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「せっかく採用した人材が、なかなか定着しない…」
「社員の離職が続いており、経営への影響が心配だ…」
このような悩みを抱えている人事・採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
社員一人の離職は、単に採用や教育にかけたコストが無駄になるだけでなく、残された社員の業務負担増加、チームの士気低下、企業全体の生産性の低下など、目に見えにくい部分でも大きな損失を引き起こします。人材獲得競争が激化し、働き方の価値観も多様化する現代において、「いかに社員が定着し、活躍し続けられる組織を作るか」は、企業の持続的な成長を左右する最重要課題の一つと言えるでしょう。
そこで本記事では、人事・採用担当者の皆様に向けた「離職対策の完全ガイド」として、離職の主な原因から具体的な対策、そして定着率を高めるための実践的な取り組みまでを網羅的に解説します。「どうすれば人が辞めない組織をつくれるのか?」を知りたい方に向けて、すぐに活用できるヒントをまとめました。社員の離職に悩む方は、ぜひ参考にしてください。
採用と定着、両面で支援します
「社員がなかなか定着しない…」そのお悩み、私たち内藤一水社にご相談ください。採用戦略のプロとして、ミスマッチを防ぐ採用はもちろん、入社後の定着支援まで一気通貫でサポートします。
まずはこちらから無料相談目次
まず初めに、「離職対策」とは具体的に何を指すのでしょうか。
端的に言えば、企業が従業員の離職を防ぎ、定着率を高めるために行うあらゆる戦略的な取り組みのことです。しかし、その本質は単に「辞めさせない」ことだけではありません。より深く掘り下げると、「社員が辞めたくなるネガティブな要因を組織から取り除き、同時に、ここで働き続けたい、もっと貢献したいと思えるポジティブな魅力を高めていくこと」と言い換えることができるでしょう。
例えば、採用したばかりの社員が「想像していた仕事内容と大きく異なった」「職場の人間関係に馴染めなかった」といった理由で、早期に離職してしまうケースは残念ながら少なくありません。
こうした事態は、必ずしも社員個人の適性や能力だけの問題とは限りません。むしろ、採用選考時の情報提供のあり方(いわゆるリアリティ・ショックの防止)、入社後のオンボーディング・教育体制の不備、あるいはコミュニケーション不足や不公平感を生む職場環境など、企業側に改善すべき要因が潜んでいる場合が多いのです。
つまり離職対策とは、場当たり的な慰留策を指すのではなく、採用の入り口から、育成、評価、労働環境、コミュニケーション、キャリア支援に至るまで、社員一人ひとりが安心して能力を発揮し、やりがいを感じながら長期的に活躍できる組織基盤を全社的に構築していくための継続的な活動と言えます。離職対策は、企業にとって貴重な「人財」を守り育て、組織全体の競争力を高めるための重要な投資と言えるのです。
企業の人材戦略において、離職対策は「あれば尚良い」というレベルではなく、「今すぐ、かつ継続的に取り組むべき最重要課題」と言えるでしょう。少子高齢化による採用難や労働力不足が深刻化すると共に、働き手の価値観も多様化する現代において「人が集まらない、定着しない、育たない」という悩みは、多くの企業にとって大きな経営課題となっています。
かつての終身雇用を前提とした人材マネジメントは通用しづらくなり、企業が旧来の慣習に固執していては、社員は不満や将来への不安を抱え、静かに、そして確実に組織を離れていってしまうでしょう。だからこそ今、企業には変化する時代に対応した戦略的かつ多角的な離職対策が求められているのです。
ここからは、離職対策が特に重視される理由を以下3つの視点から整理してみましょう。
それぞれのポイントについて、詳しく解説します
離職対策が必要な理由のひとつとして、優秀な人材の確保が難しくなっていることが挙げられます。
この背景には、日本の生産年齢人口(15~64歳)の減少があります。総務省のデータによれば、1995年の約8,726万人をピークに減少し続け、2023年には約7,395万人と、この約30年で1,300万人以上も減少しています。この構造的な問題は、新卒採用市場における母集団の縮小や、中途採用市場における売り手市場化を加速させ、企業間の人材獲得競争は激化の一途をたどっています。
