも直接応募ができるようになり、応募数が倍増しています。シニア層に向けた求人はこのような専門サイトの活用がますます重要になってきます。
※1 SimilarWeb,総訪問数,2024年10月

シニア求人ナビ掲載のご案内

シニア人材の採用成功事例

将来の深刻な労働力不足に備え、多くの企業で積極的にシニア人材の採用を実施しています。その中から成功事例を2つピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

資格保有者の少ない超難関職種の採用に成功!

大型二種けん引免許が必須という難易度の高い条件に対して、免許所持者の年齢分布からターゲットをミドル・シニア層に設定し採用に成功した事例です。

急遽の欠員募集、経験者採用にもスピーディーに対応!

ターゲットは、総務・経理など事務系職種の経験者。採用期限が迫る急な欠員募集のため、最短当日掲載も可能なサイトを利用し、2週間のスピード採用に成功した事例です。

まとめ

生産年齢人口の減少は、もはや避けては通れない現実です。しかし、これは見方を変えれば、経験豊富なシニア人材という「新たな才能」に目を向ける絶好の機会でもあります。

シニア人材の活用は、単なる人手不足対策ではありません。彼らの知見は若手を育て、その勤勉さは組織文化を安定させ、そして多様な視点はイノベーションを生み出します。それは、企業の持続的な成長を支える「戦略的投資」に他なりません。

人口構造の変化と年金制度の変化が重なる今こそ、「年齢を理由に採用を見送る」のではなく、「年齢を問わず活躍できる場を用意する」側へと舵を切るべく、人材戦略を再考してみてはいかがでしょうか?

シニア・ミドル世代の採用なら「シニア求人ナビ」

若年層の労働人口が減少する中、シニア世代の労働力活用が注目を集めています。「シニア求人ナビ」はシニア向け求人に特化したお仕事情報サイトとして、様々な求人情報を掲載しています。

シニア求人ナビ掲載のご案内

関連記事

お電話はこちら

月~金曜日(土・日・祝日除く)
9:00~18:00

東京本社 03-3265-9113
名古屋支社 052-581-9591
大阪支社06-6456-4561
九州支社092-431-6611