このような状況下では、新たな人材を採用するコストも時間も増大します。だからこそ、今いる優秀な社員に「辞めさせない」こと、つまり「自社で働き続けてもらう」ことの戦略的重要性が飛躍的に高まっているのです。
一人でも優秀な人材が離職すれば、その穴を埋めるのは容易ではありません。仮に欠員補充ができたとしても、同等レベルの戦力に育成するには更なる時間とコストを要します。逆に、既存社員の定着率が高ければ、採用活動が難航したとしても、組織力の急激な低下を防ぐことができます。
もし、人材の流出に歯止めがかからず、採用もうまくいかないという負のスパイラルに陥れば、組織の弱体化は避けられず、最悪の場合、事業継続そのものに支障をきたす可能性すらあります。したがって、離職対策を通じて定着率を向上させることは、採用競争を勝ち抜くための基盤強化であり、企業の持続的成長に不可欠な投資と言えるのです。
次に、転職に対する価値観の変化と労働市場の流動性の高まりも、離職対策の重要性を押し上げる大きな要因です。
かつて日本企業で主流だった「一度入社したら定年まで勤め上げる」という終身雇用の考え方は、もはや過去のものとなりつつあります。現代では、自身のキャリア目標やライフプラン、価値観に合わせ、より良い労働条件や成長機会を求めて転職することは、特別なことではなく、キャリアアップや自己実現のための合理的な選択肢として広く受け入れられています。
特に若手・中堅層においては、「今の会社に違和感があるなら、早めに次のステージを探す」という考え方が浸透しており、「とりあえず3年」といった言葉も聞かれなくなりました。これは個人のキャリア自律意識の高まりの表れとも言えるでしょう。
このような時代において、企業側は「採用したら安心」という考えでは通用しません。「社員は自社に居続けるのが当然」という前提は捨て、「いかにして社員から選ばれ続ける企業であるか」という視点を持つことが不可欠です。
魅力的な労働条件、公正な評価制度、成長できる環境、良好な人間関係、そして自社のビジョンへの共感など、社員が「この会社で働き続けたい」と感じる理由を積極的に創出し、発信し続ける必要があります。離職対策とは、単に辞意を示した社員を引き留める対症療法ではなく、社員一人ひとりのエンゲージメント(企業への愛着や貢献意欲)を高め、選ばれ続けるための組織文化や制度を構築する根本的な取り組みなのです。
3つ目の理由として、特に新入社員や若手社員の早期離職率の高さが挙げられます。
厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」によると、令和3年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、高校卒業者で37.0%、大学卒業者で32.3%となっています。これは、およそ3人に1人が3年以内に最初の職場を去っていることを意味します。
さらに深刻なのは、企業規模が小さいほど離職率が高くなる傾向が見られる点です。例えば、従業員5人未満の企業では、大卒者の3年以内離職率が55.9%と、半数以上が早期に離職しているという厳しい現実があります。
新入社員の早期離職は、企業にとって多大な損失をもたらします。採用活動にかけた莫大なコストと時間、入社後の教育・研修に投じた投資が無駄になるだけでなく、以下のような負の影響も引き起こします。
こうした事態を避けるためには、特に入社初期の段階における手厚いフォローアップと、組織へのスムーズな適応を促すオンボーディング施策が不可欠です。新入社員が「この会社で頑張っていけそうだ」「ここで成長したい」と早期に感じられるような環境を整備することが、離職対策の重要な第一歩となるのです。
人が辞めるのは仕方ないと放置してしまうと、企業は思わぬリスクに晒されることになります。なぜなら一人の社員の離職は、単に人員が一人減るという問題に留まらず、業務の停滞、慢性的な人材不足、予期せぬコストの増大、そして組織全体の士気低下といった負の連鎖を引き起こし、企業活動の根幹を揺るがしかねないからです。
気づいたときには、「採用してもすぐに辞めてしまう」「現場が疲弊し、業務が回らない」「新しいことに挑戦する余力がない」といった八方塞がりの状態に陥ってしまうことも決して珍しくありません。
だからこそ、離職対策は単なる人事施策ではなく、企業全体を守り、持続的な成長を可能にするための重要な経営戦略として捉える必要があります。
ここでは離職対策を怠った場合に企業が被る具体的なデメリットとして、特に影響の大きい以下の4つについて詳しく見ていきましょう。
社員の離職に対し適切な対策が講じられない場合、企業や事業の成長は確実に鈍化し、最悪の場合「停止」してしまうリスクさえあります。
組織が成長するためには、人材を採用し、育成し、その能力を最大限に発揮してもらうというサイクルが不可欠です。しかし、時間とコストをかけて育てた人材が次々と離れてしまえば、彼らが培ってきた知識、経験、顧客との関係性といった貴重な「組織の財産」も同時に失われてしまいます。これは、単に業務が一時的に滞るだけでなく、長期的な視点で見ると、組織内にノウハウが蓄積されず、イノベーションも生まれにくい環境を作り出してしまいます。
特に、専門性の高いスキルを持つ人材やキーパーソンとなっていた社員の離職は、その影響が一層深刻です。「この人がいないと業務が進まない」といった属人的な業務が多い企業ほど、たった一人の離職が事業の継続性や成長戦略に致命的な打撃を与える可能性を孕んでいます。
さらに、離職者の補充や引き継ぎ業務に追われることで、新規事業への着手や既存事業の改善といった未来への投資が後回しになりがちです。結果として、市場の変化への対応が遅れ、競合他社に対する競争力も徐々に低下していくという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
社員が離職すると、その穴は必ず残った社員が補うことになります。
特に中小企業では、すぐに人員を補充できず、1人分の業務を周囲の社員で回すケースも多いはずです。その結果「とりあえず頑張る」状態が続き、業務量の増加や長時間労働につながってしまうこともあります。
最初は「お互い様だから」と協力していた社員たちも、この状況が長期化し、改善の兆しが見えなければ、「なぜ自分たちばかりが負担を強いられるのか」「会社は何も対策してくれない」といった不満や不信感が募り始めます。このようなネガティブな感情は、職場の雰囲気を悪化させ、チームワークを阻害し、生産性を著しく低下させます。
そして最も恐ろしいのは、この過度な負担が引き金となり、さらなる離職者を生み出してしまう「連鎖退職」です。一人の離職が、ドミノ倒しのように次々と新たな離職を引き起こし、最終的には組織全体の機能不全や、最悪の場合、組織崩壊にまでつながる可能性も否定できません。
社員の定着率は、外部から見た企業の「健全性」や「魅力」を測る重要なバロメーターの一つです。
頻繁に社員が入れ替わり、常に求人広告を掲載している企業は、求職者から「何か問題があるのではないか」「働きにくい環境なのではないか」といったネガティブな印象を持たれがちです。「またあの会社、募集してるな…」とSNSなどで囁かれれば、そのイメージは瞬く間に拡散し、企業のブランドイメージを大きく損なう可能性があります。
このような状況は、優秀な人材の採用をますます困難にするだけでなく、既存社員のエンゲージメント低下や顧客・取引先からの信頼失墜にもつながりかねません。「人がすぐ辞める会社」というレッテルは、ビジネスパートナーとしての評価にも影響を及ぼし、商談や取引条件において不利になることも考えられます。
一度低下してしまった企業イメージを回復するには、多大な時間と労力、そしてコストが必要となります。離職率の高さは、単なる内部の問題ではなく、企業の社会的信用に関わる重大なリスクであると認識すべきです。
離職を放置することによる直接的かつ最も分かりやすいデメリットが、採用コストや人件費といった「金銭的な損失」の発生です。
「社員が一人辞めたくらいで、それほど大きな影響はないだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、実際には、企業は社員一人の離職によって、想像以上に多くのコストを負担しているのです。
具体的には、以下のようなコストが挙げられます。
これらは「目に見えるコスト」ですが、これに加えて、以下のような「目に見えないコスト(機会損失)」も発生します。
これらのコストを合計すると、社員一人あたりの離職コストは、その社員の年収の数倍に達するとも言われています。特に中小企業にとっては、このようなコストの積み重ねは経営を大きく圧迫する要因となり得ます。
離職によって発生するコストについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
このように離職対策を怠ることは、企業の成長を阻害し、組織力を低下させ、最終的には経営基盤そのものを揺るがしかねない深刻な事態を招きかねません。次の章では、こうした事態を避けるために、まず取り組むべき「離職原因の分析」について解説します。
これまでの章で離職対策の重要性とその対策を怠ることのデメリットについて見てきました。では、実際に効果的な離職対策を講じるためには、何から始めるべきなのでしょうか。
その答えは、「なぜ、社員は自社を離れてしまうのか?」という根本的な原因を正確に把握することです。
どれほど手厚い福利厚生制度を導入したり、最新のITツールを導入したりしても、社員が抱える不満や不安の本質を見誤っていては、その対策は的外れなものとなり、期待した効果は得られません。企業側が「これが原因だろう」と推測している離職理由と、実際に社員が胸の内に抱えている本音との間には、しばしば大きな隔たりが存在するものです。
まずは自社で実際に起きている離職の背景にある「真の理由」を突き止めること。それが、効果的な離職対策の第一歩であり、最も重要なプロセスと言えるでしょう。
一般的に、社員が離職を決意する背景には、どのような理由が多いのでしょうか。様々な調査結果がありますが、多くの場合、上位に挙げられる離職理由は共通しています。
主な離職理由ランキング
順位 | 離職理由 | 備考・補足例 |
---|---|---|
1位 | 人間関係の悩み | 上司や同僚とのトラブル、孤立など |
2位 | 労働条件(給与・残業・休日など) | 収入の低さ、残業の多さなど |
3位 | キャリアや成長の見通しが持てない | スキルアップできない、将来が不安 |
4位 | 社風・組織文化が合わない | 社内の雰囲気や価値観とのズレ |
5位 | 業務内容への不満 | やりがいがない、ミスマッチを感じる |
これらの離職理由からも分かるように、社員が退職を決意する背景には、人間関係、労働条件、キャリア、組織文化、仕事内容といった様々な要因が複雑に絡み合っています。そして、これらの要因は、企業側の努力によって改善できる可能性を秘めているものがほとんどです。
より詳細な離職理由のランキングや傾向については、こちらの記事もご参照ください。
「とにかく離職者を減らしたい」という思いは当然ですが、その根本原因を特定しないまま手当たり次第に対策を講じても、時間とコストを浪費するだけで、期待する成果は得られません。
これは医療に例えると分かりやすいでしょう。患者が体調不良を訴えているとき、医師はまず問診や検査を通じて、その原因を特定しようとします。風邪なのか、食中毒なのか、あるいはもっと深刻な病気なのか。原因が異なれば、当然、処方される薬や治療法も変わってきます。離職対策もこれと同じで「なぜ社員は辞めてしまうのか?」という「病巣」を正確に診断しなければ、的外れな「処方箋」しか出せないのです。
離職防止に成功している企業に共通しているのは、まず「事実」を客観的に把握しようとする姿勢です。現場で何が起こっているのかを多角的な視点から丁寧に観察し、集めた情報を分析・言語化し、具体的な改善アクションへとつなげています。
実際に自社の離職原因を可視化するためには、どのような手法が有効なのでしょうか。ここでは、代表的な4つのアプローチをご紹介します。
重要なのは、これらの分析を通じて「犯人探し」をすることではなく、あくまで「より良い職場環境を築き、社員が活き活きと働ける組織を作るためのヒント」を見つけ出すことです。データに基づいた客観的な分析と、社員一人ひとりの声に真摯に耳を傾ける対話。この両輪を回し続けることが、信頼と定着を生み出す離職対策の揺るぎない土台となるのです。
「まさか、あの人が辞めるなんて…」
突然に思える社員の離職も、振り返ってみると、何らかの「予兆」や「サイン」が現れていた、というケースは決して少なくありません。多くの場合、社員は離職を決意する前に、言葉には出さずとも、日々の行動や態度にその心の揺れ動きを滲ませています。
それらの変化は、時にごく些細で、慌ただしい業務の中では見過ごされてしまいがちです。しかし、日頃から社員一人ひとりに意識を向け、注意深く観察していれば、これらのサインを早期に捉えることは可能です。そして、その小さな変化に気づき、適切なタイミングで対話やフォローを行うことができれば、離職を未然に防げる可能性は高まります。
ここでは、離職を検討し始めている社員に見られることの多い、代表的な4つのサインと、その背景にある可能性について解説します。
より詳しい退職サインや、サインに気づいた際の具体的な対応策については、こちらの記事もご参照ください。
離職を考え始めた社員が最初に見せるサインの1つが、会話の減少です。
雑談に加わらなくなる、質問や報告が減る、チャットの返信が素っ気なくなるといった変化は、心の距離が生まれている兆しかもしれません。人は職場に安心感があれば自然と関わろうとしますが、居心地の悪さや「話しても伝わらない」と感じていると、無意識に距離を取ってしまいます。
特に注意したいのが、業務上は普通に見えるのに雑談や相談が激減しているケースです。
このような「静かな孤立」は見落とされがちで、気づいた頃には手遅れになっていることもあります。
【初期対応のヒント】
「最近、あまり話さなくなったけど、何かあった?」「少し元気がないように見えるけど、大丈夫?」など、心配していることを率直に伝え、相手が話しやすい雰囲気を作ることが大切です。すぐに本音を話してくれなくても、気にかけているという姿勢を示すことが、孤立感を和らげる第一歩になります。定期的な1on1ミーティングなどを活用し、安心して話せる場を提供することも有効です。
自分の部下について「最近、成果が出ていないな」と感じたときは、離職の兆しが隠れているかもしれません。
目標未達やパフォーマンスの低下が続く場合、スキル不足だけでなく「やりがいを感じない」「会社への期待が薄れた」といった内面的な要因が影響していることがあります。
注意したいのは、改善の兆しが見られず、指摘しても反応が薄い状態が続くケースです。
「どうせ」「別に」などの言葉が増え、周囲との温度差が広がっているときは、心が会社から離れかけている可能性が高いです。
【初期対応のヒント】
まずは叱責するのではなく、本人の状況や気持ちに寄り添う姿勢で対話することが重要です。「最近、少し調子が悪そうだけど、何か困っていることはない?」「目標達成に向けて、何かサポートできることはあるかな?」など、具体的な状況を確認しつつ、本人が抱える課題や悩みを引き出すことを心がけましょう。パフォーマンス低下の背景にある根本的な原因を探り、解決策を一緒に考える姿勢が求められます。
勤怠の乱れは、離職を考えている社員が見せるわかりやすいサインの1つです。
遅刻や早退、急な欠勤が続くときは、モチベーションの低下やメンタル面の不調を疑う必要があります。
もちろん、一次的な体調不良やプライベートの問題が原因であることもあります。
しかし、他の行動変化と重なる場合、離職の兆しとして捉えることが重要です。
「残業が急に減った」「有給を頻繁に取る」といった変化も、それ自体は悪いことではありません。ただし、責任感の低下や周囲との接点の減少とセットで起きている場合は注意が必要です。
【初期対応のヒント】
まずは本人の健康状態を気遣う言葉をかけ、勤怠が乱れている理由を丁寧にヒアリングすることが大切です。「最近、遅刻や欠勤が多いようだけど、体調は大丈夫?」「何か困っていることや、会社としてサポートできることがあれば教えてほしい」など、心配していることを伝え、相談しやすい雰囲気を作りましょう。勤怠のデータだけでなく、その背景にある本人の感情や状況に目を向けることが、早期の支援につながります。
自分の部下について「最近、文句が増えたな」と感じる場合、それは心が離れかけているサインかもしれません。
離職を考え始めた社員は、不満や諦めの気持ちを日常会話に滲ませることがあります。
特に「どうせ言っても無駄」「この会社は変わらない」といった否定的な言葉が続き、改善の意志や建設的な声が見られない場合、既に希望を失っている可能性があります。
こうした発言を「また文句か」と受け流すと、本人はさらに孤立し、離職の決意を固めてしまうかもしれません。言葉の表面だけを捉えるのではなく、その発言の裏にある本人の満たされない欲求や、抱えている苦しさに目を向けることが重要です。
【初期対応のヒント】
まずは本人の話を最後まで傾聴し、共感的な態度で受け止めることから始めましょう。「そう感じているんだね」「何か具体的な出来事があったの?」など、本人が安心して自分の気持ちを話せるように促します。その上で、「どうすれば改善できると思う?」「何か一緒に考えられることはないかな?」と、建設的な対話へとつなげていくことができれば、関係修復の糸口が見つかるかもしれません。ネガティブな言動は、本人からの「助けてほしい」というSOSのサインであると捉え、丁寧に向き合う姿勢が求められます。
社員の離職を防ぎ、定着率を高めるためには、採用選考の段階から、入社後のオンボーディング、そして既存社員のエンゲージメント向上、さらには退職の申し出があった際の対応に至るまで、あらゆるフェーズで一貫した戦略に基づき、継続的に適切なアプローチを行うことが不可欠です。
ここからは、離職防止の具体的なアクションを以下4つのステージに分けて紹介します。
それぞれのフェーズで行うべき離職対策は異なります。自社の現状と照らし合わせながら、優先的に取り組むべき対策を見つけるための参考にしてください。
早期離職の最大の原因の一つが、採用段階における企業と候補者間の「ミスマッチ」です。「入社前に聞いていた話と違う」「想像していた社風と合わなかった」「こんなはずではなかった」といった入社後のギャップは、せっかく採用した貴重な人材が早期に見切りをつけてしまう大きな要因となります。
したがって、採用活動は単に空席を埋めるための作業ではなく、入社後の定着と活躍を最初から見据えた、極めて重要な戦略的プロセスと位置づけるべきです。採用の入り口で、企業と候補者の双方が互いの情報を包み隠さず開示し、価値観や期待値のすり合わせを徹底することで、その後の離職リスクを大幅に軽減できます。
採用段階で実践すべき代表的な対策例として以下の5つをご紹介します。
選考プロセスの短期化や効率化が求められる現代ですが、あえて時間をかけ、本当に自社と候補者が互いに「合う」のかを丁寧に見極めることが、結果として長期的な人材定着と組織力の強化につながります。採用は、離職対策の最初の砦であり、強固な土台を築くための最重要フェーズと認識しましょう。
社員が最も離職しやすいのは、入社後数ヶ月から1年以内と言われています。「期待していた仕事と違った」「職場の雰囲気に馴染めない」「困ったときに誰にも相談できない」といった不安や孤独感は、早期離職の大きな引き金となります。この時期は、新入社員が新しい環境への適応に苦労し、緊張と期待が入り混じる中で、些細なつまずきが大きな離職リスクへと発展しやすい非常にデリケートな期間と言えます。
この入社初期の「壁」を乗り越え、新入社員が早期に組織の一員として安心感を持ち、持てる能力を最大限に発揮できるよう計画的に支援するプロセスが「オンボーディング」です。単なる入社時研修だけでなく、業務スキルの習得支援、社内人脈形成のサポート、企業文化への理解促進、そして精神的なフォローアップまでを含む、包括的かつ継続的な取り組みを指します。
オンボーディングの主な施策としては、以下の6つが挙げられます。
オンボーディングは、単なる「入社時研修」で完結するものではありません。入社後少なくとも3ヶ月から半年、場合によっては1年間かけて、新入社員が自律的に業務を遂行し、組織に貢献できる状態になるまで継続的にサポートしていくことが重要です。この初期段階での手厚いケアが、「この会社で頑張っていこう」という新入社員の決意を固め、長期的な定着と活躍の基盤を築きます。
オンボーディングの具体的な進め方や成功のポイントについては、こちらの記事もご参照ください。
離職のリスクは、新入社員だけに限りません。入社後数年が経過し、仕事にも慣れてきた中堅社員やベテラン社員であっても、「日々の仕事にやりがいを感じられない」「この会社でこれ以上成長できるのだろうか」「自分の頑張りが正当に評価されていない」といった不満や不安が積み重なり、離職を意識し始めるケースは少なくありません。
このような状況を防ぎ、既存社員の定着率を高めるためには、社員一人ひとりのエンゲージメント(企業への愛着や貢献意欲)を高め、働きがいと成長を実感できる魅力的な職場環境を継続的に提供していくことが不可欠です。具体的には、仕事そのものの魅力、公正な評価と処遇、キャリア形成支援、良好な人間関係、そして企業のビジョンへの共感など、多角的なアプローチが求められます。
既存社員のエンゲージメントを高めるための施策例は、以下の通りです。
これらの施策は、一度導入して終わりではなく、社員の声を聞きながら継続的に改善していくことが重要です。また、制度や仕組みだけでなく、日々のコミュニケーションにおける上司や同僚の言動が、社員のエンゲージメントに大きな影響を与えることを忘れてはいけません。エンゲージメントの向上は、離職防止はもちろんのこと、生産性の向上、イノベーションの促進、そして組織全体の活性化にもつながる、企業にとって非常に価値の高い投資と言えるでしょう。
どれほど手厚い離職対策を講じても、残念ながら社員が退職を決意するケースは起こり得ます。社員から退職の意思を告げられた際、企業としてどのように対応するかは、その社員との関係性だけでなく、残された社員のモチベーションや、将来の離職防止策にとっても非常に重要な意味を持ちます。
突然の申し出に驚きやショックを受け、感情的に引き止めようとしたり、あるいは逆に突き放すような態度を取ってしまったりすることは、双方にとって良い結果を生みません。多くの場合、退職の決断は、社員が長い時間をかけて悩み抜いた末に出した結論です。
この場面で最も大切なのは、無理な引き止めに固執するのではなく、まずは本人の意思を尊重し、なぜ退職という結論に至ったのか、その背景にある本音や組織への課題感を丁寧に聞き出すことです。そして、その貴重な情報を、今後の組織改善や離職防止策へと活かしていく姿勢が求められます。
退職検討・申し出時の適切な対応と学びを得るためのポイントは以下の通りです。
退職は、企業にとって人材の流出というネガティブな側面だけでなく、組織のあり方や課題を見つめ直し、より良い職場環境へと進化させるための貴重な機会でもあります。退職者の声に真摯に耳を傾け、そこから得られた学びを組織全体で共有し、具体的な改善アクションへとつなげていく。このサイクルを回し続けることが、将来の離職を未然に防ぎ、より強く魅力的な組織を築くための鍵となるのです。
本記事では、「離職対策」という企業にとって避けて通れない重要課題について、その根本的な考え方から具体的な実践方法に至るまで、以下のステップに沿って網羅的に解説してきました。
改めて強調したいのは、離職対策とは、単に退職希望者を引き留めるための場当たり的な対応策ではないということです。それは、社員一人ひとりが「この会社で働き続けたい」「ここで成長したい」と心から思えるような魅力的な職場環境を、戦略的かつ継続的に構築していくための、企業にとって極めて重要な「仕組みづくり」なのです。
そのためには、本記事でご紹介したように、採用から育成、日々の業務、評価、そして退職に至るまでのあらゆる社員接点において、常に「社員の視点に立ち、何が求められているのか」を問い続け、組織のあり方を柔軟に見直していく姿勢が不可欠です。
離職対策への取り組みは、一朝一夕に成果が出るものではないかもしれません。しかし、短期的な成果に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点に立ち、社員から「選ばれ続ける組織」を目指して粘り強く改善を重ねていくことが、必ずや企業の未来を明るく照らすはずです。
採用と定着、両面で支援します
「社員がなかなか定着しない…」そのお悩み、私たち内藤一水社にご相談ください。採用戦略のプロとして、ミスマッチを防ぐ採用はもちろん、入社後の定着支援まで一気通貫でサポートします。
まずはこちらから無料相談人材採用に関しての疑問・どこに相談すればいいか分からない方、
まずはこちらからお気軽にお問い合わせください。
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